さて、2023年版このミステリーがすごい!ベスト10のお時間です。
今回はどんな作品がランクインしたのでしょうか!
早速見ていきましょう(*’▽’*)
国内編ベスト10
1.呉勝浩『爆弾』
暴行で捕まった男は、名前以外全く記憶がないと言う。
その男は取り調べをした刑事に「もうすぐ秋葉原で大きなことが起こる気がする。」と言い出す。
相手にしない刑事だったが、しばらくすると秋葉原で爆発事件が発生。
この男は一体何者なのか。目の前にいる犯人を相手に爆発を防ぐことがができるのか?
今作は、取調室での犯人と刑事と対決するストーリーがメインとなっており、爆弾探しなどをする警察官たちの奮闘も描かれています。
連続爆弾テロ被疑者と警察の取調室内の、知力を尽くした攻防が続くストーリーが魅力的です。
とてもスリリングな展開で、会話が多めなのでテンポも良し。
物語の運び方、緊迫感、会話、どれを取っても素晴らしいです。
巧みなストーリーに乗せられてしまうので、トリックを見破ることはかなり困難でしょう。
読者の余韻を引く終わり方であり、ラストで明らかになる意外な事件の真相、どんでん返しが炸裂。お見事です!
2.白井智之『名探偵のいけにえ』
1978年、ガイアナ共和国では、新興宗教団体「人民教会」の教祖ジョーデンが「ジョーデンタウン」を作り、大勢の信者と暮らしていた。
表向きは病気や怪我のない奇蹟の楽園とのことだが、実際には信者への暴行や強制労働が行われている可能性があった。
そこで米国の資産家が、大塒探偵事務所の助手であるりり子の腕を買い、調査を依頼した。
さっそくジョーデンタウンへと向かうりり子だったが、それきり彼女の消息は途絶えてしまった…。
2020年に発表された『名探偵のはらわた』の姉妹編となる本作。
今作『名探偵のいけにえ』では、1970年代に南米ガイアナで起こった「人民寺院集団自殺事件」がモチーフになっています。
見どころはなんと言っても150ページにも及ぶ解決編。
ここでは信者たちの楽園である「ジョーデンタウン」の実態や、数々の殺人事件のトリックなどが、それはもう濃密に描かれています。
多重推理でさんざん読者を惑わせておいてから、全てに辻褄が合う形でどんどん伏線を回収していくのです。
それまでのあらゆるページ、あらゆる表現に一切の無駄がなかったと思わせるほどの徹底的な回収が本当に鮮やか。
白井さんお得意のエログロ表現もかなり控えめなので、えぐさが苦手な方でも読みやすいのもGOOD。
単純にミステリー小説としてめちゃくちゃ面白いです。読んで損はなし。
3.有栖川有栖『捜査線上の夕映え』
「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」の最新作。
精緻なロジックと鮮やかで品の良い文章、物語性豊かな世界観が読者を魅了し続ける作者・有栖川有栖さんが放つ、人間の優しさと哀愁が感じられる本格ミステリーです。
物語の前半では登場しなかった新たな事実が後半で明らかにされるなど、読み進めていく中で予想の斜め上をいく叙情的な展開が待ち受けています。
最後まで読んだ時点で明かされる事件の意外な真実、そしてそこに至るまでの物語の流れに、読者は大いに驚かされることになるでしょう。
アリスと共に推理する物語の主人公・臨床犯罪学者の火村先生は数々の難事件を解決へと導く名探偵。
しかし帯には「俺が名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」という言葉が。果たして事件の結末は。
