『夏の雷鳴 わるい夢たちのバザールII』恐怖の帝王キングの最新短編集その2

知的障害のある選手がメジャーリーグのチームに入団しました。

彼は優秀で、観客からもどんどん人気になっていきます。しかしその裏には不吉な影が漂っていました。(「鉄壁ビリー」)

父が死んで、主人公の少年と母親は保険金で優雅な暮らしを楽しんでいました。独立記念日の夜、少年は花火を打ち上げます。対岸にいる子どもたちはそれに対抗するようにもっとたくさんの爆竹を用意しますが…。(「酔いどれ花火」)

核兵器による戦争が終わったあとの世界が舞台です。主人公は妻と娘に先立たれ、一匹の犬と暮らしていました。

人間も他の生き物も見当たりません。魚もやがてすべて死に絶え、自分もこの世から消えてしまうでしょう。静かな終わりを描く「夏の雷鳴」。

その他、「ハーマン・ウォークはいまだ健在」、「具合が悪い」、「ミスター・ヤミー」、「トミー」、「苦悶の小さき緑色の神」、「異世界バス」、「死亡記事」といった短編が収録されています。

目次

スティーヴン・キング『夏の雷鳴 わるい夢たちのバザールII』

滅びゆく世界を静かに見つめる二人の男と一匹の犬――悲しみに満ちた風景を美しく描く表題作。湖の向こうの一家との花火合戦が行きつくとんでもない事態を描く「酔いどれ花火」。架空の死亡記事を書くと書かれた人が死ぬ怪現象に悩まされる記者の物語「死亡記事」他、黒い笑い、透明な悲しみ、不安にみちたイヤミス、奇想が炸裂するホラ話、そしてもちろん化け物も! バラエティあふれる10編を収録。

スティーヴン・キング氏の短編を集めた「わるい夢たちのバザール」の下巻です。

こちらにもホラーテイストの短編が10篇収録されており、上巻との関連性はありません。

そのため、気になる短編が収録されている方から読み始めても問題ないでしょう。

こちらの方がユーモラスな作品、軽く読める作品が多いため、キング氏の小説を初めて読む方にはこちらもおすすめです。

もちろんホラーテイストも健在です。古き良きアメリカンホラーが好き、という方にはたまらない作品ばかり。

キング氏の映画を見たことがある方なら誰でも「キングらしい!」とうなずくことができるでしょう。

ユニークな作品が多いこの短編集ですが、中でも人気なのが「死亡記事」です。

まだ起きていない死亡記事を書くとその人物が本当に死ぬ…という物語です。「わるい夢たちのバザール Ⅰ」に収録されていた「砂丘」ではその逆の様子が描かれており、二つの違いを読み比べてみるのも楽しいでしょう。

表題作の「夏の雷鳴」は終末の世界を静かな語り口で描き、じんわりと世界の終わりに思いを馳せることができます。

短編集ではありますが、物語の最後を締めくくるにふさわしい作品と言えるでしょう。

キング氏は他にも核戦争後の世界や世界が終わる瞬間などを多く描いていますが、その中でもこの「夏の雷鳴」はとくに静かに染み入るような作品になっています。

キング氏が世界の終わりをどのように描くのか、ぜひ読んでみてほしい一作です。

キング作品をあまり読んだことがない人にも読んでほしい!

キング氏は「ホラーの帝王」とも呼ばれるほど、ホラーの名作を多く世に送り出してきました。

「グリーンマイル」や「ミスト」、「ショーシャンクの空に」など映画化された作品も多く、一度も見たことがないという人の方が少ないほどでしょう。

映画は見たことがあっても小説は読んだことがない…という方にぜひ読んでほしい短編集がこの「わるい夢のバザール」シリーズです。

2020年に発売されたばかりで、いずれもこれまで日本未発表だった短編が収録されています。

これまでも名作ばかりでしたが、このシリーズの短編もすべて名作揃いです。

キング氏ならではのホラーを楽しめるものからしっとりと読ませるものまで取り揃えられており、日本語訳も美しいです。

海外の小説は翻訳が苦手という方でも現代的で読みやすい文章ですので、ぜひ手に取ってみて下さい。

すべて読み終える頃にはすっかりキング氏の世界観の虜になっていることでしょう。

さらに新作、「眠れる美女たち」の上下巻も同時期に発売されています。

女性だけに降りかかる疫病を描く長編です。こちらもすでに話題作になっていますので、今作でキング氏を知った方も、キング氏の作品が好きという方も、ぜひチェックしてみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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