エリー・グリフィス『見知らぬ人』- この犯人は、見抜けない。

イギリスの中等学校・タルガース校の旧館は、かつて作家・ホランドの邸宅であった。

そんなホラー作家の邸宅を残す学校で、英語教師を勤めているクレア。

彼女は教鞭をとりつつも、作家・ホランドについての研究を行っていた―。

ある日、彼女の元に悲痛な報せが届く。

それは勤務する学校の同僚であり親友でもあるエラが殺されたというものだった。

その遺体のそばに残されていたのは“地獄はからだ”というワンフレーズのメモ。

その言葉はホランドの短編「見知らぬ人」に繰り返し出てくる文章の一部であった・・・。

この殺人はホランドの短編小説に見立てたものなのか?

犯人の正体とその意図とは一体―!?

目次

ヴィクトリア朝時代の怪奇小説の見立て殺人が起きる

ヴィクトリア朝時代に数多くの怪奇小説を発表した作家、ホランドの邸宅を旧校舎に持つタルガース校で教師として働くクレア。

彼女は同時にホランドの作品の研究もおこなっていました。

ですがある日、クレアの同僚が殺害される事件が起こります。

その死体のそばにはホランドの小説の中から抜粋された文章を書いたメモが添えられていました。

ホランドの怪奇小説を模した悪質な殺人事件なのか、犯人の本当の目的は何なのかを、三人の女性の視点から探り出していきます。

日記のような形式で物語が進むので情報が断片的にしか見えてこず、なかなか犯人を当てられません。

続きがきになってどんどんページをめくってしまうことでしょう。

怪しいと思っていた人物にはアリバイがあったり、意外な人物が容疑者として浮上してきたり、最後までオチが見えてきません。

「この犯人は、見抜けない」というキャッチコピーがついている通り、ミステリー小説を多く読んでいる方でも新鮮な気持ちで読み進められることでしょう。

海外の翻訳された小説は苦手という方でも、登場人物が比較的少なく世界観もイメージしやすいため気軽にチャレンジすることができる一冊となっています。

ゴシックホラー好きにもおすすめの正統派ミステリー小説

ヴィクトリア朝時代の怪奇小説、イギリスの建築物や街並み、引用されるシェイクスピアなどの古典文学などなど、今作にはゴシックな要素がたくさん詰め込まれています。

さらに不可解な殺人事件が起こり、ゴシックホラーな世界観を満喫できます。

ミステリー小説と言えばシャーロック・ホームズシリーズなど、イギリスで書かれたものが多く、当時のゴシックな雰囲気に強い憧れを持つミステリーファンも多いですよね。

今作はそんな世界観を満喫できる内容になっています。

古いミステリー小説は読みにくい、現実味を感じにくいという方でも、現代で書かれた今作なら違和感を感じずに最後まで楽しめます。

さらに作中にはヴィクトリア朝時代のホランドが発表した怪奇小説も、作中作として登場します。

こちらの本格的なおどろおどろしさもゴシックホラー好きにはたまらない演出となっています。

あっとおどろくような斬新なトリックやどんでん返しがあるわけではありませんが、粛々と物語が佳境に入っていく構成も古典ミステリーへのリスペクトを感じました。

ゴシックホラーだけでなく、ヴィクトリア朝時代の文化やイギリスの建築、風景、海外の学園生活などに興味がある方、これらの世界観に強く惹かれるという方はぜひチェックしてみてください。

翻訳ミステリー小説の新風!

日本では海外の翻訳ミステリーはあまり人気になりにくいのが現状です。

実際、ミステリー小説をよく読むという方でも海外のミステリー小説は読んだことがない、古典の有名作品しか読んだことがないという方も多いのではないでしょうか。

海外で人気の作品でもあまり売り上げを期待できないと言われている翻訳ミステリー小説ですが、今作は発売前から予約数が多く重版が決まったという異例のヒット作です。

エドガー賞の名前でも有名なMWA賞で最優秀長編賞を受賞しており、海外ではすでに大ヒットしています。

作者のエリー・グリフィス氏はこれまでにも多くのミステリー小説を発表しています。

日本では翻訳されていませんがシリーズ化された作品もあります。

また、本作「見知らぬ人」の続編に位置する「The Postscript Murders」も発表されています。

日本ではやっと今作で注目を集め始めた作家ですが、このように異例の話題作となったことから過去作品や最新作の翻訳も期待されています。

今作が気に入ったら、ぜひ今後の情報のチェックも忘れないようにしましょう!

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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