あっと驚く大どんでん返しが待ち受けている推理小説というよりは、丁寧に矛盾を突いてゆく有栖川有栖らしい文章が素敵な捜査小説です。
4.夕木春央『方舟』
大学時代の仲間たちや従兄と、冒険気分で謎の地下建築物「方舟」に来た柊一。
しかし地震が発生して出入り口が岩で塞がれ、全員閉じ込められてしまう。
しかも方舟内には地下水が流れ込んできており、早く脱出しなければ全員溺れ死んでしまう。
さらにこの状況下で、仲間が死体となって見つかった。
事故ではなく明らかに殺人であり、方舟が外部と遮断されている以上、犯人は間違いなくこの中にいるはず。
一体誰が何の目的で殺したのか。柊一たちは果たして方舟から無事に脱出できるのか。
残る9人の中の誰かが犯人であることは明白なので、空気はさらに張り詰め、皆のメンタルもどんどん極限状態に近付いていきます。
このように『方舟』は、密室あり、トロッコ問題あり、タイムリミットあり、殺人事件ありの、超濃密な脱出ミステリーです。
話が進むほどスリルが増していき、息をするのも忘れてしまうほどの緊張感を楽しめます。

5.長浦京『プリンシパル』
物語は終戦直後。
東京を束ねるヤクザの組長が死に、ヒロインである高校教師の綾女はヤクザの父親の跡を強引に継がされることになる。
彼女を中心とした暴力組織による復讐と覇権争いを描くクライム・サスペンスです。
半ば騙し討ちで臨時でヤクザの親玉に担ぎ上げられた二十三歳元教師の娘・綾女。
ヤクザを毛嫌いしていた彩女が清々しいくらいに血に塗れていきます。
リンシパルというタイトルとや表紙の装丁からバレエの話かと思ったら、思いっきり血生臭いヤクザの話でびっくりしました。
ヤクザものかあ、とあまり好みではないと思ったのですが、これが抜群に面白い。
リアルで残酷だけれど、読むのが止められない。長いストーリーですが一気読みでした。
綾女は元々は教師なのに、やくざの娘ということからどんどんと任侠の世界に入っていく過程がなんとも面白い。
血と暴力と仁義と裏切りの怒涛の力技で、最後までグイグイ読ませてくれます。
残酷な描写が多く、どんどん人が死んでいきドキドキが止まりません。最後の最後まで凄い作品でした。
6.佐藤究『爆発物処理班の遭遇したスピン』
ミステリ、SF、ホラーなど、異なる設定や趣向、世界観で描かれた短編が8話収められた作品集。
いずれも長編さながらの読み応えで、共通するのは『狂気』というキーワード。
全く異なる世界観の短編ながら、読み始めるとそれぞれの世界にすっと引き込まれてしまう。
表題作は本当に意地悪なストーリーで嫌な気持ちにさせてくる。
量子力学の分野のお話で少し難しい事もありますが、それでもぐいぐい読ませてしまう面白さがあります。
代表作『テスカトリポカ』の時もそうですが、本当に佐藤究さんは文章が上手い。
とにかく佐藤究ワールドを体験したいなら、絶対におすすめの一冊。
7.逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』
戦場のリアルな描写に加え、これでもかこれでもかと胸をえぐり続けてくるストーリー展開。
読者に息をつかせる暇なく読ませていく、非常にパワーのある作品と言えます。
驚くべきことに『同志少女よ、敵を撃て』は、逢坂冬馬さんのデビュー作です。
第一作目で、これですよ。末恐ろしいものを感じますね。
さらにこの作品、第11回アガサ・クリスティー賞大賞に選ばれました。
しかも選考委員が全員満点をつけたという、前代未聞の受賞!
