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麻耶雄嵩『貴族探偵対女探偵』が文庫化。この探偵、クセが強すぎる!

先日、麻耶雄嵩さんの『貴族探偵対女探偵』が文庫化されました!

麻耶さんといえば『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』から始まる「メルカトル鮎シリーズ」をはじめ、『神様ゲーム』『蛍』などちょっと普通ではない癖のある作品で有名です。

もちろん今回も癖が強い(特にキャラの)ので、麻耶さんの独特な作風がお好みな方はぜひ読んでみてください(ノ∀`●)

 

ちなみに今作『貴族探偵対女探偵』は、前作『貴族探偵 (集英社文庫)』に続くシリーズ第二弾となります。

個人的にもどんどん続編を出して欲しいシリーズですので、簡単にあらすじや感想などをご紹介させていただきます!(●>ω<)っ

 

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『貴族探偵対女探偵』

今作は5編からなる短編集です。

物語はすべて、女探偵・高徳愛香(たかとくあいか)の視点で進められていきます。

まずはそれぞれの事件をサクッとご紹介です。

1.白きを見れば

今作の主人公・高徳愛香が友人の別荘『ガスコン荘』に訪れた時、殺人事件に直面してしまいます。

鍵となるのは井戸に落とされた、友人のコートのボタン。

そしてここで、高徳愛香は「貴族探偵」と初めて出会うことになります。

2.色に出でにけり

何人もの恋人を当たり前のように持つ女性・玉村依子と、その男たちの間で起きた殺人事件。

恋人の一人が殺されてしまうのですが、トリックはもちろん動機が良かったです。

3.むべ山風を

大学の一室で、貴族探偵と向かい合って紅茶を飲む愛香。貴族探偵は光るキノコの栽培を見にやってきたらしい。

しかし、やっぱり殺人事件が。誰かと紅茶を飲んでいる時に殺されたようだが・・。

ティーカップの謎と解析が見所。

4.幣もとりあへず

友人と共に、座敷童子がいることで有名な『浜梨館』に訪れた愛香。

しかしやっぱり殺人事件は起きるし、「貴族探偵」の姿も見える。

結構じっくり読んでいたんですけどね。このトリックには気がつきませんでした。

5.なほあまりある

そして最終話。

ウミガメの産卵を見ることができる「亀来島」に、何者かから探偵として依頼を受けた愛佳。

やはり最終話というだけあって「やられた!」感は一番強いですね。

そういうことかい、貴族探偵さんよ!

この男、何者?!

ひげ

 

麻耶雄嵩さんの作品といえば「メルカトル鮎」や神様シリーズの「鈴木」など、ちょっと普通ではない名探偵が度々登場しますが、この「貴族探偵」もそんな癖の強い探偵の一人。

前作『貴族探偵』を読んだことのない方のために一応言っておきますと、

この「貴族探偵」は自分で推理しないのです。

 

なんと風変わりな探偵でしょう!

自分で推理しない探偵がどこにいる!と思うでしょうが、ここにいるのです。

推理をするのは貴族探偵の使用人たち。

毎回メイドや執事なとの使用人と一緒におり、事件が起きればその使用人達に事件を解決させるというのが貴族探偵です。

なんというヤツでしょうか。

しかし、やはりこれが麻耶さんのキャラ。これが面白いのです。

頑張れ女探偵・愛香!

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で、前作『貴族探偵』では貴族探偵のみがメインとなっていたのですが、第二弾の『貴族探偵対女探偵』では新たな要素が加わりまた違った楽しみ方をすることができます。

それが、女探偵・愛香の登場です。

愛香という女性は、麻耶さんの作品に登場する名探偵の中でもかなりのまともな人間です。

彼女の登場によって、一つの事件に対して複数の推理が生み出される「推理合戦」も楽しめることになります。

毎回の事件で愛香は貴族探偵の使用人たちと推理がぶつかり合うわけですが、もう「愛香ちゃん頑張って!」という感じで。

この癖の強い「貴族探偵」と、真面目な女探偵「高徳愛香」が組み合わさった時、一体どんな化学反応が起きるのか。見ものです(*´∀`*)

キャラ良し、キレよし、舞台よし

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短編でありながら一つ一つお話しに使われるトリックにはキレがあり、真実に至るまでの過程もお見事でした。

