さて、この季節がやってまいりました。
このミステリーがすごい!ベスト10、2022年版国内編のお時間です。
はたして今年はどんな作品が選ばれたのでしょうか!
早速見ていきましょう(*’▽’*)
海外編はこちら!

1位.米澤穂信『黒牢城』
大正6年、それは本能寺の変より4年も前のことだった。
織田信長を裏切り謀反を起こした荒木村重は有岡城に立てこもる。
しかしその城内では難事件が発生し、村重はその謎を解くよう囚人である黒田官兵衛に求めた。
村重に事件のヒントを与える官兵衛だが、その企みとは果たして―?
歴史上の有名軍師を探偵になぞらえた戦国ミステリ
戦国時代の有岡城の戦いをモチーフにした戦国ミステリとなっている本作。
荒木村重や黒田官兵衛などの武将が登場するため、歴史好きな人にはより一層楽しめるストーリーとなっているでしょう。
話の展開や構成としても無理がなく、その舞台の良さが存分に発揮されています。
また、戦国時代を舞台としていますが、登場人物のセリフ回しなどには違和感もなく読みやすいのも印象的です。
昔ながらの言葉遣いに抵抗がある人や苦手意識のある人でも読みやすい仕上がりに。
肝心のストーリーも村重と官兵衛の切れ者具合が生かされており、非常に読み応えのあるものとなっています。
手に汗握る展開にぐいぐい引き込まれてしまうような魅力も健在。
全体的な満足度も高く、読後に深い余韻を残すようなステキな作品となっています。

2位.佐藤 究『テスカトリポカ』
麻薬密売人のバルミロ・カサソラは逃亡した先で臓器ブローカーである日本人と出会う。
その出会いをきっかけに2人は日本で臓器ビジネスを実現させることにした。
川崎で育った少年・コシモもバルミロと出会い知らず知らずのうちに犯罪へと巻き込まれる。
その陰にはアステカ王国の恐るべき神・テスカトリポカも関係していて―?
神話や闇社会を題材にした恐ろしきクライムノベル!
麻薬密売人が臓器ブローカーと出会い臓器売買ビジネスに手を染めていく本作。
序盤から臓器売買やバイオレンスなど圧倒的なおぞましさを見せつけます。
重厚な恐怖でありながらもその世界観に引き込まれていく人も多いでしょう。
また、話はただの闇社会ものではなくアステカ文明などの神話のような要素が関係してきます。
非常に大きなスケールで描かれているため、読み応えも抜群。
登場人物はこれでもかというほど悪人が多く、その残酷さや圧倒的な恐ろしさが大きく印象に残ります。
しかしそれでもどんどん読みたくなるほどの面白さと勢いがあるのは本作の魅力ですね。
第165回直木賞も受賞している傑作ですので、ダークなクライムノベルがお好きな人にはぜひ1度読んでみることをおすすめします。

3位.月村 了衛『機龍警察 白骨街道』
国際指名手配犯である君島がミャンマーで逮捕された。
君島の身柄引き取り役として指名された警視庁特捜部の3人はミャンマーへと乗り入れるが、そこで待ち受けていたのは数々の罠だった。
沖津特捜部長はただならぬ何かを察知するが、そこにある思惑とは一体―?
渦巻く陰謀とアクションで魅了する大河警察小説
紛争地帯のミャンマーを舞台に展開していく本作は、罠に立ち向かっていくアクションと渦巻く陰謀が見どころです。
特捜班の3人の描写は読者にグイグイと先を読ませるような力がありますね。
陰謀や思惑のような謀略の数々も出てきますから、アクションとの緩急もあり飽きることなく読んでいける仕上がりに。
また、日本とミャンマーの両方からストーリーが繰り広げられていきますから、その構成も巧みで引き込まれる部分が多々あります。
贈収賄事件やクーデターなど気になるポイントがいっぱいで、どんどん深く読み込んでいきたくなること間違いなしです。
緊張感ある面白さやそのテンポの良さも魅力的となっています。
読み応えばっちりの警察小説となっていますから、アクションものなどが好きな人はぜひ1度読んでみていただきたいです。
4位.今村 昌弘『兇人邸の殺人』
神紅大学ミステリ愛好会に所属する葉村譲と剣崎比留子。
依頼のため2人が連れていかれたのは“生ける廃墟”と言われるテーマパークだった。
なんでも園内にある「兇人邸」には比留子たちが追う班目機関の情報が隠されているのだという。
依頼主とともにそこに潜入するが、待ち受けていたのは無慈悲な殺戮だった―。
廃墟テーマパークを舞台にしたクローズドサークルもの
廃墟テーマパークで殺人事件に巻き込まれてしまう本作。
序盤から建物の気味悪さにオカルトな雰囲気が漂います。
ミステリの要となる殺戮は異形のものによって行われるなど、その怖さやインパクトで一気に世界観に引きずり込まれるでしょう。
また舞台となっている建物も複雑で、非常に作りこまれているのが印象的。
その緻密さが事件の謎を推理する楽しみをより一層高めてくれますね。
見取り図もあるため、読者が分かりにくさを感じないところも魅力的と言えます。
本作は非現実的でありながら破綻していない理論的な展開がまさにお見事の一言。
スリルとミステリを思う存分味わいたい人にはとてもおすすめできる1冊となっています。

