月原渉『首無館の殺人』-タイトルだけでワクワクする王道本格ミステリ登場

『首無館の殺人』なんてタイトル、読まないわけにはいかないでしょう。ジャケ買いならぬタイトル買いです。

帯には

「その館では、首のない死体が首を抱く。」

「戦慄の本格ミステリー誕生」

なんて述べられているし、どれだけワクワクさせてくれるんですか!まったく。

しかも読み始めたら、『使用人探偵シズカ: 横濱異人館殺人事件』のシズカさんが登場してるし。結構好みのキャラだったので嬉しいです。

と言っても『使用人探偵シズカ: 横濱異人館殺人事件』を読んでなくても全然楽しめる作品でしたので、サクッとご紹介です。

月原渉『首無館の殺人』あらすじ

創世から明治の時代まで貿易商として栄えた宇江神家は、今代になってから没落してしまった。

記憶を失ってしまった宇江神家の令嬢『華煉』は日々記憶を取り戻そうと試行錯誤しながら体調を回復させていた。

そんな中、新しい使用人『シズカ』が華煉の世話役としてつけられることになる。

家族からも何かを隠されている違和感を抱きながら生活を続ける華煉は、立ち入り困難な中庭とそこにあるという幽閉塔の話を耳にする。

濃い霧が立ち込める夜、義母の首切り死体が発見される。その首はまるで浮かび上がるように中庭へと吸い込まれていく。

それから相次いで起こる首なし殺人事件は猟奇殺人なのか、深い怨恨によるものか。

シズカと共に華煉は自分の家族の秘密と記憶を取り戻していく。

なぜ死体は首を切られる必要があったのか。移動する首の意味は?

様々な思惑が錯綜するミステリー作品!

破天荒な推理を見せる使用人が全ての鍵

この作品の一番の見所は、探偵役である『シズカ』でしょう。

主人公である令嬢『華煉』の使用人として登場する人物です。

華煉が記憶喪失の令嬢という設定なので、状況の観察や推理はシズカが中心になって行います。

家族とのやり取りや証拠集めもシズカが、いつの間にかしており、まさにスーパーマンのような活躍を見せます。

彼女を好きになれるかどうかがこの作品を楽しめるかどうかの分かれ目になりますね。

『死体が別人であった場合、犯人は決して首の提出には応じないでしょう』

文庫P.109より引用

このように荒唐無稽なことをポンポンと発言します。探偵としてどうなのかと思うほどゾッとすることも口にします。

どちらも物語の本筋に深く関係しているのですが、一見物語自体をわかりにくくもしてしまいます。

そのためシズカは探偵役とトリックスターの2つを兼ねているキャラクターになります。

◯◯トリックや誘導尋問など、様々なことが隠されており、読み返してみると違う面白さを発見できる作品です。

また、作品としてはタイトル『首無館の殺人』からもわかるようにミステリーの王道の雰囲気をまとっています。

数々の王道を取り入れつつ、読者を飽きさせない娯楽性を取り入れた作品です。

理詰めで推理が進むというより、会話や設定を楽しむ部分が多い作品でしょう。

ミステリーのテンプレからのどんでん返しが面白い!

『顔のない生者であれば、顔のある死者になることはない——』

文庫P.147より引用

ミステリーの面白さって『推理』だったり『人間性』だったり人によって様々です。

それぞれの作者さんがどこに踏み込んでいるかで、作品の色が変わる面白い分野ですよね。

この『首無館の殺人』はエンタメ性を上げるつつ本格派ミステリーの雰囲気を残した作品でした。

舞台設定も『明治の富豪の家』『絶海の孤島』とミステリー好きでなくとも王道の雰囲気を感じるものになっています。

主人公が記憶を失っているのも怪しさ満点です。その上、その主人公の一人称で話が進んでいきますので謎が謎を呼ぶ展開に。

記憶喪失の令嬢と一緒に家族の秘密に迫りながら、連続して起こる殺人事件の謎を解いていきます。

怪しさ満点の家族の設定がやっと飲み込めたと思ったら息をつく間もなく殺人事件が!

タイトルのように首を切り取られ、さらにはその首が浮遊するというホラーな場面付きです。

犯人の目的はなんなのか、首が飛び回る理由は……とまるで映画を見ているような気分になれる小説でした。

その上、主人子であるお嬢様付きのお世話係であるシズカが色々なところでカッコいい!

ミステリーの面白さを残しつつ、ストーリー展開とキャラクターの個性が重厚になりすぎないバランスになっています。

エンタメミステリーとも言えるテンポのいい作品

明治の名家、孤島、連続殺人事件とミステリーの王道を貫く舞台設定の作品です。

この舞台設定だけでミステリー好きの人はワクワクするに違いないでしょう。

そこに探偵役とトリックスターを兼ね合わせるという稀有なキャラクターを置くことで、他に類を見ないミステリー作品ができあがりました。

ミステリーと呼ばれるものも数多く読んできましたが、こういう推理展開をするものはなかなか出会えませんものね。

破天荒とも言える探偵役についていけるかが、この作品を楽しめるかの分かれ道になると思います。

ミステリー要素に飛ぶ首などのホラー要素、さらには名家が抱える人間関係のドロドロさを加えた内容です。

文章量としては多くないので、ミステリーが苦手な人でも読みやすい作品になっています。

個性的なキャラクターたちの会話や次々に起こる事件に最後のページまで手が止まりません。

事件解決でのどんでん返しや、正義や悪についても一考させられる小説です。

2時間映画を見ている気分になれるエンタメ性の高い作品ですので、かしこまらずにお気軽に手にとってみてくださいな(*´∀`*)

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