先日、久坂部羊(くさかべよう)さんの『嗤う名医』が文庫化されました!
久坂部羊さんは他にも『廃用身』や『神の手』『無痛』など数々のヒット作を生み出している作家さんです。
今回は文庫化を記念に、『嗤う名医』の感想やあらすじなどをご紹介させていただければと思います(●>ω<)っ
作品紹介:久坂部羊『嗤う名医』
今作は6編からなる短編集です。
収録されている作品は
・「寝たきりの殺意」
・「シリコン」
・「至高の名医」
・「愛ドクロ」
・「名医の微笑」
・「嘘はキライ」
の6作品。
さっそく、それぞれどんなお話なのか少しだけご紹介しちゃいます!(●´∀`●)ノ
1.「寝たきりの殺意」
主人公は、下半身が不自由なため寝たきり状態にある老人。
いつも嫁に介護をしてもらっているが、嫁の態度はいつも嫌な感じ。
言い訳をして介護をあしらったり、介護をしてもいないのに先生に嘘の報告をしたりもする。
そんな中、とあるキッカケで老人は嫁に殺意を覚え始める・・・。
2.「シリコン」
今まで非常に運の悪い人生を送ってきた夕子。思い返してみても運の悪かった出来事ばかりだ。
そんな夕子は胸が小さいというコンプレックスを抱えていた。
自分で出来る限りいろいろ試してみたけれど、効果は現れず。
そして夕子は最後の手段とし、思い切って豊胸手術をするが・・・。
3.「至高の名医」
他人に厳しく自分に厳しく、常にストイックでありながら一流の腕前を持つ医師・清河。
そんな医療に対して完璧主義とも言える清河の元に、以前胃がんの手術を担当した患者・小田が末期の状態やってきた。
もっと早く診察に来ていれば、手の施しようがあったはずなのに。この状態では・・・。
清河の奮闘も虚しく、小田は亡くなった。
しかしその後、清河はある重大な事実に気がついてしまう。
4.「愛ドクロ」
人間の頭蓋骨が好きすぎる原山。
コンビニで頭蓋骨の形が非常に美しい少女を見かけたら、つい触ってしまって痴漢騒ぎになる程に。
もはやその人の顔や服は全く目に入らず、頭蓋骨の美しい形こそが全てだ。
もう見ているだけでは我慢できない。ああ、人間の頭蓋骨が欲しい・・・。
5.「名医の微笑」
緊張感溢れる手術、患者からの無茶な要望や言い訳、家庭の悩み。
日々降りかかるあらゆるストレスにも笑顔で耐える名医・矢崎。
一体なぜ、そんな状況でも矢崎は笑顔でいれるのか。そのストレス解消方法とは。
6.「嘘はキライ」
他人がつく嘘を見抜いてしまう、不思議な感覚を持つ医師・水島。
世の中は嘘だらけだ。あいつもこいつも、平気な顔で嘘をつく。嘘を見抜けてしまうのもあまり良いものではない。
そんな水島はある日、高校の同窓会に出席。そこで出会った旧友に、その能力を生かしたある頼みごとをされる。
絶妙にリアルでちょっぴりブラックな短編集!

上にご紹介したように、今作『嗤う名医』は医師や患者、医療現場をメインとした短編集となっています。
ジャンル的には一応ミステリーになるのでしょうが、殺人が起きる!とか犯人は誰か?などの推理をするような作品ではありません。
が、これは面白いです。
どのお話も医療の世界で「本当にあるかもしれない」と思わせる絶妙なリアルさを感じさせるものばかりでして。
というのも、著者の久坂部羊さんご自身が本当に医師なんですよ。
だからこそ医療現場での出来事を含め、医師の苦悩、感情、叫びなどがよりリアルに感じられるのですよね。
どのお話も全くの別の味わいと読後感

この作品は「医療」というより、医療に関わる「人間」が描かれているんですよね。
なので全く同じ人間がいないのと同じように、6編全ての読後感が違うんです。
同じタイプのお話がないので「今回はこういう話か!」とか「この話のオチはどうなるんだろう!」とか毎回楽しませてくれます(●´U`●)
メインとなる人物も特殊な人ばかりで、特に4.「愛ドクロ」や5.「名医の微笑」に登場する医師は、側からみれば完全に変人ですからね。やばいんですよ。
でも先ほども述べたように、医師の久坂部羊さんが書くと「医師の中にもそういう人がいてもおかしくない」と思えちゃうわけです。
そんなお話にほんのり漂うブラックな苦味。うーん絶妙。
おわりに
医療系の小説ってなんか読みにくいイメージがある方もいると思うんですが、この『嗤う名医』に関してはとっても読みやすいのでご安心ください。
文章自体もそうですし、短編なので余計に読みやすいですね。
だけど短編一つ一つのクオリティは高く、しっかりした後味を残してくれるので濃厚な読書をした気分にもなれます。
普段の覗くことができない奇妙でブラックな医療の世界を、ぜひ覗いてみていただければ思います。
それでは、良い読書ライフを!(●>ω<)っ