これで面白くないわけないでしょう。
テーマが重くても文章のテンポは良く、本当にアニメ映画を見ているような感覚で一気に楽しめます。

8.芦辺拓『大鞠家殺人事件』
時代は戦下の昭和18年。
陸軍軍人の娘・中久世美禰子は、大鞠家の長男・多一郎に嫁ぐことになった。
多一郎の家系である大鞠家は、婦人化粧品販売の事業で成功を納めたことで富を築いていた。
夫と幸せに過ごすことが予期されたそんなある日、軍医である多一郎は出征が決まり、美禰子は大鞠家との同居生活を始めることとなる。
やがて大鞠家と生活をともにしている美禰子は、一族を襲う惨劇に巻き込まれる事態に…….。
というようにこの作品は、戦時中から戦後にかけての大阪の船場を舞台にした物語が描写されており、戦時下の時代背景ならではの事件が度々巻き起こる様子が描かれております。
物語が進行する過程で、時代を生きる人物の聴き慣れない方言や第二次世界大戦中の生活事情など、我々現代人にとって想像が難しい要素も多く含まれているんですね。
こうした読み慣れない内容や背景が描かれているにもかかわらず、まるで過去の時代に遡ったような感覚で物語の世界に溶け込み、臨場感のある物語を味わえるのがこの作品の魅力です。

9.小川哲『地図と拳』
第二次世界大戦前後の満州を舞台に、都市を造ろうとする人々の群像劇。
日露戦争から太平洋戦争終了まで、日本が満州に進出し桃源郷ともいえる都市を設計・構築しつつ、夢破れていく歴史が描かれています。
太平洋戦争前の日本。そして、満州。
地図に無い島をめぐっての話と、現実の人と人の戦いが交差する。
なぜその地図は作られ、なぜ満州という国が作られたのか。
地図は単純に場所を表しているだけでなく、地図には国家という壮大な物語があったことを訴える内容となっています。
作品自体は大きく盛り上がる場面はあまりありませんが、ずっと読んでいたいくらい読ませる作品でした。
まるで大河ドラマ見た気分に浸れるぐらいのボリューム感。
600ページを超える長編ですがあっという間に読め、大作を締めるラストの情景は長い余韻を残します。
10.奥田英朗『リバー』
渡良瀬川河川敷でで女性の遺体が立て続けに発見される。
10年前に同じ場所で起こった未解決事件と手口も似ており、群馬県警と栃木県警が調査にあたる。
容疑者は3人。追う側は両県警に留まらず10年前の被害者遺族、新米新聞記者とさまざまな視点から描かれています。
それぞれの立場から展開していくストーリーに、ずっとワクワクしながら読み進めることができました。
本格ミステリ的な謎解きではなく、地道に物証を固めていくプロセスを楽しむタイプの物語です。
登場人物が多いのに、どの人も人物の輪郭をくっきりと思い描くことができるのは奥田英朗さんの凄いところですね。
全ての登場人物が主人公のように生き生きと描かれています。
かなり分厚い大作ですが、一気に読めてしまう展開で、最初から最後まで全く気の抜けない一作となっています。
奥田英朗さんの最高傑作と言われているのも納得の作品でした。
海外編ベスト10
1.クリス・ウィタカー『われら闇より天を見る』
三十年前に一人の少女が命を落とした事件。
時は経ち、刑期を終えた男がその田舎町に帰ってくるところから話は始まるーー。
様々な人間模様がとても重厚に描かれていて、物語に引き込まれっぱなし。
ボリュームもたっぷりで読み終えるまでに時間がかかりますが、最後は読んで良かったと思える作品となっています。
ミステリであり、困難に直面したとき人はどう生きるかという問題に取り組んだ作品であり、中年男の悲哀を感じさせる話であり、かつ少女の成長の物語でもあるのです。
読んでいて辛い部分もあるのに真相が知りたくてぐいぐい読まされるし、まさかこんな真相が用意されているとは……。
ミステリとしても素晴らしく、意外性は充分、何よりそれが感動に繋がるのが見事です。
もちろんミステリとしても読み応えある内容ですが、総じて言えばミステリという枠に収まらない壮大なストーリーとなっています。
流石の一位。
2.アンソニー・ホロヴィッツ『殺しへのライン』
私的には一位の〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊。
『カササギ殺人事件』の著者・アンソニー・ホロヴィッツ氏による最高の犯人当てミステリです。
