『ミッドナイト・ライブラリー』- 自分が選ばなかった人生が、その本には書かれていた

仕事と恋人を失くし、頼れる家族もなく、愛猫まで車に轢かれて亡くしてしまったノーラは、絶望的な人生にピリオドを打つために自殺を決意する。

深夜12時に、苦痛な思いを書き残して薬を飲んだノーラだが、気が付くと不思議な場所にいた。

ラベルのない本がズラッと並ぶ、現実世界とは異なる雰囲気の図書館だった。

司書のエルム夫人によると、ここは現実と死の狭間の世界であり、置かれている本にはノーラが今までに別の選択をしていた場合の人生が描かれているらしい。

そしてそれらの本を読めば、ノーラはその時点から人生をやり直すことができるというのだ。

「もし違う生き方をしていたなら、恋人とうまくいっていたかもしれない。家族と楽しく過ごせていたかもしれない。猫も死なずにすんだかもしれない」

ノーラは期待を胸に本を読んでみる。

しかしそこで待っていたのは、予想とあまりにもかけ離れた人生だった―。

目次

やり直せば本当に幸福になれる?

「もしあの時、別の選択をしていたらどうなっていただろう」

誰しもそう考え、人生のやり直しを願ったことがあると思います。

でもやり直しても期待通りの人生になるとは限りませんし、もしかしたらより残念な結果になってしまうかも……。

『ミッドナイト・ライブラリー』は、まさにこのような「人生のやり直し」を体験し、結果に振り回された主人公ノーラの物語です。

冒頭でノーラは人生を悲観して自殺するのですが、生と死の狭間の図書館に迷い込み、人生をやり直すことになります。

過去の人生における分岐の数だけ本があり、それを読むだけで分岐点からやり直すことができるのです。

まるでゲームのセーブロードのような手軽さでタイムリープできるので、読み手としては興味津々!

先の展開が気になるし、羨ましくもあって、どんどんページをめくり続けてしまいます。

でもノーラに待っていたのは、決して幸福な人生ではありませんでした。

過去に戻って異なる選択をしても、そこにあったのは別の苦しみだけ。

どの分岐点からチャレンジしても、自分がより大変な状況に陥ったり、自分が成功しても家族が辛い目に遭ったりするばかりなのです。

結局「この選択で正解だった」と思える人生には巡り会えず、ノーラはどんどん疲弊し、希望を失っていきます。

では、一体どうすれば良いのでしょうか。

現実の世界に戻って自殺するしかないのか、それともいずれかの世界を選んで、苦しみながらも生きていくのか。

もっと良い人生にする方法は、何かないのでしょうか。

ノーラが何を見つけ、何を選ぶのかは、物語の最後に描かれているので、ぜひご自身で確認してみてください。

気付きをくれる数々の鋭い言葉

様々な過去をやり直すノーラに、司書のエルム夫人はたびたび諭すような言葉をかけます。

その言葉が、柔らかい口調ながらもドキッとするような鋭さがあり胸を突いてくるのですが、そこが『ミッドナイト・ライブラリー』の見どころだと思います。

たとえば、こんな言葉。

「自分でないものを目指せば必ず失敗します」

高すぎる目標や本心に沿わない目的のために頑張っても、最終的には満足のいかない結果に終わってしまう、ということですね。

自分自身に置き換えて考えてみると、思い当たることがたくさんあり、「なるほど、確かに……」と唸らされました。

また、

「小さな物事の持つ大きな意味を、決して過小評価してはいけません」

この言葉にも深みがあり、思い返してみると、存在の大きさに気付かずないがしろにして、失ってしまったものが過去にいくつもあったことに気付かされます。

このように『ミッドナイト・ライブラリー』は、エルム夫人が主人公のノーラを諭すという形で、読者の目もハッとさせてくれるのです。

だから読み進めるうちに、反省点や改善すべき点、幸せと思える人生に辿り着くための道筋が、おぼろげに見えてきます。

そして、今の人生が嫌だからと他の人生に安易に乗り換えるのではなく、自分が本心から求めている人生を自身で作っていこうという勇気が、じわじわと湧いてきます。

映画化も決定した、人生の糧になる名作

作者のマット・ヘイグ氏は、数多くのベストセラーを生み出しているイギリスの作家さんです。

特に本書『ミッドナイト・ライブラリー』は、世界43ヵ国で刊行され、イギリスや韓国などで記録的な大ベストセラーとなり、映画化まで決定したという名作です。

とりわけニューヨーク・タイムズでは、ベストセラーリストになんと57週もランクインし、大きな話題を呼んだとか!

『ミッドナイト・ライブラリー』はそのくらいワクワクハラハラしながら読めて、胸に沁み入るようなドラマ性もあって、読了後に心に大きなものを残してくれる作品です。

「あの時こうしておけばよかった」という後悔は誰の胸にもあると思いますが、度を過ぎると今を生きる足枷になってしまいかねません。

そうなると、失敗を恐れるあまり身動きがとりづらくなって、ますます後悔が蓄積してしまいそうです。

そのような方に、『ミッドナイト・ライブラリー』は読んでいただきたい一冊です。

後悔だけでなく、「今の生き方にあまり自信がない」という方や、「もっと満足できる人生にしていきたい」という方にもオススメ。

読めばきっと人生におけるヒントが得られると思いますし、より前向きに生きていけるようになる気がします。

より充実した日々を過ごすための道しるべになり得る温かな読書体験を、ぜひ。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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