さて、絶賛どハマり中である下村敦史さんの新刊『緑の窓口~樹木トラブル解決します~』が発売されたわけですが、結論から言えば面白かった。超良かった。
下村さんと言えば乱歩賞受賞作の『闇に香る嘘』や山岳ミステリー『生還者』『失踪者』など、今までもジャンルの全く異なるミステリを描かれていました。
それで、今回はなんと「樹木」をテーマにしたミステリー。
殺人の起きない「日常の謎」に属されるジャンルの新境地です。「日常の謎」ならぬ「樹木の謎」というジャンルでしょうか。
これは興味が湧いてきてしまうのも仕方ありませんね!(゚∀゚*)
さっそく見て行きましょう!
下村敦史『緑の窓口』
区役所で働く天野優樹は、生活課から「環境対策課」の『緑の窓口』へと異動になった。
どうやら樹木に関するトラブルを専門に引き受ける窓口らしい。
生活課より気楽にできそうだな、と思っていた矢先、さっそく1件の相談が。
その内容は「庭にある大きな杉の木が邪魔だから伐採してほしい。でも義母が猛反対しているので困っている」というものだった。
早速、相談者である大河内さんのお宅へ向かう天野たち。
するとそこには、すでに先客がいた。
黒髪を背中までまっすぐ流し落とし、白いノースリーブブラウスに透かし柄のスカートがよく似合う、一人の女性。
大河内さん曰く、『あまりに立派な杉だったもので』とかなんとか言っていきなり訪れてきたらしい(怪しい)。
「……私は怪しい者ではありません。樹木医です」
樹木医ーー?初めて聞く単語だった。
P.27より
つまり彼女は「木のお医者さん」ということらしい。名前は、柊 紅葉(ひいらぎ くれは)という(名前、美しすぎでしょ!)。
早く杉を伐採して!という大河内さんに対し、こんな立派な杉を伐採するなんて!信じられない!と対抗する紅葉さん。
結局、この杉にはお義母さんの想いも詰まっていることですし一旦様子を見ましょう、ということに落ち着きました。
そして二週間後。
再び杉を見に訪れると、なんと大河内さんは「お義母さんと仲直りしたからもう大丈夫」だと言います。
あんなに不仲だったのに?でもまあ、それならよかった。一件落着。安心する天野くん。
しかし、樹木医の紅葉さんは見逃しませんでした。
「それは嘘です」柊さんは岩浪先輩の目を真っすぐ見返した。「全ては樹木が語ってくれました」
P.42より
樹木を見れば、全てがわかる!
というように今作『緑の窓口』は、樹木医の紅葉さんが樹木に関するトラブルを解決していく、という6つの連作ミステリーです。
それも特徴なのは、樹木の謎を解明を通じて、関わる人たちのトラブルや心の悩みを解決していくということ。
ただ単純に樹木の謎を明かすだけではないのです。
例えば二つ目のお話『クヌギは嘘をつきません』では、「木が倒れてきて愛車がペシャンコになってしまった。どうしてくれるんだ!」という男性の相談を、「倒れた木」そのものを調査することで解決していきます。
他のお話もそうです。
「緑の窓口」に持ち込まれた相談を、紅葉さんは「この樹木はこういう性質で、だからこのようなことはなく、結果としてそれはありえない」みたいな、その樹木が持つ特別な性質を駆使して真相を突き止めていくのです。
人間がいくら隠していても、わかっちゃうんですよ。樹木をみれば。そこにどんな想いが残されていたのか。
こういう「樹木」に特化したミステリはほぼ読んだことがなかったので、とっても楽しく読ませていただきました。
そして、紅葉さんが可愛い。
やっぱりミステリにおいて探偵の魅力って大事じゃないですか。
で、魅力ある探偵ってちょっと「変わった」人が多いと思うんですよ(単純に私が変人探偵が好きなだけ)。
その点において、今作の柊紅葉さんは素晴らしい。
樹木医というあまり知られていな職業であり、「樹木オタク」と言って良いレベルの知識量、異性に関してはあまり興味がなさそうで、樹木のことになるといてもたってもいられなくなっちゃう性格。
そして美人。
紅葉さんの口から繰り広げられる樹木の知識は、無知の私にとってはどれも新鮮であり、読んでいる間は「へー!」「そうなんだー!」の連続。
紅葉さんの魅力にうっとりするとともに、樹木の世界って面白いな、と、そう思える作品でした。
読みやすさもピカイチ
そうそう、あと下村さんの作品全般に言えることなんですが、とにかく読みやすいです。
今回の作品は『闇に香る嘘』や『生還者』などに比べて世界観がかなり柔らかいライトミステリーなので、余計に読みやすい、というかほとんど一気読みです。
それに加えてキャラクターも親しみやすい。
探偵役の紅葉さんと、主人公&語り手の「緑の窓口」の担当者・天野くんをはじめ、イケメンの岩浪先輩や、隣の窓口で働く荻村さんも抜群に良いキャラしています。
彼女たちの活躍をもっと見ていきたい!と思える作品なんですよね。なので、シリーズ化希望です。下村さん、お願いします(´∀`*)
おわりに
というわけでポイントをまとめると、
・とにかく「樹木に関する知識」が面白い
・樹木と人間を絡めたミステリーが新鮮
・紅葉さんを含めた主要人物のキャラクターが良く、楽しく読める
・とってもとっても読みやすい
という感じです。好きです。この作品(*´ω`)
それにしても、下村さんの作品の幅の広さ、すごすぎません?
