今回ご紹介させていただきたいのは、英国女流作家のE・C・R・ロラックさんの作品です。
なんといったって英国推理小説の黄金期を築きあげた女王の一人ですからね。
作品の帯には「クリスティに比肩する、もう一人の女王」なんて書いてあります。これは期待するってもの。そして実際にとっても面白いです。
しかし英国ミステリーとしてとても面白いのに、日本ではイマイチ知名度が低い気がします!!もっと読まれて騒がれて欲しいです!というかもっと翻訳していただきたい。
いやほんと、英国ミステリに興味があるならぜひ読んでみてくださいな。

1.『悪魔と警視庁』
いかにも古典らしい古き良き英国ミステリー。
深い霧に包まれたロンドンで、主人公であるマクドナルド主席警部の車に押し込められた男の死体。しかもその死体は悪魔の仮装をしていた。いったい誰が?なんのために?
探偵が自分の車の中で死体を発見する、という魅力的な始まり。一瞬にして引き込まれます。
ですが、この後に派手な展開や大きな驚きというものはあまりありません。いたって普通の古典ミステリといった感じです。
だがそれがいい!雰囲気やストーリーに酔いしれながら淡々と読み進めましょう。これぞこの作品の楽しみ方。
「おや、このままゆったり終わるのかな」と思わせておいて、最後には綺麗に伏線を収束させ幕を閉じます。
何よりこのシリーズ、マクドナルド首席警部が探偵役なわけですが、彼のキャラクターがとてもステキ。天才的頭脳を持ちながら非常に紳士的。すぐにファンになっちゃいます。
濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰庁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。
2.『鐘楼の蝙蝠』
私は先ほどの『悪魔と警視庁』と続けて読んで、「あ、やっぱりロラック好きだ」と確信した作品。
①作家ブルースがドブレットという男に付きまとわれていた。
②彼を心配した友人から依頼を受けた新聞記者グレンヴィルはドブレットの住居を突き止めるが、ドブレットに逃亡されてしまう。
③しかし、その住居からパリに行ったはずのブルースのスーツケース発見される。さらに捜索すると、今度は部屋から首と両手首のない遺体が発見された。
という猟奇的な幕開け。ワクワクです。
〈顔のない死体〉の面白いところは「犯人は誰か?」という謎はもちろん「この死体は誰なんだ?」という所にもあるわけで。こういう作品を読むと改めて〈顔の無い死体〉の面白さを実感できます。
中盤はミスリードされまくりで(されていることに気がつかない)、もうさっぱりワケがわからないよ!と脳が停滞したところで終盤に入り一気に物語が動き出すっていう素晴らしき構成。
トリックもシンプルながら「おお!」ってなるし、オーソドックスなストーリーや作風は読んでいて安心します。
作家ブルースは、ドブレットと名乗る謎の男に身辺に付きまとわれて神経をとがらせていた。
彼を心配する友人の頼みを受けて、新聞記者グレンヴィルはドブレットの住みかを突き止めるが、件の人物は翌日行方をくらませ、空き家からはパリに出立したはずのブルースのスーツケースが発見される。
3.『曲がり角の死体』
ロラック最高傑作候補の一つ。
交通事故に巻き込まれて死んだと思っていた男が、死因を調べてみたら一酸化炭素中毒死だった!という魅力的な謎にグイッと引き込まれちゃう序盤。
どうせ当たらないので犯人を推理しながら読んだわけではないのですが、登場人物が見事に怪しいやつばかりで非常に楽しめました。
しかも作品を読むにつれマクドナルド首席警部の魅力が増していく。超スマート。伏線をちゃんと回収しながらの推理はお見事であり、謎解き小説(パズラー)の面白さが存分に伝わってきます。
今作はミステリとしてはもちろん特に雰囲気が好き。田舎町が舞台の海外ミステリってなんでこんなにそそられるんですかね。
田舎町の雰囲気を味わいながら、時間があるときにのんびり読みたいものです(●´人`)
大雨の夜、急カーブの続く難所で起きた自動車の衝突事故。大破した車の運転席からは、著名な実業家が死体となって発見される。
おわりに
ロラックといえば他にも『ジョン・ブラウンの死体』や『死のチェックメイト』などが有名なんですけど、なにせ手に入りにくい。
これから読まれるのであれば、翻訳されたばかりの今回ご紹介した3作品をおすすめしますよ。
早く他の作品も翻訳していただけないかなー。

それでは良い読書ライフを!(=゚ω゚)ノ
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