さて、とうとうこの時がやってまいりました。
名作『屍人荘の殺人』に続くシリーズ第二弾、『魔眼の匣の殺人』です。
発売日に本屋さんに駆け足で行き、大事に読もうとしていたのにあまりの面白さに1日で一気読みしてしまったのは私だけでないはず。
いやしかし、『屍人荘の殺人』でこれ以上面白い作品を書くのはさぞ難しいだろうなあと思っていたのにあっさり超えて来ちゃう感じ、恐ろしいですな。
今村昌弘『魔眼の匣の殺人』
前回の事件から斑目機関について調べ始めた葉村は、“呪われた体質”を持つ剣崎比留子と日々を過ごしていた。
彼はある人物から機関が関係する施設がある県に隠されていると知る。
斑目機関は人里離れた山の中で超能力の研究が秘密裏に行っていたのだ。
機関の手がかりを求めて、葉村は剣崎と一緒にその施設を訪ねることにした。
「魔眼の匣」と呼ばれる施設は、村の住人から恐れられるサキミが住む場所だった。
サキミは未来視を持ち、絶対にはずれない予言を伝える。彼女の予言により、村からは住人が消えていた。
「あと二日間で男女二人ずつ四人死ぬ」と言われる場所に取り残されてしまった葉村と剣崎。
予言の通り、魔眼の匣では人が死に始める。
二人は斑目機関の手がかりを探しながら、事件の謎へ迫っていく。
ミステリと「予言」の組み合わせが絶品
ミステリは何よりも論理的であることが求められます。
論理的だからこそ、読者は文章から謎を解こうと頭を悩ませるわけです。基本的に論理を飛躍させるような要素は扱いが難しいと言えます。
超能力やファンタジー的な要素は時にストーリーをナンセンスにしてしまうのです。
ですが、「魔眼の匣の殺人」はそこを上手にトリックへと取り入れました!
超能力が存在することで生まれる独特の世界観、そこで思い悩むキャラクターたちが躍動感に溢れて描かれています。
かと言ってミステリの肝とも言える、事件やトリックが陳腐かと言えば、そんなことはありません。
れっきとした超能力、しかも未来視というミステリで扱いづらいものを物語の軸として上手に活用しています。
『サキミ様の予言は必ず当たります』
(P78)
——変えれない予言は呪いに近いもの。
その前提を元に、時には逆手に取りながら、ストーリーは着々と進んでいきます。
普通のミステリとしても難解な要素も、話と絡めることで違和感なく飲み込むことができ、今村さんの力量を感じさせます。
最初はまったく無関係に見えた人物たちの関係が徐々に見え始め、謎に近づいていく様はドキドキせずにはいられません。
ミステリの面白さはトリックと動機に大きく左右されますが、両方ともここまで面白い作品は非常に珍しいですね。
最後まで犯人の予想が難しく、それどころか、犯人がわかった後でさえ残った謎にワクワクすること間違いなしです。
超能力ミステリの傑作と言える作品を存分に楽しんでください。
エンタメ性にも優れていて一気読みせざるを得ない(寝不足)
『女性陣の中で確実に比留子さんに生き残ってもらうためには、どうすればいい?』
(P264)
ミステリは周囲の描写などが多くなりがちで、文字を追うことに疲れるものもあります。
その点『魔眼の匣の殺人』は映像化しても面白そうな展開が続き、文字を読むことに疲れるなんてことはありません。話が進むごとにワクワクしながら読み進められます。
最初から最後まで目を離すことができない面白さがあるのです。
同じ登場人物であっても、最初と最後の印象がガラリと変わったり、その過去を知ることでもう一度読み返したくなるストーリーに。
探偵に翻弄される展開に読者も同じように振り回されてしまいます。
前作とのつながりや、謎に包まれた斑目機関との対峙を感じさせる表現が数多くあるのもグッド。
一応前作『屍人荘の殺人』を読んでなくても楽しめるのですが、まあ間違いなく絶対に読んでおいたほうがストーリーを深く楽しめるでしょう。
ある地域に閉じ込められ、特殊な環境に置かれた人間の行動はまったく予想がつきません。
極限状態の人の感情を推理に含めながら、話が進んでいくのは感心してしまうほど鮮やかな手法でした。
続刊も間違いなく出る雰囲気ですので、楽しみに待ちたいです。
「予言」をこれ以上うまく使ったミステリは他にない
帯に書いてあることって、大体誇張されたことだったりしますよね。「読んでみるとがっかり」なんてことも、まぁ、あります。
そんな中で、まったく期待を裏切らない作品が「魔眼の匣の殺人」です。
謎めいた言葉、絶対の予言、など超能力とミステリで構成された世界観は圧巻。こんなにも他の人にも勧めたくなるミステリは久しぶりです。
文章で読んでいても場面が想像できる描写力と、人間の感情を切り取ったような表現に読んでいる間ずっとドキドキワクワクが止まりません。
超能力という理解できないものを持っていても、結局は同じ人間なんだと感じさせてくれます。
他の人にはない能力を持つがゆえの苦悩は、多かれ少なかれ共感できると思います。
人の内面について踏み込むような描写も多く、キャラクターが生き生きと描かれています。
それによりくすりとしてしまう場面や、冷や汗を書く場面など、世界に入り込んで楽しむことができる作品に。
特に前作に比べて剣崎比留子さんの可愛い部分が多く描かれていましたね。ええ、すっかりファンです。
もうすでに続編が待ち遠しくて仕方がないのですがどうすればよいのでしょう。


コメント
コメント一覧 (10件)
きたあ! この記事を楽しみにしてましたよ!
