国内ミステリー小説

『メルカトル悪人狩り』- ひねりが癖になる短編ミステリーの決定版!

事件に巻き込まれやすい作家・美袋と、自らを「長編には向かない探偵」と自称する魔性の“銘”探偵・メルカトル鮎が挑む難事件の数々を、短編集としてギッシリと詰められた、凝った作りの本作。

奇才と呼ばれる作者・麻耶雄嵩氏が放つ、大人気シリーズの衝撃本格推理集として話題を呼んでおり、一癖も二癖もある物語はとても中毒性があるため、個性的かつ本格的な短編推理小説を読むことができるというのが一つの魅力となっています。

しかし常識破りの“銘”探偵が「自分は完璧」といわんばかりに物語をかき回すため、二転三転する推理には、どんな落としどころが待っているのか予想することができません。

8編の短編はどれもひねりが効いているので読み応えがあり、読み進めていく中で予想の斜め上をいく背景が浮かび上がってきます。

ページをめくるごとに明かされる真実や、そしてそこに至るまでの物語の流れに、読者は大いに驚かされることになるでしょう。

 『愛護精神』- 読み進めるにつれてメルカトルに振り回される美袋と読者自身

1作目に収録されているこちらの作品は、1997年に発表されて以降入手困難なため「幻の作品」といわれるファン待望の短編なのですが、美袋とメルカトルの関係性や人物像がわかりやすく描かれているため、自己紹介作品としてシリーズ初見の読者も楽しめるようになっています。

「琢磨を埋めてるんです」の一節から始まる本作は、最初から不気味な空気を漂わせており、すでに始まっている事件を予感させるものの読者の想像を裏切る展開が続くため、楽しく騙されながら読み進める形になります。

メルカトルの自由奔放さと美袋の不憫さが際立つ中、複雑な因果関係の下にある登場人物たちのあいだで起きる事件は、大幅に読者の想定から外れたものではないものの、きちんと外れたところを突いてくるため、思わず唸ること間違いなしです。

24年前の作品なので当時の歴史的背景がうっすら浮かび上がるものの、今読んでも全く古臭さを感じさせない内容なので、読み進めるうちにメルカトルの渦に巻き込まれるがごとく、話に振り回されるような楽しさを感じられます。

翻弄させられる展開や、予想の上を行く結末に、素晴らしいスタートの1編を感じられることでしょう。

 『囁くもの』- 独特な空気感と真相の破壊力

「そうだ、鳥取へ行こう!」と美袋が思い立つ所から不穏な匂いが漂うこちらは、本のタイトル「悪人狩り」にふさわしく事件の内容は悪意に満ち溢れながらもコミカルなタッチから始まるので、そのギャップも本書の印象を決定づける大きなカギの一つ。

大正時代に建てられ、豪華ながら古めかしい木造の洋館で発生する殺人事件は、吊るされた死体や、階段から突き倒されるシチュエーションなど、本格ミステリーらしい設定と題材が目白押しです。

本格ミステリーのツボをしっかりと押さえつつ、メルカトルの傲岸不遜さと、後半で二転三転する推理にはどんな落としどころが待っているのか予想できず、未完成な情報が飛び交います。

謎がジグソーパズルのように散りばめられている中、終始不気味な雰囲気を放っており、それがこの物語の一つの魅力となっています。

しかしトリックや仕掛けにより、前半は謎が多く矛盾を抱えており、同じ事件から受ける登場人物の印象も一致しません。

それが、まるで何かに囁かれるように事件を解明していくメルカトルにより新たな事実が明らかになり、ジグソーパズルがはまっていくかのように、読み進めるにつれて情報がどんどんアップグレードされていきます。

「こんなミステリーがあっていいのか」と思わず唸ってしまう独特の雰囲気を味わえる“推理ミステリー”としての魅力が、本書には詰まっているといえます。

新感覚の探偵ミステリを読みたいならコレ!

前回の出版から10年の時を経て、新刊が出されることとなった本作。

発売されたばかりですが、すでに短編推理小説の傑作として絶大な評価を得ており、ミステリ好きはもちろん、新感覚の小説を読みたい方にとってはもはや必読のミステリー小説と言っても過言では無いでしょう。

ファンからは不条理すら面白く変えてしまう話の展開に「中毒になる」とも言われているメルカルトワールド。

新感覚の推理小説には興味を持ってこなかった……という方は読むのに躊躇するかもしれませんが、それはちょっともったいない!

むしろ、この本を読むことによって、麻耶ミステリの奥深さに目覚めることができるかもしれません。

どの短編もひねりと癖が効いていて強烈な後味を残すため、推理小説に興味が無くても引き込まれるほどに、本書は“ミステリーとしての面白さ”も十分に兼ね備えているということができるのです。

推理小説好きの方、他とは一味違う“銘”探偵の物語に興味が湧いた方、ただただ読み応えのある推理小説を読みたい方など、ミステリーや読書が好きな方は読んで損はないハズ!

新刊が出版されたこのタイミングで、ぜひ一読してみてくださいませ(*・ω・)ノ

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