有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』-デビュー30周年記念を飾る傑作作品集!

あの名作『そして誰もいなくなった』を再解釈し、大胆かつ驚きに満ちたミステリに仕上げた表題作をはじめ、ラジオドラマ脚本として描かれ、小説としては世に出ていない掌編や、自殺志願者の恐怖と悔恨を描く傑作ホラー「劇的な幕切れ」、書店店長の名推理が痛快な日常ミステリ「本と謎の日々」など、一作たりとも読み逃せない名作揃い。

待ちに待った有栖川有栖さんの『こうして誰もいなくなった』です!

クリスティの『そして誰もいなくなった』を再解釈して書き上げた、というだけで興奮が抑えられません。

というわけで、今回は表題作『こうして誰もいなくなった』をピックアップです。

『こうして誰もいなくなった』

海賊島に集められたのは、10人の悪人だった。

モデルから弁護士まで男女5人ずつ集められた。

デンスケという今話題の富豪からの招待によって、この島を訪れたのだ。

島に上陸した彼らはデンスケから「明日の午後までに全員に死んでもらう」と衝撃の宣言を受ける。

絶海の孤島は船は近寄らず、唯一の電話線も切られていた。

携帯電話は圏外であり、外に逃げるすべはない。

一人、また一人と死んでいく人たちの中で一番の悪人は誰なのか。

私立探偵である響が島に着いたとき、そこには凄惨な光景が広がっていた。

怒涛の殺人劇とそれを鮮やかに解決する探偵

『ここにいる皆さんは、みんな人でなしです』

P.269

数あるミステリの中でも特に有名なアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』。

本をあまり読まない人であっても、タイトルは聞いたことがある人がほとんどでしょう。

そのあらすじや話の展開は非常に斬新であり、最後の展開にアッと言わされた方も多いはずです。

今回紹介している『こうして誰もいなくなった』はタイトルはもちろん、中身も『そして誰もいなくなった』を踏襲しています。

それでいながらキャラクターを作り込み、巧みな文章によって全く別な小説へと進化させてしまいました。

次々と倒れていくキャラクターたち一人ひとりの行動に振り回されながら、読者は最後まで犯人は誰かと頭を悩ませることになります。

探偵の登場により事件は鮮やかに解決されますが、最後まで話の展開が読めません。

様々なキャラクターからの視点で語られ真実を知ることができるのは読者だけです。

ミステリの醍醐味を詰め込んだような作品になっています。

軽やかな読み口と話の面白さが際立つ短編!

まず、一言感想。面白かった!

表題作だけあって、このまま文庫化されてもおかしくないような完成度になっていました。

最初から最後までハラハラドキドキが続くのがミステリの特徴。

その代わりどうしても論理的な文章が続いてしまうのもとっつきにくい印象を与える原因かもしれません(もちろん、そういう部分さえ面白い作品も多く存在します)。

——なぜ、死んだのか。どうやって、殺したのか。

ミステリはこの部分に焦点が当たります。

一般人には無意味なことに思える微かな証拠を探偵は集めて、一つの推理を作り上げるのだから、それも仕方ありません。

推理が始まれば、その観察力や推理力に度肝を抜かれること間違いなし……でも、始まるまでは少し退屈。

そんなイメージがミステリには付き物ですよね。

しかし、この『こうして誰もいなくなった』は最初から最後まで一瞬も気を抜くことができないお話です。少しも読者を飽きさせることなく話を進めてくれます。

探偵が登場して、鮮やかな推理を見せる場面はもちろんのこと、キャラクターたちが島に集められる経緯からして突拍子のないものになっています。

個人個人の内面にもスポットライトが当たることで読者は様々なことを知ることができ、あっという間にストーリーに取り込まれていきます。

この表題作だけでも読む価値がありますので、ぜひお手にとってみてください。

2 Comments

アバター アラシナオヤ

まさしく見本市ですよね! めちゃくちゃ楽しんで読みました! 表題作のクオリティは、さすが有栖川先生といったところで、上質なミステリのお手本だなと思わされました。そのほかの作品も有栖川先生らしい切れ味と読みやすさを兼ね備えていて、さすがだなと感心させられましたね。シリーズ物の長編もいいけど、こういう中短編集も魅力的だな、と思わされた、個人的に大当たりの一冊でした。

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anpo39 anpo39

アラシナオヤさんこんばんは(*´∀`*)ノ
ほんと楽しい作品集ですよね!
特に表題作は期待通りの良い作品でした!
他の作品も良いのが揃っていましたよねえ。
さすが有栖川有栖さん、こういう作品集も素敵です。

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