屍人荘のハードルを越え、稀に見る秀逸な設定の取り扱いと巧妙な論理、本当に上質なミステリを久し振りに読むことができて心底嬉しかったです! 解決の見事さ、そして後半には‥‥、してやられました!
続編も楽しみですし、屍人荘の映画化、コミカライズも注目しています! この感動を分かち合えて嬉しい!
アラシナオヤさんこんばんは!
いやーほんと凄い作品でしたよね!
まさかこうも屍人荘のハードルを越えてくるとは思いませんでした。
予言をここまで上手く使って来るとは流石の一言。
屍人荘の映画も絶対観に行きますし、コミカライズも続編も楽しみです!
私もこの感動を分かち合えて嬉しいです!ありがとうございます!
読了後、皆さん同じだと思いますが、霧越邸を思い出し… これが本格、平成の次の元号の未来型新本格??w(屍人荘も含め)なんだなあとため息しかでません(賞賛)
続編にこだわるって、相当難しくプレッシャーもすごいと思うんですが、今村さんってそれを全く感じさせない この人はめっちゃ楽しく書いてるんじゃないかなーって勝手に想像してしまう、そんなイメージです
おかげですっかり比留子ファン どうしてくれるんだw
映像化可能な本格ってすごいですよね 小説だからこそできるトリックも大好きですが、実写で見れるかもというまた別の嬉しさも兼ね備わった本格なんて!彡(^)(^)
こはるさんこんばんは(*´∀`*)ノ
実は私も思い出しました!笑
まさに新本格の新しい幕開けです!
わかりますわかります、プレッシャーも凄そうですけど何よりミステリが好きだという気持ちが伝わって来るというか。
私も完全に比留子ファンなので続編が今から待ち遠しいです!
屍人荘の映画化はもちろん、この魔眼も映像化して観てみたいですねえ彡(^)(^)
こはるさんこんばんは(*´∀`*)ノ
実は私も思い出しました!笑
まさに新本格の新しい幕開けです!
わかりますわかります、プレッシャーも凄そうですけど何よりミステリが好きだという気持ちが伝わって来るというか。
私も完全に比留子ファンなので続編が今から待ち遠しいです!
屍人荘の映画化はもちろん、この魔眼も映像化して観てみたいですねえ彡(^)(^)
読み終わりました!いやー、単純に面白かったです。最後はうなりましたね。
ミステリーと独特なシチュエーションの融合では前作と勝るとも劣らない完成度ですねー。ラストに次回作もあるような書きっぷりはありましたが、ほんとすぐにでも読みたくて困ります(笑)。読み終わるのが残念に思う本は久しぶりでした。
いやー、この作者に出会えてよかったです。
読まれましたかー!
ほんと、すごい完成度です。あの屍人荘をこういう形で超えてくるとは思いませんでした。
次回作読みたくて仕方ないですよねー笑
いつになるのでしょうか。
同じく、今村さんに出会えてよかったです!
今さらコメントですいません!
これもまだ読めてない、、、
前作も面白かったですからね。
令和最初はこれから読もうかな??
今更コメント大歓迎です!笑
この作品はほんとおすすめですし、ミステリとしてものすごく面白いです。
ぜひ令和一発目にどうぞ!
読みましたー!!!
全然犯人わかんなかったし、
ミステリとファンタジーが合わさっても胡散臭くなく(笑)
最後も良かったですね。
比留子さんも好きですが、私は葉村君が好きです。
次が早く読みたいな~~