第1作目の『虚構推理 鋼人七瀬』以来の長編作品である、『スリーピング・マーダー』。
2作目もヒットしましたが、3作目も読者を不思議な世界にいざなってくれています。
全てが嘘で不真実なのに、読み終わると妙に納得してしまう、今までのミステリとは180度違うようできちんとミステリという部分は変わらないのですが、物語が進むごとにその虚構や不真実を待ってしまう中毒性はさらに増していると言えます。
口コミでもおおむね高評価を連発し、のめり込む読者が大量発生している最新作を今回はたっぷりとご紹介いたしましょう!
城平 京『虚構推理 スリーピング・マーダー』のあらすじ
11歳の頃の事象がきっかけで妖怪と人間の調停役として怪異事件を解決してきた岩永琴子。
そしてその琴子について、一緒に事件に立ち向かうワトソンのようであり琴子の恋人でもある男性、九郎。
今回このコンビに舞い込んできた依頼は、『親族に自身が妻を殺した殺人犯である事を認めさせてほしい』というもの。この依頼してきたのは大富豪の老人だった。
しかし、実際に妻を殺したのは妖狐の力だった。老人は23年前、妖狐に妻を殺すように依頼し、それを完遂してもらっていた。
そのためこの老人自身には崩せないアリバイがあり、親族はこのせいで殺人犯であることを信じてはくれないというあらましだったのだ。
妖怪の存在を伏せたまま老人が犯人という事を納得させなくてはいけないという難しい依頼に様々な考えをめぐらす琴子と九郎。
今回はどのようにして老人率いる富豪一家を納得させる推理を考え、展開していくのか。
嘘か誠か。自分たちが見ている世界が偽物なのか、虚実ないまぜの技巧ミステリの第3弾が開幕する!
今回は前作とは違い、1つの長編となっているため、細かい設定や緻密なストーリーが魅力となっています。
どうしてこの老人が妻を殺したことを認めさせてもらいたいと考えているのか、どうして自分の手ではなく妖怪に殺人を頼んだのかなど、どうしてづくしのストーリーですが、読み終わるころには城平先生のマジックにハマっていく作品となっています。
城平 京『虚構推理 スリーピング・マーダー』の口コミ【読者の感想】
それではこの作品を実際に読んだ方の口コミや感想をご紹介していきましょう。
『いかなるときも公平であらなければならない。そんな琴子の信念が伝わってくる作品です。
もし、情が動けば結果は変わっていたかもしれない。真実は暴かれることがなかったかもしれない。
ですが、やはり琴子にはそんな情など感じませんでした。
虚構のなかに潜む真実。琴子の怖さはこういうところにあるのだと、改めて知ることができる作品でした』
『天知学が、伯父に対して琴子を自分の思い通りにしようとはしない方がいいという忠告に、
たった一言で彼女の怖さがわかった気がします。
そして、琴子が「真犯人を指摘するとしましょう」というシーンは、ワクワクとゾクゾク感を一緒に味わった感じがしました』
『大富豪の老人の妙な依頼は、作品をこれまでになく盛り上げてくれたと思います。
妖狐の力を借りて妻を殺したが、怪異のことは言わずに、そのことを親族に証明してほしいという。
緊迫感という意味では物足りなさを感じるかもしれないが、琴子の本当の恐ろしさを知る意味では、この作品はかなり良かったと思います』
『正直今までの虚構推理の中で一番面白かったと感じました。かなり細かくストーリーが作りこまれていて、読み終わったあと達成感も感じました。
アニメや漫画でも人気の理由がよくわかります。
琴子は人間のはずなのに、どこか人間らしく感じない無機質な部分があり、私はそれがこの作品にあえて違和感を感じさせないのかなと感じました。
新しい作品が出たらまた真っ先に読みたいと思います!本当におすすめです』
3作目の今回もやはり評価はとても高かったです。読み応えがあったという意見がとても多く感じられました。
たくさんの奇妙な点がするすると1本の線のようにつながり、納得する最後に繋がっていくところが最高です。
なおも勢いが止まらない『虚構』を楽しめる作品
シリーズものというのは当たりはずれも起こりやすいです。映画でも1作目は面白かったのに2作目は駄作でがっかり、というのをよく聞きますよね。
しかし、『虚構推理』シリーズにはそんなことは一切ありません。
どのストーリーもそれぞれいい意味で違った味わいを感じることが出来、読者を飽きさせることがないのです。さすが城平先生と言わざるを得ないでしょう。
また、ストーリーが進んでいく中で、琴子や九郎がどのような人物でどんなコンビなのかが浮き彫りになっていくので、こちらとしても琴子たちに寄り添って謎を考えるクセがついているように感じます。
今回も、一見人間からの依頼に対して琴子が解決しているように見えるのですが、やはり琴子は虚構や妖怪にしか興味がないのです。
それでも人間と関わっていくというどこかジレンマのようなものすら感じます。
琴子ってこれだから琴子なんだ、このシリーズはこうでなくっちゃ!という風に、琴子の対応を待ちかねているのです。
今回の作品で一番怖いのは、妖怪に妻殺しを頼んだ大富豪の老人ではなく、琴子自身なのではないかと考えさせられました。
1本の長編だからこそ、この作品全体を通して琴子の考え方や心の奥底までを知る事が出来ますし、物語にも深みが出ます。
逆に、今回の作品を読んでから1作目や2作目を読むと、琴子がこの時どのように思っていたのかをこちらが推理することもできますし、琴子の言葉の真の意味を後から理解することもできるでしょう。
それについていく九郎の気持ちもまた、付随してわかっていくのではないでしょうか。
琴子たちの虚構推理はまだまだ続くでしょう。それだけ妖怪は身近にたくさん存在するのです。次なる依頼がくるのを私もただじっと待つ読者のうちの一人です。
この時点で私たちは城平先生という妖怪に取りつかれて『虚構推理』のとりこになって抜け出せなくなっているのかもしれません。
是非今作もとりこになってのめり込んでみてください。
コメント
コメント一覧 (2件)
おお!虚構推理特集ですね♪
このシリーズ…到斜っぽいけど到斜じゃない!?そんな感じの設定も面白いですが、何より九郎と琴子二人のキャラが立っているから、そのやり取りだけでこの世界に持っていかれる感がありますよね。
そろそろ新作出て欲しいですね。次はもう少し六花も絡んでくるのかな?
手持ち豚さん。さんこんにちは〜(*’▽’*)
そうなんです、最近再読したらハマってしまって。
そうそう、九郎と琴子二人のキャラがよくて、会話とか絡みとかそれだけでグイグイ読んじゃうんですよねえ。
ですね!新作期待してます!