静岡県に属する孤島、雫溜り半島は人気の観光地。
結婚式場運営会社であるクロス・ウェディングは、この雫溜り半島にチャペルを建築しようとしていました。
ですがチャペルの建設は突然中止になってしまいます。なぜ作業が中止になってしまったのか、宮村達也は調査に向かいました。
雫溜り半島には古くから首切り侍という言い伝えがあり、近隣の住民に恐れられていました。
チャペルの建設予定地には、その首切り侍が使ったとされる大きな斧が発見されたのです。
そして嵐の夜、殺人事件が起こります。
序盤から登場する殺人計画書の謎や、不可解な状況で行われる連続殺人、何度も現れては消える生首…。
過去に起きた事件も巻き込んで、事件はどんどん大きなものになっていきます。
門前典之『首なし男と踊る生首』
というわけで今回は、宮村の共同経営者である探偵蜘蛛手も登場する、話題のミステリー小説『首なし男と踊る生首』についてです。
序盤から登場する殺人計画書にすでにトリックが隠されており、最初から一気に世界観に引き込まれます。
五人が行方不明になり、四人が死体となって発見されます。
密室で行われる殺人や瞬間移動する生首、奇妙に縛られた死体の謎など、古き良き本格的なミステリーを楽しめるんです。
探偵蜘蛛手シリーズは建築トリックがたくさんありますが、今回の「首なし男と踊る生首」にも建築トリックを楽しめます。
想像力をフルで働かせて、文章をきちんと読み込んで推理していきましょう。
門前氏のミステリー小説は「バカミス」と評されることが多いですが、今作も例に漏れず「バカミス」と評されています。
かなり突飛なトリックが登場するので、現実に起こりそうな犯罪を解き明かしたいという方は楽しめないかもしれません。
しかし、序盤から至るところに仕掛けられた伏線が嘘のようなトリックで回収されていく様子は非常に爽快感があり、一度読んだらクセになることでしょう。
ややグロテスクな表現もありますが、門前氏の作風とも言えるので、数作読んできた方なら問題なく読めます。
その描写にもきちんとした理由がありますので最後までしっかり読み込みましょう。
島田荘司や横溝正史のような、おどろおどろしい作風が好きな方にもおすすめの小説です。
門前氏の蜘蛛手探偵シリーズの中でも、「首なし男と踊る生首」では蜘蛛手が登場するのがかなり終盤に差し掛かってからです。
蜘蛛手というキャラクターの描写や言動を楽しみにしている方にとっては少し肩透かしかもしれません。
登場が遅い分、最後にはしっかりと事件を解決に導いてくれます。
反対に、キャラクターとしての描写は少ないので、蜘蛛手シリーズと知らずに初めてこの作品を読むと内容についていけないという声もあります。
十分に楽しむことは可能ですが、より蜘蛛手シリーズを楽しみたいという方はシリーズの順番を追って読むことをおすすめします。
『屍の命題』『建築屍材』『浮遊封館』『首なし男と踊る生首』『エンデンジャード・トリック』と、蜘蛛手探偵の作り出す世界観にどっぷり浸ってみましょう。
建築トリックといえば門前氏
門前典之氏のミステリー小説には、建築によるトリックがたくさん登場します。
建築の知識と経験を活かした本格的な仕掛けは目を見張るものがあります。さらに驚くべきことに、人体を使った仕掛けも数多く見られます。
人間の死体、体の一部を資材や武器として使われることも多く、他のミステリー小説では見られない斬新な表現がコアなファンを引きつけています。
独特なトリックは好き嫌いが分かれますが、文章がしっかりとしており内容もよく練られているので読みやすいです。
ハマるかハマらないかは人それぞれですが、試しに一度読んでみても損はないでしょう。
「こんなことは現実にはありえない!」と思いながらもつい読み進めてしまう不思議な世界観に浸りたい方は、ぜひチェックしてみてくださいな!



コメント
コメント一覧 (2件)
なるほど、こちらも門前さんの建築トリックシリーズでしたか!
ちょっと謎なタイトルと、バカミスと聞いてしまえばあとは読む以外に選択肢がないな… ちょっとこれを機に門前さんの著書を洗いざらいいってみようとおもいます(▰╹◡╹▰)
ぼくも高専時代は建築系の工学科所属だったので、にわか知識を駆使してトリック見破りたいと思いますw
こはるさんこんにちは!
そうなんです、こちらも門前さんの建築トリックシリーズなんです!
ぜひぜひ読んでみてくださいな。
おお!そうなんですね!凄いです、ぜひトリック暴いちゃってください笑(*’▽’*)