乱歩賞受賞作の『闇に香る嘘 (講談社文庫)』。
山岳ミステリーの『生還者 (講談社文庫)』や『失踪者』。
難民問題に焦点を当てた『難民調査官』シリーズ。
京都という特別な土地ならではの謎を描いた『告白の余白』。
通訳捜査官を主人公とした『叛徒』。
で、「樹木医」を中心に樹木にまつわる想いを描いた今作『緑の窓口 ~樹木トラブル解決します~』。
まるでジャンルがバラバラ!でも一つの作品対しての知識量は深く、どれも安定して面白い。
作品を書くのにどれだけ勉強をしていらっしゃるのだろう。凄いなあ。と、思う今日この頃です。
コメント
コメント一覧 (9件)
僕もハマりました! いいですよね〜。
下村さんって重めの話を書いてるイメージだったんですが、これに関しては楽しんで読めました。新しい下村作品って感じで、新鮮ながら質も良い素晴らしい一冊でしたね。僕は個人的に偏った知識しかない探偵ってとても好きなんですけど、柊さんはどハマりでした。こういうテイストの作品をもっと読んでみたいです。
アラシナオヤさんこんばんは(゚∀゚*)
ですよね!いつもの下村さんとはちょっと違う楽しく読めるミステリでした。
今作のようなユーモラスなキャラクター小説もお書きになるんだなあ、と嬉しく思いました。これ、シリーズ化しそうですよね(ワクワク)。
私も柊紅葉さん好みです 笑。私も偏った知識を持つ探偵好きなんですよねー。名探偵はちょっと変人なくらいがちょうどいい。。(*´ω`)
anpo39 さんこんにちは!下村敦史さん私も絶賛ハマり中です。
闇に香る嘘(最近文庫本になりましたね。表紙が…)も、失踪者、生存者、
告白の余白、叛徒、読みました。全て緊張感ある内容で、大好きです。
緑の窓口、早速本屋さんにて入手します♪
monokuroさんこんにちは!下村さんホンッット面白いですよね。私もどハマり中でして。
今まで読んだ作品全部おもしろいんですよ。とても読みやすいし。すごいですよね。。
今回の『緑の窓口』も、今までの下村さんとはちょっと違った楽しく読めるライトミステリで、まだまだ下村さんにハマっていくのを実感しました。
ぜひぜひ楽しんでいただければと思います!(´∀`*)
古い記事にこんにちは。
下村さんは文庫化当初「闇に~」と「叛徒」をずいぶん前に読み、すごい作家さんが又出てきたなー。と思いつつも…ちょっと離れていました。
先日、“わたくし…山とかぜんぜん興味ないんだけど…”と思いつつ読んだ「生還者 」「失踪者」にぐいぐい引き込まれてまして…流石!下村さん!と感服いたしました。(あとがきで知りましたが下村さんも登山の知識なく、調べて書かれたとか…ですから登山用語や道具の名前等々で置いてけぼりを食らわずに済みましたね…説明は丁寧…でも説明臭くない…さすがです)
今ちょうど「真実の檻」を読んでいます。現在序盤ですが、既に引き込まれています。
で、現在読んでいない作品が4冊かな?…チェックしておこうと思います。
手持ち豚さん。さんこんにちは!
山岳ミステリーの『生還者』や『失踪者』はほんと面白いですよね!
私も山とか興味ないのにどんどん引き込まれました。
本当すごい作家さんです。
ぜひぜひ他の下村作品も読んでみていただければ嬉しいです(*゚∀゚*)
わー!
私も下村さん、いろいろ集めてしまってます。
でもほかたまりすぎて、、全然読めていない(笑)
こういう感じの作風もあるんですね。
うん、重たい作品読んだあとに脳や気分転換によさそう!
たまりすぎて、いつ読めるか、、(笑)
わかります!集めちゃうくらいおもしろいですよねー。わたし常に金欠なのに…笑( *´艸`)
今回の作品は今までの下村さんの中でも珍しいと思います。かなり愉快なキャラクターと作風でびっくりしました。でもこういうのも面白い!
ですね。後味悪い系の後に読むと良いと思います。ぜひ、柊紅葉さんの魅力の虜に。。
本が溜まりすぎるのは……素敵な本にたくさん出会えたということで……つまり、幸せなことだと言うことですね!そういうことにしておきましょう!笑
「真実の檻」読み終えました。
テーマ的にも薬丸岳さんっぽい作品でした。あれやこれやと色々なテーマで…下村さん…多才ですねー。
管理人さまが取り上げている作品ですと「サハラの薔薇」が気になります。
ちょっと「クリムゾンの迷宮」っぽい匂いもしますね…果たしてどうなんでしょう?楽しみです。