5つ星ホテルでメイドをしているモーリーは、人付き合いが苦手で、他人の意図を汲み取ることが困難だった。
それでもメイドとしての仕事が大好きで、誇りをもって真面目に働き続けていたが、ある日事件が起こった。
清掃のために客室のバスルームに入った時、宿泊客であり不動産王として悪名の高い男・ブラックが死んでいたのだ。
第一発見者として、刑事からの事情聴取を受けることになったモーリー。
状況をきちんと説明するべきだったが、生来のコミュニケーション下手のために逆に怪しまれ、やがて容疑者として逮捕されてしまう。
日頃からあれほど仕事熱心で誠実なモーリーが、人殺しなんてするはずがない。
彼女の無実を信じるホテルの従業員たちは、仲間にかけられた疑いを晴らすために、事件の真相を探ろうとするが―。
アメリカでベストセラーとなり映画化も決定した、話題沸騰のミステリー!
善良な人々が真実のために戦う
『メイドの秘密とホテルの死体』は、ホテルのメイドとして働くモーリーが、客室で起こった殺人事件の犯人として疑われてしまうという、巻き込まれ型のミステリーです。
モーリーはコミュニケーションにおいて不器用で、ちょっと発達障害っぽいところがあります。
そこを人に付け込まれ、たびたび理不尽な目に遭っており、たとえば亡き祖母がモーリーのために遺してくれたお金を彼氏に持ち逃げされたりします。
ホテルで起こった殺人事件の犯人として警察にあらぬ疑いをかけられてしまうのも、その不器用さゆえです。
でも不器用だからこそモーリーは、真面目で何事にも一生懸命。
辛い目に遭ってもひたむきに頑張ろうとする彼女を読み手は自然に応援したくなりますし、なんとか助かってほしいという思いから、食い入るように物語を読んでしまいます。
モーリーは決して探偵のような頭脳明晰なタイプではなく、ミステリーの主人公としては一風変わっているけれど、その弱さと優しさがこの作品の魅力であり、読者の心を惹きつけるところなのですよね。
モーリーと一緒にホテルで働く仲間たちも、彼女の誠実なところを好ましく思っていて、嫌疑を晴らすために力を尽くします。
特に献身的なのがドアマンのプレストンで、彼は日頃からまるで父親のようにモーリーを支えていて、モーリーが逮捕された時には、娘であり弁護士のシャーロットと一緒に警察に駆け付けて、保釈金を一括払い。
決して安くない額なのに、モーリーのために懸命に動くその姿には胸が打たれますし、モーリーがどれほど愛される人柄なのかが伝わってきます。
このように『メイドの秘密とホテルの死体』は、モーリーを始め主要な登場人物たちが本当に善良で優しくて、読みながらジーンとする部分がてんこ盛り!
腹黒の大富豪が殺されるというダークな香りのする展開ではありますが、決して殺伐とはしておらず、心温まるタイプのミステリーと言えます。
騙されてハラハラ、立ち向かってワクワク
心温まるとはいっても、ミステリーとして生ぬるいわけではなく、ハラハラドキドキ要素もたっぷり。
たとえばモーリーが警察に怪しまれたのは、彼女のコミュニケーション下手のせいだけではなく、何者かが罠に嵌めたためです。
犯人はモーリーに殺人の罪を着せるために、わざわざ麻薬や銃まで用意して彼女に持たせ、警察の目を向けさせたのですね。
人のいいモーリーは、人助けをしているつもりでまんまと利用されてしまいます。
読み手にはモーリーが騙されていることがわかるので、読みながらハラハラ。
善良な心に付け込んで悪事を働く奴って、許せませんよね!
しかも犯人はモーリー以外にもう一人従業員を巻き込もうとするので、その腹黒さにもイライラ。
だからこそプレストンやシャーロットが事件の真相を究明するために活動するシーンは、彼らを応援したいあまり、テンション高めで一気読みしてしまいます。
作戦を練るところも、妨害を切り抜けるところも、悪戦苦闘するところも、ホテル従業員一同が黒幕に立ち向かうという図式からして面白く、ドキドキが止まらない~!
物事がうまく進んでスッキリ爽快になれるシーンも多いですし、終盤ではモーリーが持つ意外な真実にギョッとさせられたりもして、とにかくラストまで気分が盛り上がり続けます。
謎解きとしては難解ではなくアッサリしているものの、ミステリーならではの「解決に向かうまでのワクワク感」を存分に楽しめる作品です。
デビュー作にして映画化決定の傑作
『メイドの秘密とホテルの死体』は、カナダの作家・ニタ・プローズさんのデビュー作です。
作家になる前は大手出版社で編集者として働き、多くのベストセラー作家を担当されていたそうです。
つまりニタ・プローズさんは、「どのような本が世間から面白いと認められ、ベストセラーとなるのか」ということを、経験的に熟知しているということですよね。
そのため『メイドの秘密とホテルの死体』は、デビュー作でありながら、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストで堂々一位となりました。
さらに映画化も決定し、主演がアカデミー賞でノミネートされたほどの女優とのことで、世間からますます注目されるようになったとか。
これほどの話題作ですから、一度読んでおいて損はありません。
ミステリー好きの方はもちろんですし、推理が苦手という方も、本書は比較的ライトなミステリーなので、サクサクとテンポよく読めると思います。
映画が完成し、日本で放映されるようになるまでに、ぜひ原作の魅力を味わってみてください!
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