『街角の書店(18の奇妙な物語) 』は「奇妙な味」の入門書に超おすすめです

さて、『街角の書店 (18の奇妙な物語) 』です。

ズバリ〈奇妙な味〉が18編も収められたアンソロジーです。

〈奇妙な味〉ってどんなものなの?と疑問に思う方はぜひこの作品を読んでください。これを読めばわかります。「なるほど。これが奇妙な味か!」ってなります。

いわば「奇妙な味の入門書」という感じ。

素晴らしい作家さんたちの、選ばれし奇妙な味の短編がぎゅっと詰め込まれているんですよ!はっきり言って贅沢すぎます。こりゃ読むしかないでしょう。

というわけで、今回はこの作品の中から幾つかの短編をピックアップしてみましょう。ぜひご参考にしてみてください。

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➡︎シャーリイ・ジャクスンの名作短編集『くじ』を読んで「奇妙な味」を楽しもう

目次

『アルフレッドの方舟』

地元で商人をしているアルフレッドは、約1年後の6月20日に大洪水が起こることを予知します。

そのために僕は方舟を作る。だから新聞に記事を乗せて、みんなにも注意をしてくれ!と地方紙の編集長に声をかけます。

しかし編集長からは頭のおかしいヤツと思われ、まったく信じてくれません。

アルフレッドは街の人々に大洪水が起きることを呼びかけますが、誰も耳を貸しません。むしろ、せっせと方舟を作るアルフレッドをバカにする始末。しかし何を言われようとアルフレッドは方舟を作ることをやめませんでした。

そして運命の6月20日が近づいてきた頃、本当に天候が変化してきて、激しく雨が降り始めました……。


いやーこのイヤな感じ好きですわー。真っ黒ですわー。コンチクショウですわー。

『おもちゃ』

ハリーの目に止まったのは、自身が子供の頃に遊んでいたトラックのおもちゃでした。

なぜ自分のおもちゃが骨董品屋のウインドーに飾られているのだ?

と思いながらも、その骨董品屋に入ったハリー。

トラックのおもちゃを買うことに決め、何気なく店内を見渡してみるとハリーは奇妙なことに気がついた。

なんと、この店に置いてある商品全てに見覚えが……。


これこそ、「まさに奇妙な味」といった物語ですね。これなんですよ。求めているのは。

『遭遇』

吹雪で荒れた夜、停車場に長距離バスが到着しました。

その停留所にはしばらく他のバスは来ないとの事なので、ほとんどの客は近くにある食堂に避難していきます。

しかし「この雪の中を出て行きたくない」という理由で、一組の男女が停留所に残る事になりました。

雪に囲まれた、寒い寒い密室、残された男女。

淡々と物語が進んでいく中、なぜかわからないけどジリジリと奇妙な味が口の中に広がっていくような感覚になります。

ああ、この空間ヤダわー!

『試金石』

ある書店で出会ったスベスベした石。

前の持ち主曰く、古代インドのもので人間の魂を包み込んでいる、とも言われているらしい。

なぜか魅了され、5ドルで買って家に帰ったランドルフ。

しかしその頃から、ランドルフに大きな変化が訪れていく……という物語。


かなり好きなオチ。謎のモノに取り憑かれてしまった人間のお話って良い。ザ・奇妙。

『M街七番地の出来事』

いやこれ、内容は詳しく言えないんですけど「風船ガム」のお話なんですよ。

風船ガム一つでこんなヘンテコな物語が出来上がってしまうとは驚きです。

奇想天外という言葉がピッタリで、個人的にもかなり好きなタイプ。

「お、お、おとうさん!」息子はうめいた。「ほんとにぼくがやったんじゃないってば。ぼくがガムを嚙んでいるんじゃないーーガムがぼくを嚙んでるんだ」

P.287より

ガムがぼくを嚙む??どういうこと??

って思いますが、これが奇妙な味なんです。楽しみましょう。

『街角の書店』

で、表題作。

作家のマーストンはアパートの一室で苦戦していた。

完璧なテーマとプロット。完成さえすれば素晴らしい傑作になる事は間違いない。

しかし、暑い!なんなんだこの熱気は!まるで窯の中のようだ!

というわけで気分転換に外に出たマーストンは、古びていてカビ臭い小さな書店の前に立っていた。前々から、なぜか魅力を感じていた怪しげな書店。

中に入ってしばらく本を見渡してみると、とんでもない事に気がついた。

ここに並んでいる本は……そんなバカな……。


さすが表題作。安定して奇妙な世界へ連れて行ってくれます。

おわりに

ここで紹介したのはほんの一部。全部で18編も収められていますからね。

他にもジョン・アンソニー・ウェスト『肥満翼賛クラブ』やシャーリイ・ジャクスンの『お告げ』、ロナルド・ダンカン『姉の夫』、ロジャー・ゼラズニイ『ボルジアの手』など名作揃いなんですよ。

これだけ読めば間違いなくヒットする短編に出会えます。そしたらその作家さんの他の作品を読んでさらに楽しい、っていう最高の流れになります。

しかもどれも短いお話なのですとっても読みやすい。ぜひお気軽にお手にとってみてください(*´∀`*)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (3件)

  • こんばんはー
    個人的には『おもちゃ』と『街角の書店』に惹かれました☆明日本屋さんで探してみます。
    anpo39さんの文章は本当に引き込まれますね!面白い本に出会えるコツがあれば教えてください(^^)
    これからも楽しみにしています!

    • 30os さんこんばんはー(´∀`*)
      ご興味を持っていただいて嬉しいです!非常に面白い作品集ですのでぜひ♪
      嬉しいお言葉をありがとうございます。。うう。。
      面白い本に出会えるコツなのかわかりませんが、私はとにかく本屋さんに足を運んで、ピン!と来た作品を片っ端から手に取り最初に数ページをサッと読んで、面白そう!と思ったら買う、というのを繰り返しています。おかげさまでいつも金欠ですけど(ノω`*)
      あとは街角の書店のような、いろんな作家さんの作品が入ったアンソロジーを読んで、面白い作品があったらその作家さんの他の作品を読んでみる、とかですかね〜。
      楽しみにしていただいてありがとうございます!面白い本をどんどんご紹介していきます!

      • 秘訣ありがとうございます!
        やっぱり足繁く通うのが一番ですよね(^^)
        私は金欠で図書館通いばっかりですが、anpo39さんのようにたくさんの本に出会えるよう、もっと通ってみようと思います☆

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