『首無の如き祟るもの』は刀城言耶シリーズ最高傑作なので必読ですよ

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『首無の如き祟るもの』は、三津田信三(みつだしんぞう)さんのミステリー小説。

ホラーとミステリが見事な融合を魅せる〈刀城言耶シリーズ〉の三作目です。

そして最高傑作です。

断言しましょう。

ミステリー小説がお好きなら、『首無しの如き祟るもの』を読まないなんて大損です。

さっそく、どんな作品なのか見てみましょう(*´艸`)

 

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➡︎【ホラー&ミステリ小説】刀城言耶シリーズの順番とあらすじ【三津田信三】

目次

『首無の如き祟るもの』

細かいあらすじは避けますね。

今作で語られるのは、姫首村(ひめかみむら)で行われた〈十三夜参り〉という儀礼中に起きた首なし殺人と、その十年後に起きた首なし殺人のお話です。

もっとザックリに言いますと、

不気味な因習の残る閉鎖的な村で、首なし殺人が起きて、しかも密室で、怪異現象まで起きちゃって、しかもその十年後にも同じような首なし殺人が起きる、というミステリ好きなら歓喜してしまう設定が詰め込まれた作品です。

もうすでに面白いですが、もちろんこの作品の魅力はそこだけではありません。

構成の巧さ。

まず「構成」です。

今作は、作家・姫之森妙元(本名:高屋敷妙子)が、過去に起きた姫首村での事件を、警察官の夫と事件の関わった人物の証言や情報を元に小説にし『迷宮草子』という人気同人誌に掲載したもの、という作品です。

この小説を書いている高屋敷妙子の一人称ではなく、警察官の夫「高屋敷元」と、事件を近くで見てきた「幾多斧高」という使用人の二人の視点で物語は進められていきます。

そして、ところどころに作家・姫之森妙元の状況や思い、助言などが挿入されているところもポイント。

例えば、物語が始まる前には、

いえ、その前に、〈探偵小説の鬼〉と呼ばれる一部の読者の皆様に対して、一言だけ申し上げておきたいと思います。

本稿が〈私=高屋敷妙子〉の一人称を取らなかったことを鑑み、そこから実は一連の事件の真犯人が私自身ではないのかと疑われるのは、完全な徒労であり間違いでありますと、老婆心ながら最初にお知らせしておきます。

P.27「はじめに」より

なんて書かれています。

今これを書いている「私」こと、作家・姫之森妙元(本名:高屋敷妙子)は一連の事件の犯人ではない、と述べていますね。

このように、〇〇は△△ではない、といった助言や、これまでの事件の整理など、読者へ向けた配慮が施されているのです。

これも見事でした。何が見事かは言いませんけど。

首なし殺人とは

さて、この作品では多くの人が殺害されてしまいますが、その全てが首なし殺人です。全員首なしです。ミステリー小説では〈顔の無い死体〉と呼ばれます。

ミステリー小説において、犯人が首を切り取るには必ずそれ相応の理由が必要になってきます。

なぜ、わざわざ首なし死体にしたのか。

ホワイダニット(なぜそんなことをしたのか)ですね。この点がまたお見事でした。

これほどまでに巧みな「首なしの理由」に出会える機会は滅多にありません。

真相がわかっていくときの「そういうことか!!」という衝撃を味わいましょう。

怪異との共存

この作品、というか刀城言耶シリーズには「怪異」が存在します。

よく「怪異」や「幽霊」と恐れられていたものが実は人間によるトリックだった、みたいなオチの作品って多いじゃないですか。というかミステリー小説って基本的にそうなんですよ。

でも、刀城言耶シリーズでは怪異は怪異として存在します。

『首無しの如き祟るもの』でも「祟り」というものが存在しています。そういった怪異がある中でのミステリなんです。その怪異をミステリとうまく絡めているんです。

これも刀城言耶シリーズならでは。ぜひご堪能くださいませ。

序盤はじっくり。終盤は唖然。

今作は登場人物も多いし、一族の複雑な関係を理解するのが大変で、序盤は読むスピードが遅くなるはずです。したがって最初は読みにくいと思われるかもしれません。

でも、頑張って読んでください。読みにくいなあ、という理由で諦めないでください。非常にもったいないです。

この『首無しの如き祟るもの』には、絶対に最後まで読む価値があります。

ずっと読みにくいなんてことはありません。物語を読んでいればだんだんと人間関係がわかってきて、序盤の頃よりはるかに読みやすくなっていくのでご安心してください。

で、終盤。

著者お得意のとんでもないひっくり返しが待っています。

帯にも書いてありましたが、「ミステリ史上に残る」レベルです。これは体験しなければなりません。

どんでん返しがあるという予備知識があってもひっくり返りますので、ご安心してお読みください。

おわりに

できればシリーズ一作目の『厭魅の如き憑くもの』から読んでいただきたいですが、大きな繋がりとかはないのでいきなり『首無の如き祟るもの』を読んでも問題なく楽しめます。

というか読みましょう。今すぐに。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (6件)

  • うお〜、刀城言耶。傑作と言われたりしてたのですが、どうも分厚さと表紙から滲み出るおどろおどろしさから、長らく敬遠してたのですが、こんな面白そうな紹介では読まずにはいられないなぁ〜。首切りは個人的に大大大好きなので、これを機に読んでみようと思います。

    • アラシナオヤさんこんにちは〜。
      確かに分厚いし読みにくそうな感じはありますが、傑作と言われるだけあってとても面白い作品です。
      序盤がちょっと読みにくいかも?という印象ですが、読んでいれば慣れてくるはず。
      首切りが大好きならなおさらです!笑
      ぜひ読んでいただけたら嬉しいです(*´∀`*)

  • これ、ほんっとに凄いですよね!
    おどろおどろしく、複雑怪奇に見えて、解決は鮮やかで、それでも最後の最後は気持っち悪い読後感が・・・一体何度度肝を抜けば気がすむんだと。
    首斬りテーマの作品としては笠井潔「バイバイ、エンジェル」と一二を争う程好きです。

    • いやーホント素晴らしい作品ですよね。
      解決編では凄すぎて笑ってしまいましたもん。よくこれだけひっくり返してくれるものです。作品に漂う奇怪な雰囲気もツボでして。
      ああー「バイバイ、エンジェル」も好きですわー!いいですねえ!首切りはやっぱ面白いですなあ(*´ω`)

  • この作品面白いって聞いてはいたんですけど、ホラーの作品はどうも苦手で敬遠してました…。でも、ここまで言われちゃ読まないわけにはいきませんね。早速、買ってきましたので読んでみたいと思います♪

    • リョウさん!おお!さっそく買ってきてくださったんですか!ありがとうございます。ありがとうございます。
      確かにホラーが苦手だととっつきにくい部分はありますが、ミステリー小説として素晴らしいのは間違いなしです。
      最初の方は人間関係や文章に慣れるのに時間がかかるかもしれません。ですが読んでいくうちにだんだんと慣れてくるはずですので、ぜひ最後まで読んでいただければと思います(*´∀`*)

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