探偵ダニエル・ホーソーンとわたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、チャンネル諸島のオルダニー島を訪れた。
どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。
椅子に手足をテープで固定されていたが、なぜか右手だけは自由なままで……。
相変わらず読者に対して正当なフーダニットとホワイダニットが楽しい。
そして小説中の作者と共に、読者もまんまとミスリードされる、不思議で面白い感覚。
謎解きと同時にホーソーンという人物について知っていくことが、このシリーズの面白さの一つ。
事件の真相よりもホーソーンの過去が気になるシリーズとも言えるでしょう。
事件が起きるまでが長いですが、相変わらず読みやすいのと、ホーソーンとアンソニーの関係が面白くて退屈させません。
そして事件が起きたらもう読む手は止まりません!最後まで一気読みです。
シリーズ一作目の『メインテーマは殺人』、二作目の『その裁きは死』を読んでおくことをおすすめします。

3.ジャニス・ハレット『ポピーのためにできること』
イギリスの田舎町で劇団を主宰するマーティン・ヘイワードは地元の名士。
次回公演を控えたある日、彼は劇団員に一斉メールを送り、2歳の孫娘ポピーが難病を患っていると告白。
高額な治療費を支援するため人々は募金活動を開始したが、この活動が思わぬ悲劇を引き起こすことに──。
事件にまつわる関係者間でのメールやテキストメッセージのやりとりで進行してゆくこの作品。
それらの膨大な資料を約450ページ読んだ後やっと殺人事件が起き、事件の真相を推理していく。
メールのやり取り等、人間関係や関係者同士の過去の摩擦を垣間見ることができ面白いです。
メールとメッセージだけで緻密なミステリを構築し、ミステリとしてフェアだとかより、純粋に物語の面白さが半端ないです。
最後にはどこに伏線があったかの説明があるので、フェアで納得できるのも見事。
帯に「21世紀のアガサ・クリスティー」とありますが、本当ですね。
21世紀のアガサクリスティと呼ばれるのも納得の面白さです。
鮮やかな謎解きはもちろんですが、事件が発生するまでの過程の部分がとても面白く、そしてその部分に巧みに伏線を張る上手さがまさにクリスティ。
アガサクリスティが好きなら絶対読んだ方が良いです。
4.スチュアート・タートン『名探偵と海の悪魔』
驚愕のSFミステリ『イヴリン嬢は七回殺される』の鬼才の第二作。
海洋冒険譚と怪奇小説を組み込んだ全方位型エンタテインメント本格ミステリです。
・英国推理作家協会スチール・ダガー賞候補
・英国歴史作家協会ゴールド・クラウン賞候補
と、まあ凄い作品です。
時は17世紀、ジャカルタからオランダへ向かう東インド会社のザーンダム号で起きる不可思議な事件を、名探偵のサミーと元兵士のアレントが追い始めるが…。
怪奇的な悪魔崇拝、嵐に翻弄される船と乗客、そして不可思議な殺人事件をめぐるミステリ、といった各要素がうまく噛み合えば、面白くないはずがない、そんな一級品のエンターテイメントです。
事件としては本当に悪魔の仕業としか思えず「これは悪魔を犯人とした特殊設定ミステリか?」と思うほどですが、ラスト名探偵が見事に解き明かしてくれます。これが本当に気持ち良い。
悪魔の仕業としか思えないおぞましい事件や不可解な現象に、時代の秩序や船内のルールに縛られながらも、水面下で捜査を進め挑むアレントと女達の奮闘にワクワクが止まりません。
ただのハッピーエンドでは終わらないラストも好き。
5.ホリー・ジャクソン『優等生は探偵に向かない』
『自由研究には向かない殺人』の続編。
女子高生のピップは、友達から「失踪した兄ジェイミーを探してほしい」と頼まれる。
ジェイミーは成人しており、今までも何度か家を出たことがあるため、警察はまともに取り合ってくれないのだ。
ピップは前回の事件で危険な目に遭ったことから及び腰だったが、友人のために力を貸すことにする。
関係者に話を聞くのはもちろん、ネットの音声コンテンツやSNSといったソーシャルメディアも駆使。
時にはダミーアカウントを作り、時には秘密のパスワードを解読しながら、徐々に真相に近づいていくが…?
