短編集

『ミスト 短編傑作選』映画『ミスト』の原作小説収録!ゾクゾクが襲い掛かるキングらしい短編集

ホラーの天才と呼ばれるキング。

彼の作品はいくつも映像化されていますが、この『ミスト 短編傑作選』の中に収録されている『霧』も『ミスト』という名前で映画化がされています。

この映画が公開されたときのレビューは「救いがない」「良くも悪くも一貫してホラー」でした。見て落ち込んだ人も多くいたそうです。

しかし、実は原作と映画では大筋の内容は合っているのですが、結末が違っています。

また、細かい部分も変わってきているので後味を含め別の作品と思ったほうが良いとされています。

キングに救いのない物語や心の奥底からゾクゾクさせる物語を書かせると、文字たちが私たちに迫ってくるかのような感覚を与えさせます。

だからこそ、映画でも「一貫したホラー」を生み出すことができたのでしょうし、話題にもなったのです。

さらに、この物語から着想を得て、『サイレントヒル』というプレイステーションのゲームが開発されて発売されたというから驚きです。

この記事ではそんな物議を醸しだした映画『ミスト』の原作『霧』を含んだ『ミスト 短編傑作選』のあらすじと、実際に読んだ方の感想や口コミをたっぷりご紹介いたします。

スティーヴン キング『ミスト 短編傑作選』から『霧』のあらすじ

それではこの作品のメインである中編の物語、『霧』のあらすじをご紹介いたします。

7月19日、メイン州西部の全域はまれに見る荒天だった。激しい雷雨により、州全体は甚大な被害を被ってしまった。

主人公であるデヴィッド・ドレイトン一家の住宅も被害にあっていた。窓ガラスが割れたうえに、木も倒れた。こうして家の中はめちゃくちゃになってしまう。

デヴィッドは妻を自宅に残し、息子のビリーと同じく被害にあった隣の別荘の持ち主であり弁護士のノートンと一緒に、車で生活必需品を購入すべく町のスーパーマーケットへ。

しかし、デヴィッドと同じように損害を受けた住民たちが物資を購入するため殺到していた。

すると、そこで奇妙な霧が出現する。人々は不思議な霧を見ようと外に出て様子を見ていた。

しかし、骨董品店の女主人カーモディだけは「この霧は危険であるから決して外に出ないで」と訴えた。

ところが、カーモディは普段から変人だと思われていたため、誰もその忠告を相手にしなかった。

結果、やはりその霧は危険なものだった。負傷しながら霧の中から逃げてきた人が「霧の中に何かがいる」と話したのだ。

店内にいる人々は恐怖と不安に押しつぶされそうになる。そしてその霧は、スーパーマーケットを飲み込み・・・。

果たしてデヴィッドは霧に立ち向かい勝つことが出来るのか。

ホラーとミステリもしくはSFが共演する不思議でゾクゾクする内容です。

デヴィッドたちの運命がどうなるのか、是非読んで確認してみてください。そして、自分ならどうするかを考察していただければと思います。

本書には『霧』以外に『ほら、虎がいる』『ジョウント』『ノーナ』『カインの末裔』という4つの短編が収録されています。こちらも読みごたえがありますよ。

スティーヴン キング『ミスト 短編傑作選』の口コミ【読者の感想】

それでは実際にこの本を読んだ方の感想や口コミをご紹介いたします。

 

『人間の不安はどこから生まれるのか・なぜ不安は生まれるのかが上手く描写されている作品だと思いました。
目に見えた不安は、目の前で起きた出来事だけではなく他人の行動や発言からも発生します。
人間は視覚的情報が8割を占めるので最初に視覚的不安を持ってきたところに作者の構築能力の高さを感じ好きになりました』

 

『映画も小説も両方見ました。
結末は大きく変わっていましたが、最初から途中までは同じような感じで進んでいきました。
小説版では後に引くゾクゾク感がたまらなく面白かったですし、映画は「そうくるか!」と衝撃のあまりしばらく映画館でぼーっとしてしまった印象です。どちらも味が合ってよかったですので、別作品だと思って楽しんでもらえたらと思います』

 

『キングのストーリーの最後がふわっとしているというか、こちらに投げかけるスタイルが大好きです。考えさせられるというか、人間の在り方や人生観を見直すきっかけにもなります。「霧」も同じく私にとってかなり考えさせられました。
選択肢がいくつかある中で、どれが正しいかなんて結果論でしかわからないのであって、その場では誰も答えなんてわからない。
私はたまたまコロナ禍の緊急事態宣言中に読んだのですが、今の世界と通じ合う部分があって、余計引き込まれました』

原作と映画を両方楽しむ人も多く、それぞれの感想が全く違ったのが面白く感じました。キングならではの放り投げるラストが後を引く、不思議な作品です。

キングは読者に問いかけたい作家なのではないか

『霧』もそうですし『ペットセマタリー』もそうですが、キングは物語の最後を明朗に書かないことが多い作家です。

そのふわっとした感じが後を引き、クセになる読者が多いのだと感じます。

読み手のその日の気分や人生観、境遇によって幾重にも答えが導き出される、まるで道徳の授業で出される題材のような面白い作家です。

キングは基本的にホラーを題材にした作品が多いですが、『霧』に関しては珍しくSFや怪物などが登場する今までにないキングの作品となっています。

今までの概念や作品にとらわれない様々なジャンルに挑戦しつつ、キングらしさを忘れないメッセージ性の強い作品であることは間違いありません。

しっかりと結末まで書かれていないとすっきりしない、という人には正直あまり向かない作品かもしれません。

しかし、心の奥底や体の芯からゾクゾクしたい、あっと驚く派手なものではなく、人間の感情を震わせるようなひたひたと忍び寄る恐怖を味わいたい方にはキングの作品はどれもおすすめできますし、ゾクゾクに関しては『霧』はかなり群を抜いているのではないかと思います。

是非原作からでも、映画からでも楽しんでいただければと嬉しいです。

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