本日2016年7月27日、芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が発売されました。
前々から気になっていたので早速読ませていただいたのですが、これが予想をはるかに超えてに面白かったので簡単にご紹介させていただきます。
ちなみに、
芥川賞作品って難しそう、とか読みにくそうと思う方もいるかもしれませんが、『コンビニ人間』に関しては嘘みたいに読みやすいのでご安心くださいね(●゚ω゚●)
「普通」とは何かを考えさせられる一人の女性の物語
『コンビニ人間』の主人公は、コンビニでアルバイトを18年も続けている36歳の女性・古倉恵子です。
まず読み始めてすぐに主人公・古倉恵子の感性とその表現の素晴らしさに思わず笑ってしまい、一瞬にして彼女の魅力に惹かれてしまいました。
コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思いだせない。
『コンビニ人間』7Pより引用
コンビニ店員として〈生まれる〉という表現。
これが実に古倉恵子らしく、「コンビニ人間」として生きる彼女を物語っています。
そして彼女の子供時代の頃からその感性はとても魅力的でした。
母は懸命に、「いい、小鳥さんは小さくて、かわいいでしょう? あっちでお墓を作って、皆でお花をお供えしてあげようね」と言い、結局その通りになったが、私には理解できなかった。
皆口をそろえて小鳥がかわいそうだと言いながら、泣きじゃくってその辺の花の茎を引きちぎって殺している。「綺麗なお花。きっと小鳥さんも喜ぶよ」などと言っている光景が頭がおかしいように見えた。
『コンビニ人間』9Pより引用
これは古倉恵子が幼稚園の頃、公園で綺麗な小鳥が死んでいたのを発見した時のシーン。
周りの子供たちはかわいそうと泣き、親たちは「かわいそうだね。悲しいね。」と押し付けるように古倉恵子に言葉を浴びせます。
「小鳥が死んだら可哀想なので悲しまなくてはいけない」と強制されているように。
まるで「小鳥の死を悲しまないのは普通の人間ではない。異常である」と言わんばかりに。
しかしそれに全く共感できないのが古倉恵子という人間なのです。
この他にも子供の頃のエピソードがいくつかあり、
周りからは「普通ではない」「おかしい」、親には『どうしたら恵子は「治る」のか』などと言われる始末なのです。
周りのみんなと同じように生きないと〈異常な人間〉として見られてしまうこの現実。
決して小説の中だけの話ではありませんよね。
『コンビニ人間』はそんな世界で生きる古倉恵子の視点からみたお話です。
コンビニバイトの主人公・古倉恵子の生き方と魅力

主人公である古倉恵子は大学生の頃からコンビニでアルバイトを始めます。
就職もせず、結婚もせず、気がつけば18年が経過しており現在36歳。
恵子は周りの人々から様々な事を言われます。
主に
「なんで結婚しないの?」
「早く結婚して子供を作らないとヤバイよ」
「なんでコンビニのアルバイトなんかずっと続けてるの?」
「ちゃんと就職しないとまともに生きていけないよ」
などなど。
結婚するのが「普通」で、しない奴はヤバイ。
就職するのが「普通」で、しない奴はおかしい。
この偏りきった価値観。
なんとも恐ろしくないですか。
ただ結婚をしないだけで、アルバイトを続けるだけで「普通じゃない人間」になってしまうのです。
もし私だった「うるさい!自分の勝手じゃないか!他人の価値観を押し付けないで!」と怒りの感情をあらわにしてしまうかもしれません。
しかし古倉恵子はそんな人たちに対し怒りを覚えません。
なにを言われようと、「なんでそんなことを言うのだろうか?」と純粋に不思議にしか思わないのです。
これがまた古倉恵子の面白いところであり大きな魅力でもあるのです。
「普通」ではない古倉恵子という女性をどう思いますか?

結局この作品がどんな物語かを一言でいうと、
「コンビニでアルバイトを続ける36歳女性の物語」
です。
どうでしょうか。あまり面白そうな感じはしませんよね。
しかしです。
これがまさかまさかの面白さなのです。難しくもないのに深くて、とっても読みやすいのです。
何が面白いのか?と聞かれれば、私は
「古倉恵子という人物の感性と魅力と生き様」
と答えます。
オススメか?と聞かれれば、私は
「はい。超おすすめです。絶対読んでみて」
と答えます。
正直、歴代芥川賞作品の中でもトップクラスの面白さだと感じました。
それくらい面白いし考えさせられる「読んでよかった」と思えた作品です。
この作品を読まないなんて〈普通〉じゃない!(●>ω<)ノ゙