こんにちは、最近エラリイ・クイーンの再読にハマっているanpo39です(*^ω^*)
旧訳版の方は昔に読んではいたんですが、なんとなく新訳版を読んでみたところ、その読みやすさに驚いております。
もしこれから読むのであれば、断然新訳版の方をオススメします。
というわけで、簡単にご紹介を。
物語の舞台はニューヨーク。
連続殺人事件が発生し、街中が恐怖していました。
犯行は絞殺というシンプルなものでありながら手がかりは掴めず、また被害者にも統一性がないため捜査は難航していました。
犯人は「猫」と呼ばれメディアを賑わせ、ニューヨークでは絞め殺された野良猫が多数発見される、暴動が起こるなど、一種のパニック状態に陥っていました。
クイーン警視はそんな状況を鑑み、彼の息子であるエラリーに相談します。エラリイは過去捜査に失敗した経験があり、最初は非協力的でした。
しかし周囲の説得によって渋々捜査に参加します。
頭脳明晰で過去にさまざまな事件を解決したことがあるエラリイが参加し、ひょんなことから犯人を特定、逮捕に至ります。
しかし……!
という、謎が謎を呼び、深みにはまっていくミステリー小説です。
エラリイクイーンの苦悩『九尾の猫』
名探偵エラリイ・クイーンが登場する作品の中でもディープなファンから密かに名作と謳われている作品です。
「猫」が引き起こす連続殺人事件に潜む繋がりを探し出す、いわゆるミッシングリンクもの。はたして被害者は本当に無差別なのか。
それでいてサイコキラーものでもありますが、ニューヨークを舞台にした『猫』との対決は息がつまるような閉塞感があってグイグイ読ませてくれます。
推理するというよりも、サスペンス劇として読むのも良いかもしれません。
そのサスペンス劇の中にしっかりとフーダニットのプロセスが盛り込まれており、さらに終盤の最後の推理によってミステリとしてのクオリティも確立されていますね。
この物語は「十日間の不思議」の次に発表されたもので、作中でも前回の事件について簡単に触れられています。
「十日間の不思議」で自分の推理に自信を持てなくなったという設定が今作のアクセントにもなっているので、気になる方はそちらも読んでみることをおすすめします(十日間の不思議、新訳版出てほしいなあ)。
必ずしも前作を読まなければならないというわけではありませんが、エラリイ・クイーンという人物の解釈を深めるためには読んでみても良いでしょう。
「十日間の不思議」に続き、今作でも事件はエラリイ・クイーンによって解決されますが、その先には物悲しい結末が待っています。
その結果に苦悩するエラリイ・クイーンの様子もしっかりと描かれており、感情移入してしまいます。
ただの天才ではない、一人の人間としてのエラリイ・クイーンの物語にも注目です。
最初は謎解きがメインだったエラリイ・クイーンのシリーズも、回を重ねるごとに人間の感情の描写に力が入っていきます。
エラリイ・クイーン自身はもちろん、印象的なのはニューヨークに住む人々の描写です。
顔も名前も動機もわからない連続殺人鬼に、ある者は怯え、ある者は好奇心をむきだしにし、ある者はストレスを発散するために残虐な猫殺しを行います。
1949年にアメリカで発表されたミステリー小説ですが、人々がパニックに陥る過程や結果は現在でも変わらないと痛感させられます。
感染症の蔓延で人々が過敏になっている今とも重なる部分があると感じました。
また、今作は1978年にも翻訳されていますが、新訳が2015年に出版されています。
読書家の中でも古い翻訳が苦手で話に入り込めないという方は多いですので、比較的読みやすい新訳から入ってみることをおすすめします。
エラリイ・クイーンシリーズが支持され続ける理由は、綿密に練られたプロットだけではありません。
思わず唸ってしまうロジックに加え、主人公であるエラリイ・クイーンのキャラクター像も大きな理由の一つです。
名探偵が登場するミステリー小説といえば、世間知らずで横柄な探偵が登場しあっという間に神がかり的な頭脳を駆使して事件を解決する、というものが多いです。
それだけなら、エラリイ・クイーンシリーズはやや地味なミステリー小説という位置づけだけで終わっていたでしょう。
エラリイ・クイーンが頭脳明晰だという事実は変わりませんが、彼は普通の人間と同じように悩み、苦しみ、成長していきます。
そんな様子も丁寧に描写されているからこそ、愛着を持つファンが多いのです。
前作、今作ではとくにエラリイ・クイーンの心の内側について深く掘り下げられています。
今作から読んでも従来の探偵像を覆すような内容を楽しめますし、シリーズを何作か読んでいる方は彼の新たな部分を知れて、ますます作品全体を楽しめるでしょう。


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