深夜の森で、キャンピングトレーラーが炎上し、大爆発する事件が起きた。
駆けつけたオリヴァーが調べると、車内には男性の焼死体があり、周辺には放火の痕跡があった。
さらにキャンピングトレーラーの持ち主が、オリヴァーの元級友の母親だということが分かった。
オリヴァーとピアは事情聴取に行くが、彼女は何者かに窒息死させられてしまう。
しかも焼死体の男性はオリヴァーの元級友だと判明し、さらにオリヴァーに会いに来た司祭まで首吊りで亡くなってしまった。
次から次へと亡くなるオリヴァーの知り合いたち。
オリヴァーは、「この事件は、自分が11歳だった頃に起きた事件と関係しているのでは?」と考えるが―。
故郷での因縁やトラウマに立ち向かうオリヴァーと、それを支えるピアとを描く、シリーズ第八弾!
オリヴァーの苦悩と消耗
貴族刑事オリヴァーファンの方は必見!
今作『森の中に埋めた』はオリヴァーが主役の物語であり、彼の少年時代や味わってきた苦しみがボリュームたっぷりに描かれています。
まず序盤、オリヴァーの住む村ルッペルツハインで、知り合いが次々に不審な死に方をします。
元級友は焼死、その母親は窒息死、司祭は首吊り。
知人がこんなにも立て続けに亡くなっては、さすがのオリヴァーも不安になりますし、しかも彼には思い当たることがありました。
42年前、オリヴァーがまだ11歳だった時、親友のアルトゥールが飼っていた狐と一緒に行方不明になったのです。
オリヴァーはその日、テレビ見たさにアルトゥールを一人にしてしまったことを、今でも悔やんでいます。
そしてその事件と今回の事件には、何か関係があるかもしれないと思い至りました。
そこでピアと一緒に調べるのですが、排他的なルッペルツハインの人々は口を割らず、知らんぷりを決め込みます。
しかも過去を掘り返そうとするオリヴァーを敵視するので、捜査は暗礁に乗り上げますし、オリヴァーは消耗する一方。
とにかく中盤を過ぎるまで、オリヴァーにとって苦しい状況がずっと続きます。
特に少年時代のエピソードは辛く、血を流しても涙は流さなかったオリヴァー少年の姿に、むしろこちらが涙してしまうくらい!(泣)
しかし終盤になってから活路が開け、そこからは点でしかなかった情報が次々に繋がって線となり、隠されていた真相が一気に明らかになります。
犯人の動機も明かされ、これはあまりに自分勝手すぎて、おぞましさすら感じました。
だからこそ無事に事件解決に導いたオリヴァーとピアには、拍手!
とりわけオリヴァー、精神的にも肉体的にもダメージを受け続けながら、よく頑張りました!
プライベートでもさんざんなオリヴァー
『森の中に埋めた』では、プライベートパートもオリヴァーが中心となっています。
しかもこちらもオリヴァーにとってなかなかに過酷な展開で、まず冒頭から、7歳の娘ゾフィーに振り回されます。
夜中に叩き起こされ、「死体を見たい」と言うので事件現場に連れて行くはめになったり。
現場に行けば、今度は「火事が見たい」と言って車から降りようとし、反対すれば「トイレ!」と言い出す始末。
女性には優しいオリヴァーも、愛娘のこの傍若無人ぶりにはヘトヘト。
読者的にはクスッとしてしまう展開ですが、オリヴァー的には辛抱たまらん事態でしょう(笑)
また、元恋人のインカとの関係も良好ではなく、相手のひどい執着にオリヴァーはさらにヘトヘトに。
その上、元妻のコージマとの屋敷の相続問題も絡んできて、オリヴァーはますます追い詰められます。
このような状況で、知り合いがバタバタと死んでいく事件が起こり、しかもそれが自分の過去の罪に関係しているかもしれないのです。
これまでも様々な危機に直面してきたオリヴァーですが、今回の辛さは文句なしにトップレベルでしょう!
ピアもそれを理解して、フルスロットルで事件に立ち向かうので、最終的にはきれいに解決します。
そしてピアはエピローグで、怪我をしたオリヴァーを見舞い、ちょっとした贈り物をします。
このシーンも本書の見どころで、二人の築いてきた素敵な関係性が見えて、心が和みますよ。
ボリュームも読み応えも圧倒的!
『森の中に埋めた』は、ネレ・ノイハウスさんの「刑事オリヴァー&ピアシリーズ」第八弾です。
ボリュームは前作を大きく上回り、なんと約700ページ!
さらに登場人物も多く、巻頭の人物一覧には、60名以上もの名前が並んでいます。
あまりに長くて複雑そうなので、腰が引けてしまう方もいるかもしれませんが、ご安心を。
読み始めたが最後、魅力的なキャラクターと怒涛の展開に、どんどん引き込まれていきます。
特にオリヴァーの悲運の数々には、涙を誘われたり、ある意味メシウマだったりで(笑)、目が離せません。
テーマとしては、シリーズ三作目の『白雪姫には死んでもらう』と同じく、閉鎖的な村社会での、村ぐるみの隠蔽です。
ただ今作『森の中に埋めた』では、主人公のオリヴァー自身がその村の出身であり、当事者として事件に関わることになります。
被害者は知人で、容疑者も知人で、周り中知人だらけなので、オリヴァーとしては『白雪姫には死んでもらう』よりもはるかにやりにくかったろうと思います。
そういう意味で一層読み応えがあり、読者をハラハラさせてくれる作品と言えるのではないでしょうか。
とにかく、「この作品を読まずしてオリヴァーは語れない!」と言っても過言ではないくらい、オリヴァー尽くしの物語ですので、ファンの方は必読です。
ちなみに今作でピアは昇進するのですが、次回作ではまさに彼女が主人公となり、その過去が語られるそうです。
どのような活躍を見せてくれるのか、今から待ち遠しいですね!







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