イマドキの女子高生らしい様々なソーシャルメディアを使って捜査するところが見どころ。
たとえば、音声コンテンツのポッドキャスト。
これはWEBラジオの一種で、前回の活躍でちょっとした有名人になっているピップは、配信によって多くのリスナーを集めることができます。
それを利用して、ジェイミーについて情報収集するのです。
ネット民の力を借りて、少しずつ手掛かりを掴んでいくところがいいですよね。
プロの探偵によるキレッキレな捜査とは一味違っていて、良い意味での泥臭さがあり、読んでいてドキドキします。

6.S・A コスビー 『黒き荒野の果て』
昔懐かしさを感じるクライムノベル。
米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。
裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。
しかし経営する自動車修理工場の経営が傾き金の工面に困っていたところに、再び裏社会から声がかかり、ギャング同士の抗争に巻き込まれていく。
自動車に詳しくない自分でもドキドキさせてくれる描写、そして疾走感溢れる展開も素晴らしい。
ノワールにありがちなストーリーとも言えますが、カーチェイスの場面等、随所ではスリリングな展開もあり面白く読むことができます。
素材は家族、金、暴力、車といったありきたりと思えますが逆にそこが良く、ハードボイルドながらも緊迫感あふれる筆致に読む手が止まりません。
カーチェイスやダイヤ強奪など、アクションシーンが中心ですが、家族のドラマでもあり、1人の男の孤独な戦いの物語で読み応えのある一冊となっています。
7.シヴォーン・ダウド『ロンドンアイの謎』
12歳のテッドは、姉といとこのサリムと観覧車ロンドン・アイに乗りにでかけた。
見知らぬ男がチケットを1枚だけくれたので、サリムは大勢の乗客と一緒に観覧車のカプセルに乗りこんだ。
だがカプセルが一周しても、サリムは降りてこなかった。
閉ざされた場所からなぜ、どうやって消えてしまったのか?
ミステリにはまだいろんな魅せ方があると感じさせられた作品。
ほかの人とは違う優秀は脳を持つテッドが、警察や大人とは違う視点で推理をし、見事に事件を解決していく。
一風変わった魅力の持ち主で、清々しい印象を与えてくれるテッドの虜になること間違いなし。
ちゃんと伏線が回収されて真相に近づく過程がワクワクしますし、主人公の成長や家族関係の変化も良かったです。
また、サリムはどこに行ってしまったのかという謎が終始物語をひっぱっていて、あっという間に読めてしまうのも良いですね。
ジュブナイル向けになる作品ですがその分読みやすく、ミステリーは本格的ですし、まさかの展開も楽しめるストーリーになっています。
8.アリス・フィーニー『彼は彼女の顔が見えない』
夫婦関係が行き詰っていたアダムとアメリアの夫婦。
そんなふたりに、くじでスコットランド旅行が当たる。
ふたりきりで滞在することになったのは、改築された古いチャペル。
しかし猛吹雪によって外界と隔絶するふたり。そこに奇妙な出来事が続発し――。
何を書いてもネタバレになりそうなので、ぜひ実際に読んでこの快感を味わっていただきたいですね。
とにかく終盤の二転三転する展開がもう最高!
