主人公となるのは、筋肉硬化症を患っているもののニューヨークきっての名探偵と呼ばれている女探偵リリアン・ペンテコスト。
そして、サーカス団員をしていたところをリリアンに拾われた助手ウィロウジーン・パーカー(以下ウィル)の2人です。
2人は母と娘ほども歳が離れたコンビではありますが、これまでに様々な事件を解決してきました。
そして、本作で語られるのはリリアンとウィルが出会うきっかけになった「コリンズ殺人事件」についてです。
第二次世界大戦後の鉄鋼王と呼ばれたコリンズ家で起こる不可解な殺人事件。
リリアンとウィルはどのように出会い、そしてどのようにこの難事件を解決していくのか?是非あなたの目で確かめてください。
探偵と助手それぞれのキャラが際立つ作品
本作はあらすじでもご紹介した通り、既に名探偵として名高いリリアンと、サーカス団員であったウィルの2人が出会い、共に難事件を解決していくというものです。
リリアンは高い推理力を持ちますが、持病を抱えているため体の自由が効かない場面もあります。
しかし、ウィルは元サーカス団員ということもあって高い身体能力を誇り、リリアンの代わりに物語中を奔走します。
リリアンの身体的ハンデが逆に2人のキャラクター性を強調するためのアクセントとして働いているというのが本作の特徴の1つで、探偵と助手それぞれの活躍が描かれ、魅力を感じてしまいます。
また、2人がお互いの足りない部分を補う存在であるというのも大きなポイントで、物語を読み進めていく内に2人それぞれの個人としての魅力だけではなく、コンビとしての2人の魅力にも気付かされます。
物語を読む上で登場人物の魅力というのは非常に大きな要素であると言っていいでしょう。
そうした観点では、本作は満点をあげてもよい出来栄えです!
是非2人の魅力を感じてほしいと思います。
無機質なキャラが存在せず、完成度が高い
『幸運は死者に味方する』を読んでいて感じたことの1つに、無機質なキャラ、記号的なキャラがいないというものがあります。
小説を読んでいると、あまり個性は感じないけど物語の進行上必要なので配置されたようなキャラクターが目につく時があると思います。
しかし、本作では登場人物がそれぞれしっかりとキャラが立っており、必要に迫られて配置したかのような無機質なキャラがいないというのが特徴です。
主人公である2人以外のキャラも十分な魅力を含んでいるため、読んでいて違和感が少ないのが長所です。
一筋縄では行かない難事件にリアリティを感じる
本作の主人公の1人であるリリアンは既に名探偵と呼ばれる存在ではありますが、それでも鮮やかな推理で事件をズバッと解決!とは行かないのが本作の良い所でしょう。
本作で扱われる事件は密室殺人ということもあって、名探偵であるリリアンの手腕を持ってしても事件は中々進展せず、真相は深い霧の中にあります。
そして、そうした事件の謎を1つ1つ解き明かしていくために聞き込みなどの地道な調査を行っていく様子は現実感があります。
そして、「現実感がある=共感しやすい」ということでもあります。
そのため、読み進めていくとどんどん物語に引き込まれていき、ページをめくる手が中々止まりません。
最後まで飽きずに読むことが出来ますので、小説好きな方のみならず、これから小説を読み始めてみたいという初心者の方にもオススメ出来る作品です。
ミステリの魅力満載のシリーズ開幕!
『幸運は死者に味方する』は名探偵であるリリアンと、元サーカス団員である助手のウィルが出会うきっかけとなった事件を描く物語で、第二次世界大戦後の鉄鋼王と呼ばれているコリンズ家で起こった不可解な殺人事件の究明に挑みます。
名探偵ではあるが持病による身体的なハンデを負っているリリアン。
サーカスで培った高い身体能力を持つウィル。
2人の特徴的なパーソナリティがお互いを引き立てており、なおかつ2人が噛み合った時に真価を発揮するコンビとしての魅力を放っているのが特徴です。
2人の活躍ややり取りに夢中になってしまい、スラスラと読み進めていくことが出来ます。
また、主人公2人以外の登場人物もそれぞれの個性や思惑を秘めており、物語を動かすためのコマのような無機質な人物がいないというのも特徴です。
また、地道な聞き込みを続けるなど捜査の進み方が現実的なのもポイントで、現実感があるからこそ共感することができ、物語に引き込まれていくというのも本作の特徴の1つと言えるでしょう。
『幸運は死者に味方する』は次回作の制作も決定されている作品なので、今後もリリアンとウィルの活躍は続いていきます。
ミステリー好きな方を始めとして様々な方にオススメしたい作品ですので、ぜひ一度手に取ってみてくださると嬉しいです(๑>◡<๑)