特に最終話、今までの短編にも忍ばされた伏線を回収していく様は素晴らしかったです。

主要人物のキャラクターが良いのは言うまでもありません。

またトリックはもちろん、舞台設定まで丁寧に練られているのが良かったですね。それぞれの舞台で長編ができそうなくらい作り込まれているので「もったいない!」と思ったほどです。

 

念のため言っておきますと、今回ご紹介させていただいた『貴族探偵対女探偵』は前作『貴族探偵』を読んでいなくても十分に楽しめる内容となっておりますのでご安心ください。

ですが、今作を読めばきっと前作『貴族探偵 (集英社文庫)』も読みたくなることでしょう。

だったら最初から順番に読んだ方が良い、ということになってしまいますが 笑。

というわけでぜひ、両方とも読んじゃってみてくださいな!(●>ω<)っ

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年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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POSTED COMMENT

  1. pink moon より:

    いつも楽しく拝読しております。
    この記事を読んだ後古本屋で前作の「貴族探偵」を見つけ思わず購入し、つい先日読み終わりました(^-^)/
    めちゃくちゃ面白かったです!
    どのエピソードもすごく高いレベルで完成されていて、なおかつ意外な展開があり、夢中になって次のエピソードを追いかけてしまいました。麻耶さんはお名前くらいしかしらなかったのですが(普段あまり読書をしないもので……)、なんてすごい書き手なのだろうと衝撃を受けました。
    素晴らしい紹介ありがとうございます。
    今回の記事のメインの「VS女探偵」も絶対に読みます!(自分の読書ペースが遅いもので、すぐ読みます、と言えない所が申し訳ないのですが…)
    これからもいい記事を書いてください応援していますm(_ _)m

    • anpo39 より:

      pink moonさんこんにちは (っ´∀`)っ
      ブログを読んでいただきありがとうございます。
      「貴族探偵」面白いですよね!短編だけど、ホント一つ一つの完成度が高いからすごいです。お気に召していただけたようで私も嬉しいです♪
      ぜひぜひ『貴族探偵対女探偵』の方も楽しんでください!気に入っていただければ嬉しいです。

      本当に、嬉しいお言葉をありがとうございます。
      とても励みになるんです(ノД`。)
      頑張ります!!

  2. pink moon より:

    「貴族探偵対女探偵」無事終了しました。
    いや〜、すごかったです!
    正直複雑なトリックを貴族探偵(というか使用人)があっという間に解決してしまうので、理解するのにしばらく時間がかかったりもしたのですが、にしても今回もどれも完成度が高くて圧倒されました。流石です。
    しかもただ普通のミステリーとしてすごいだけではないことが2話目を読んだ時に気づきまして、まるで多重推理という形式を破壊するかのような、一歩間違えたら無茶苦茶になるかのような試みをされていて、一体何てことをするのかと、しばらく唖然としてしまいました。本当に恐ろしい人だと思います。
    ラストの大オチも完璧でしたね。まさか前作も今回のこの仕掛けのための前フリだったのでは?と疑いを持ってしまったり。麻耶さんならやりかねないかな、なんて。
    すっかり麻耶さんのファンになってしまい、今「翼ある闇」を読んでます!これも全てanpo39さんのおかげです、ありがとうございました。
    麻耶さんだけでなく最近よくここのブログを参考に本を買っています。また別の作家さんでも面白かったら感想を書きますね。よろしくお願いしますそしてこれからも応援していますm(_ _)m

    • anpo39 より:

      pink moonさん!いつもありがとうございます(´∀`●)
      いや〜お気に召していただけたようで大変嬉しいです!
      短編集という短い物語にまさか多重推理を組み込んだり、そんなのアリ?!と言わせてくれる斬新な設定はさすが麻耶さんですよね。
      オチも見事に決めてくれましたし、ホントただただ頭が下がるばかりです。
      「翼ある闇」を読んでいるんですね!!いやあ嬉しいです。私も大好きな作品です。もうぜひ麻耶ワールドにハマっちゃってくださいな(ノ∀`*)
      とんでもございません、こちらこそ本当にありがとうございます。他にもpink moonさんのお気に召すような小説に出会っていただければ嬉しいです!

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