前作『彼と彼女の衝撃の瞬間』の時もそうですが、この作者さんは騙し方が本当にお上手。
やられた!感を味わいたいミステリ好きな方に超おすすめです。
9.ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』
ポール・オースターの別名義デビュー作。
元大リーガーの名三塁手チャップマンから依頼を受けた、私立探偵マックス・クライン。
MVP常連の人気選手ながら交通事故で片脚を失い、現在は議員候補となっている彼のもとに、脅迫状が送られてきたのだ。
殺意を匂わせる文面から、かつての事故にまで疑いを抱いたマックスは、いつしか底知れぬ人間関係の深淵へ足を踏み入れることになる――。
有名なハードボイルド小説の雰囲気を色濃く反映した物語になっていて、最近味わうことが少なくなってきた正統派ハードボイルド小説を味わうことができます。
純粋にエンターテイメントとして書かれた作品で、レイモンド・チャンドラーの作品と言われても信じるぐらいハードボイルドな文体が素晴らしい。
皮肉の効いた軽妙洒脱トークがよく、登場人物も魅力的。
軽妙な会話、秀逸な比喩、巧みな伏線、論理的な謎解きとミステリとしてのレベルも高いです。
ハードボイルド小説ならではの主人公の孤高さもうまく描かれていますね。
とにかく面白いハードボイルドが読みたいならコレで決まり。
10.ジェローム・ルブリ『魔王の島』
祖母の訃報を受け、彼女は孤島に渡った。
終戦直後に祖母とここで働き始めた者たちだけが住む島。
本土への船が来る日までを島で過ごす彼女は、やがてこの島に漂う不吉な影に気づきはじめる。ここには何か忌まわしい過去がある。
そして若き日の祖母の手記にも謎の「魔王」の影が……。
物語は重層的な構造になっており、次第に真実が明らかになっていく中盤からの疾走感が素晴らしい。
前半のホラーめいた話から一転、後半は現実的な事件になったと思ったら最後にとんでもない隠し玉で驚愕を与えてくれます。
このラストの展開は好き嫌いがはっきり分かれるでしょう。
読めば読むほど謎が謎を呼ぶ展開、この物語がどこに向かうのか全くわからないまま読み進み、連れていかれる先は何重もの罠にはまったようなラスト。
深く濃い闇に溺れてしまいそうなそんなサイコ・サスペンスです。
解説で「何を書いてもネタバレになる」と言われるこの作品。
そんなことを言われれば、読んでみたくなるのがミステリ好きってものでしょう。
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参考にしていただけたら嬉しいです。それでは良い読書ライフを(* >ω<)=3
一つ一つが読みごたえがある短編集です。重苦しさ、焦燥感・・・読んだ後、真っ暗闇の中に一人ズドーンと取り残されるような感覚になります。本当、佐藤究さんて文章が上手い。頭のいい人、これが天才、才能があるってことなんだぁなって・・・凡人がどんなに努力したところでこんな文章は書けないから・・・。今から次作が楽しみです!
ナイス★13
コメント(0)
2022/11/24
本当に佐藤究さんの文章の上手さには驚きですよね。
今回の短編集も素晴らしかったので、次回作も楽しみです♪
お久しぶりです♪
今年ももう「このミス」の季節がやってきたのですね。1年経つのが早いです(笑)各作品の書評ありがとうございます♪面白そうな作品がたくさんありますね♪今年は積読本の消化だけで、ほとんど新作読めてないですが、手にとれたらなぁと思います。
毎日寒いのでanpo様ご自愛ください♪
来年もよろしくお願いいたします♪♪
チョコさんお久しぶりです♪
本当一年経つのが早いですね笑
今回も面白い作品ばかりなので、ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです♪
チョコさんもお身体に気をつけて、素敵な読書ライフを楽しんでください!
来年もよろしくお願いいたします(๑>◡<๑)
今年も面白そうな作品が揃いましたね。
個人的に応援している白井智之さんの高順位がうれしいです。
4位の「方舟」と13位の「#真相をお話しします」はぜひ読みたいです。
(あと、今回は本誌の「西村京太郎 追悼特集」がツボでした。)
今年もこのサイトでいろんな作品、紹介してもらえて参考になりました。これからも素敵な記事、楽しみにしています。
orsaymnさん、コメントありがとうございます♪
私も白井智之さんの作品は好きなので、ベストテンに入っていてyれしかったです。
「方舟」と「#真相をお話しします」、どちらも本当に面白いのでぜひぜひ読んでみてくださいな♪
そういっていただけて大変嬉しいです!
これからもよろしくお願いいたします(๑>◡<๑)