屋敷啓次郎に心酔している人気ミステリ作家・拝島登美恵。
彼女は取材と偽って、自宅である“密室館”に男女8人を監禁する。
監禁された8人の中にはアイドル探偵・蜜柑花子や、蜜柑を逆恨みしている日戸涼などの姿があった―。
密室館で始まったのは殺人推理ゲーム。
これから起こる殺人事件のトリックを論理的に解き、正解することができれば解放されるというものだった。
宣言通り出口のない密室で殺人事件が発生するが、果たしてその謎を解くことはできるのだろうか?
逃げ場のない空間で、三者三様の思惑が渦巻く……。
強制的に殺人推理ゲームを行う拝島の目的とは一体?
名探偵・蜜柑花子が館トリックの謎に挑む―!
ミステリ作家8人が閉じ込められた密室
ミステリ作家8人が密室館に閉じ込められ、殺人事件が起こります。
その殺人事件の謎を解けば解放するという犯人の言葉通り、ミステリ作家たちがあれこれとさまざまな推理を繰り返していくという物語です。
今作の主人公は前作の被害者の遺族である日戸涼。
彼が探偵に対して抱いている感情や、その他の個性的なミステリ作家たちなど、前作よりもかなりエンタメ的な面が強くなっています。
そして事件を解決に導くのは、前作で伝説の名探偵から後継者として認められたアイドルであり探偵でもある蜜柑花子です。
前作ではあくまでサポート的な役回りだった彼女がどのようにして事件を解決していくのかも見どころの一つです。
前作の登場人物が事件に深く関わっていたり、前作で明らかにされなかった事実が今作で描かれていたりと、今作だけを読むよりも前作を読んだ上ですぐに読み始める方が作品の良さをよりわかりやすくなっています。
前作が気に入ったという方は、早めにこちらもチェックしてみてください。
蜜柑花子が活躍するシリーズ第2弾
前作では表紙を飾ったもののあまり活躍しなかった蜜柑花子が、今作では事件を解決に導きます。
今作でも彼女の細かい外見の描写や心情の描写は少な目ですが、その分想像力を活かしてそれぞれの蜜柑像を作り上げていくことができるでしょう。
このシリーズでは「探偵はどうあるべきか」など、「探偵」、ひいてはミステリー小説のあり方に疑問を投げかけるようなテーマがあります。
蜜柑が抱える苦悩も今作では一層丁寧に描かれており、すっきりとしないつらさを一緒に感じられます。
前作同様大掛かりなトリックがあるわけではありませんが、ミステリー小説好きな方には読み応えのある内容になっています。
物語の最後には探偵には付き物の助手もでき、心強い一方で、今後蜜柑や周囲の人々、そして「探偵」自体がどのように変わっていくのかが気になる結末になっています。
後味が悪いミステリー小説のことを「イヤミス」と称することが多いですが、今作もある意味では「イヤミス」と言えるでしょう。
なんとなくすっきりしないと思いつつ、次回作も手に取ってしまうようなクセのある作品に仕上がっています。
ミステリファンが楽しめるメタ的仕掛けが満載
「名探偵の証明」シリーズ二作目です。前作でも「探偵」をテーマにした人間ドラマを丁寧に描いていましたが、今作でもそのテーマは変わりません。
密室館の見取り図がついていますが実際に見取り図が必須な大掛かりなトリックがあるわけでもなく、本格的な謎解きを求めている方にとってはやはり物足りない印象を受けるかもしれません。
ですが前作よりもさらに濃厚に、ミステリー小説の中で起きる事件と現実で起きる事件について考えられていたり、「名探偵」が認められている世界について描かれていたり、事件があるところに探偵がいるのか、探偵がいるところに事件が起きるのかといったことを真面目に論じていたり、ミステリー小説でありながらミステリー小説についての考察を読んでいるような楽しみ方ができる作品になっています。
作中でいくつかのミステリー小説が登場しますが、それらを読んだことがある方なら思わずニヤリとしてしまうことでしょう。
反対に、ここから気になる作品をチェックして知識を広げていくのもいいですね。
作者のミステリー小説愛もよく伝わってくる内容でした。
前作への批評に対する反論的な読者への問いかけとも感じられる台詞も登場し、今後もミステリー小説と現実に起きる事件の違いを描いていくのか、このスタンスを続けていくのかが気になるシリーズでもあります。
少しでも気になっていただけたなら、前作『名探偵の証明』から、次回作『名探偵の証明 蜜柑花子の栄光』もぜひチェックしてみてください。
シリーズ第1弾

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