『マイル81 わるい夢たちのバザールI』恐怖の帝王キングの最新短編集その1

主人公が車を走らせていると、薄汚いワゴン車が停車しているのを見かけます。

事故かもしれない、怪我人がいるかもしれないとその車に近づいた主人公はその瞬間、激痛に襲われます。初期のスティーヴン・キングらしさを満喫できる「マイル81」。

ハラスは子どもを殺した罪で有罪判決を受け、死刑を待つばかりでした。死刑執行目前、ハラスはついに口を開きました。

ハラスは、殺したのは人間の子どもの形をした人間ではない生き物だったと言い始めます。(「悪ガキ」)

不思議な電子書籍リーダーを購入したウェズリー。「実験的機能」としてUr機能が備わっていました。聞きなれないその機能に、ウェズリーは違和感を覚え始めます。(「UR」)

その他「プレミアム・ハーモニー」、「バットマンとロビン、激論を交わす」、「砂丘」、「死」、「骨の教会」、「モラリティ」、「アフターライフ」の計10篇が収録された短編集です。

目次

スティーヴン・キング『マイル81 わるい夢たちのバザールI』

廃墟となったパーキングエリアに駐まる1台の車。不審に思って近づいた者たちは――キング流の奇想炸裂の表題作。この世に存在しない作品が読める謎の電子書籍リーダーをめぐる「UR」。忌まわしい恐怖の物語「悪ガキ」。アメリカ文学の巨匠に捧げる「プレミアム・ハーモニー」他、ホラー、SFから文芸色の強い作品まで10編を収録。

「ホラーの帝王」と称されるスティーヴン・キング氏の短編集の上巻です。

キング氏と言えば映画や長編小説の印象が強いという方も多いかもしれませんが、このような短編もたくさん発表しています。

本作は日本発発表となる作品ばかりで、これまでキング氏の作品を読んできた方にとっても新鮮に楽しめることでしょう。

キング氏らしい迫力のある映画のような短編から、じわじわ迫りくる怖さを描く短編、さらに文芸色の色濃い短編まで収録されています。

キング氏の定番である超常現象系のホラー小説は半分ほどで、残りはじっくりと読み進めていくような物語です。

キング氏の生死観や、この世への愛情なども感じられます。初期のキング氏の作品が好きな方にとっては非常に楽しめる短編集と言えるでしょう。

もちろん、キング氏の作品を読んだことがないという方でも楽しめます。どの作品にもキング氏の才能が詰まっており次々に恐怖が襲い掛かってきます。

怖いのに次が気になる!と、どんどんページをめくり続けてしまうことでしょう。

初期の作品から近年の作品までバランスよく収録されていますが、いずれも時代を感じさせない、キング氏ならではの視点の物語ばかりです。

今作には10篇の短編が収録されていますが、そのすべてにキング氏本人の序文と解説文がついています。

本人がどんなことを考えながら書いたのか、何をモデルにしたのかなどがわかるだけでなく細かい説明を読むことができ、作品への理解をより深められるのも魅力的なポイントの一つです。

キングの短編の上手さがよくわかる一冊

キング氏はこれまでにも多くのホラー小説、SF小説を発表しています。

「スタンド・バイ・ミー」や「シャイニング」、「キャリー」など映画化されて世界的にヒットした作品も多く、小説を読まない方でもご存知なのではないでしょうか。

キング氏のホラー小説には超常現象や人間の狂気というものが多く登場します。

しかしどれも一辺倒ではなく、それぞれに違った恐怖を味わえます。今作の中でどの話が一番気に入ったか、自分の中でその理由を考えてみるのもいいでしょう。

作家としても大ベテランのキング氏ですが、常に向上心、探求心を忘れないのも特徴的です。

時代を読み取り、「UR」などではテクノロジーをホラーに落とし込むことにも前向きにチャレンジしています。

また、この「UR」は「ダークタワー」というキング氏の別の作品のスピンオフ作品になっています。今作が気に入ったら、ぜひ「ダークタワー」の方もチェックしてみてください。

「わるい夢たちのバザール」は今作と次作『夏の雷鳴 わるい夢たちのバザールII』の上下巻に分かれています。

下巻にもキング氏の才能を満喫できるホラー小説がたくさん収録されていますので、そちらも併せて読むことをおすすめします。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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