海外ミステリー小説

『木曜殺人クラブ』- 英国で異例の速度で100万部突破した最高のフーダニット

イギリスのとある引退した老人向け施設に、未解決事件の調査をして暇をつぶす老人たちのグループ『木曜殺人クラブ』があった。

元警官の入居者が持ち出した捜査ファイルを元に、あれこれと推理を巡らしては楽しむクラブの面々。

そしてその施設には敷地内の墓地と庭園を開発して新たな棟を建てる計画が持ち上がっていたが、それを巡って経営陣と住人たちの間で対立が起こっていた。

ある時施設の関係者の一人が殺されたのをきっかけに、彼らは“今”起きている事件の真相を追うことになったのだが──。

事件を解決する過程で明らかになっていく彼ら・彼女ら老人たちの秘められた過去。

そして確実に迫ってくる〈老いと死〉に、老人たちはどのような反応を見せるのか?

本国・イギリスにて異例のスピードで100万部を突破した、ユーモアあふれる謎解きミステリー!

人生経験豊富な老人たちが織りなすユーモラスなミステリー

まずこの作品の特徴として挙げたいのが、探偵役が複数人からなるグループであること、そしてそのグループが老人たちから成るという点。

彼らはイギリスの『クーパーズ・チェイス』という引退者用施設に住む老人たちのグループで、日々過去の未解決事件を推理し合っていました。

元警察官の老人が極秘にファイルを持ち出す、というなかなか法律すれすれのグループとも言えます。

そんな施設で実際の殺人事件が起こり、この老人グループが犯人の推理をするというストーリーの流れ。

もちろん事件の推理も面白いのですが、特に注目したいのが探偵役として調査を繰り広げる老人たちの個性の豊かさです。

リーダー格のエリザベスをはじめとする元気で時にはずる賢い老人探偵たちが、それぞれが人生で獲得したスキルを活かして事件の解決を目指していきます。

その様はまさに彼らの人生の集大成を見せつけられているようなすがすがしさが。

彼らの掛け合いもまた軽妙でユーモアいっぱいの言葉遊びにあふれており、舞台であるイギリスの雰囲気たっぷりなのも読み応え抜群です。

ただ事件の解決を追うだけではない、各々の人生の重みや楽しさを味わえる作品となっています。

自分自身が年老いたらどんな老人として過ごすだろうか?と考えつつ読むのも面白いかもしれません。

繰り返されるどんでん返しに最後まで気が抜けない!

ユーモアあふれる老人たちに負けず劣らず魅力の一つとなっているのが、やはり本筋のミステリー部分の面白さでしょう。

本編を通してユーモラスでジョークの飛び交う作風ですが、本格ミステリーの顔をも持ち合わせていると言えます。

章ごとにさまざまな視点からの話が書かれていて、構成としての複雑さも読者の推理を惑わせる要因の一つでしょう。

彼らには彼らなりの長い人生があり語るべき物語や教訓を持っているのです。

ミステリー作品にキャラクターたちのリアルな描写や詳細な背景を求めている人にとっては実に読み応えのある作品と言えるでしょう。

『木曜殺人クラブ』の面々、そしてそれぞれの過去と事件のつながり、高齢者ならではの価値観と物事の見方。

さまざまな要因が絡み合った上にどんでん返しが繰り返されるため、最後の最後の瞬間まで気を抜くことができません。

老人たちの軽やかなやり取りとシリアスな謎解き展開のギャップにハマる読者が続出するはずの一冊です。

クリスティへのリスペクトが感じつつ人生のほろ苦さや奥深さを感じさせる一冊

本作のタイトル『木曜殺人クラブ』は、ミステリーの女王・アガサクリスティの作品『火曜クラブ』をオマージュしたもの。

アガサクリスティの『火曜クラブ』では元警視総監や弁護士、老牧師が持ち寄る迷宮入り事件を名探偵のミス・マープルが次々と解決していくというストーリーでした。

火曜クラブ』ではミス・マープルを始めとする面々は実際に事件の調査に乗り出すことはせず、室内での推理に終始します。

そんな老人たちが実際に外に出て調査をしたらどうなるのか?という問いに答えたのが本作と言えるのです。

クリスティの他にも、軽快で時にブラックジョークに近いものも感じられるユーモアは、イギリスで脈々と受け継がれてきたユーモア文化を感じさせるものがあります。

そんなユーモラスな作風の一方特徴的なのが老いや死というものへ向けた哀愁漂う目線。

登場人物たちの過去や人生観、命というものへの見方の描写を通して、老いるという事や死ぬという事がどんなものなのか読者に問いかけている気がします。

一人の老人は何かしら語るべきストーリーを持っているものである、そう思わずにはいられないでしょう。

作者のリチャード・オスマン氏はイギリスのバラエティー番組やコメディ番組等で活躍しているプレゼンターであり、何と今作がデビュー作とのこと。

続編である『THE MAN WHO DIED TWICE(二度死んだ男)』も翻訳が準備されています。

英国風味の新しい王道ミステリーにハマるなら今!と断言できる作品です。

この機会にぜひ!(๑>◡<๑)

ABOUT ME
anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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