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竹本健治『これはミステリではない』-ミステリ界の金字塔『匣の中の失楽』『涙香迷宮』の鬼才が放つ最新作

大学のミステリクラブが開催した夏合宿が物語の舞台。

ミステリクラブでは、一人が推理小説を書き、その日にメンバー同士で犯人や動機、過程を考え、次の日に解決編を読む、そして作品を評価するという習わしがありました。

その年も例年通りメンバーが書いた推理小説が発表されました。

しかし物語はここで急変します。なんと、推理小説を書いたメンバーが絞殺され、解決編の物語がなくなってしまいます。

その死因や現現場の様子は、彼が書いた推理小説との類似点が非常に多いものでした。

誰がどうして彼を殺したのか、香華大学と交流のある聖ミレイユ学園汎虚学研究会のメンバーも加わり、事件の謎に迫ります。

竹本健治『これはミステリではない』

ミステリーファンなら、竹本健治氏と言えばデビュー作の「匣の中の失楽」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

推理小説でありながら推理小説らしくない、いわゆるアンチミステリーとして衝撃的な作品でデビューし、その後もアンチミステリー作家として数多くの作品を手掛けています。

読み解くのが難解で、ミステリーファンの中でも好き嫌いが分かれる作家でもあります。

今作はタイトル「これはミステリではない」の通り、読み終えると「確かにミステリではなかった」と呟いてしまいそうな内容になっています。

作中に登場する推理小説は実際のメンバーの立場や人間関係をもとに書かれており、何が現実に起こっていて、何が作中作の中の出来事なのかの判断が難しくなっていきます。

登場人物も多く、一人一人の行動やそれぞれの関係をしっかり覚えておかなければなりません。

読み込んだからといって推理できる、気持ちの良いラストが待っているというわけではないのが竹本氏の作品です。

一般的な、事件が起きて探偵が解決するという流れを期待している方にとっては意味が分からない内容と思えるかもしれません。

作者本人も、「これまでの中で一番歪」と言っている通り、綺麗な型通りのミステリー小説ではありません。

他の竹本氏の作品をいくつか読んでから、またその他のアンチミステリ作品をいくつか読んでから、耐性をつけて読んだ方が作品自体への理解を深めることができるでしょう。

普通のミステリーファンがいきなり今作を読んでも訳が分からないまま終わってしまう可能性が高いです。

この物語を通して作者はミステリーファンに何を訴えたかったのか、そんなことを思わず考えてしまう一冊です。

タイトル通り、これはミステリではない

はっきり言ってレビューがめちゃくちゃ難しい作品です。

これは竹本氏の作品だ、と分かっているから読めるものの、純粋にミステリを楽しもうと思って読むと大変なことになりますので注意です。

だって、タイトルで『これはミステリではない』なんて言われたら、読みたくなっちゃうに決まっているではないですか。

しかし読み終わっても全然すっきりしないし、いくつもの疑問が残ります。いや、これは私の理解力がないからなのかもしれない。うーん難しい!笑

でもちょっとでも気になったならぜひ読んでみてください。そしてこの感情を味わってみてください。

竹本氏は「匣の中の失楽」でデビューして以降、ゲーム三部作シリーズやバーミリオンのネコシリーズ、ウロボロスシリーズなど、多くの作品を手掛けています。

いずれも一般的なミステリー小説ではなく、アンチミステリに触れてこなかった方にとってはややとっつきにくい印象があるかもしれません。

今作「これはミステリではない」は、汎虚学研究会シリーズの中の最新作です。

聖ミレイユ学園という高校で起きた事件を解決した高校生たちが事件を解決に導くというシリーズで、彼らは本作にも登場しています。

本作にいきなり触れるのは早い気がするという方は、まずこの汎虚学研究会シリーズを手に取ってみても良いかもしれません。

散々「読みにくい」「他の作品を読んでから」と述べましたが、もちろんハマる人にはハマる作品です。

近年のミステリー小説のマンネリ化にうんざりしている方、ミステリー小説のもっと深い部分まで突き詰めたいという方はぜひ手に取ってみてください。

「これはミステリではない」というタイトル通り、読み終わってから「ではこの小説のことを何と呼べば良いのだろう?」とじっくり考察する時間も楽しめることでしょう。

これまでアンチミステリに触れてこなかった方にとっては、新たなジャンルの開拓に役立つかもしれません。

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anpo39
年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)
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POSTED COMMENT

  1. リエ より:

    あけましておめでとうございます。今年も色々な作家さんの本を読みたいので、anpo39さんのサイトで情報収集をさせて頂きます。竹本健治作品は読んだことがないのですが、第二弾のおすすめ50に紹介されていた「涙香迷宮」を積読しています。是非今年読みたいです。本年もよろしくお願いいたします。

    • anpo39 より:

      リエさん、あけましておめでとうございます!
      ありがとうございます、情報収集していただければ嬉しいです。
      「涙香迷宮」良いですね!ぜひぜひ楽しんでいただければと思います(*´꒳`*)
      今年もよろしくお願いいたします〜!

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