5位.阿津川 辰海『蒼海館の殺人』
学校に来なくなってしまった高校生・葛城。
名探偵である彼に会うため、田所と三谷は葛城の家を訪れた。
出迎えてくれたのは政治家に学者、弁護士にモデルといった華々しい家族の面々。
激しく雨の降る悪天候であったが、そんななかでも田所たちは明るくもてなされていた。
しかし、恐ろしい連続殺人の発生により事態は一変していく―。
危機迫る状況で繰り広げられる本格推理小説
過去にとらわれてしまった名探偵の実家を舞台に、高校生が事件に巻き込まれていく本作。
嵐による洪水と連続殺人という2つ要素が場面に緊張感を生み出します。
迫り来る脅威からどう逃げ、真実へと辿り着くのかは見どころです。
終始危機迫る状況のため、読者としてもハラハラドキドキすること間違いなしでしょう。
また、巻頭には見取り図や家系図があることからより一層その世界観に没頭していけます。
混乱せずに推理を楽しんでいける仕様なのはとても嬉しいですね。
本作は嵐の夜、迫り来る濁流、正体不明の犯人などミステリ好きとしてはワクワクせざるを得ないような要素が盛りだくさん。
数々のミステリランキングにもランクインした館もの本格ミステリとなっています。
6位.相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』
綿密に計画・実行されたとある殺人事件。
完璧なアリバイがあることからそれは事故として処理されるはずだった。
しかし、そこに現れたのは死者の声が聞こえるという美女・ 城塚翡翠。
そんなもので捕まることなどありえないと高を括る犯人だったが、徐々に状況は変化していき―?
あざと可愛い探偵が魅せる倒叙中編ミステリ集
死者の声が聴ける美女・城塚翡翠が数々の事件の真相を暴いていく本作。
内容は中編集となっており、それぞれ読み応えのあるストーリー展開となっています。
いくつかの中編がありますが、最後の最後まで意表を突く展開で楽しませてくれるでしょう。
また、本作は犯人が分かっている状態からいかにして真相を暴いて証明していくかというストーリーなので、その犯人攻略の仕方が見どころとなっています。
どんでん返しもあり先の読めない展開にわくわくすること間違いなし。
なんといっても主人公である城塚翡翠のキャラクターも魅力的ですから、あざと可愛いその言動にグイグイ引き込まれる人も少なくないでしょう。
数々のミステリランキングに名を連ねた5冠獲得ミステリ『medium 霊媒探偵城塚翡翠』待望の続編でもありますから、ミステリ好きな方はぜひ読んでみてください。

7位.三津田 信三『忌名の如き贄るもの』
生名鳴地方の虫くびり村に伝わる「忌名の儀礼」。
忌名は他人に教えてはならず、呼ばれても振り向いてはいけないものだと言う。
そんな忌名にまつわる儀礼の最中、少女が体験したのは不思議な怪異。
さらには殺人事件まで発生し、名探偵・刀城言耶が事件の謎に挑む―。
ホラーな雰囲気が漂う恐怖の傑作ミステリ
閉鎖的な村に伝わる儀式を中心に展開していく本作は、序盤から不気味な空気感を漂わせます。
まずその儀式が非常に魅力的で、一気に読者を作品の世界観へ引きずり込んでくれるでしょう。
読み始めから雰囲気が抜群の小説です。
また、あらゆるシーンの描写も巧く迫り来る恐怖のようなものをひしひしと感じられます。
民俗学的なホラーな雰囲気が好きな方にはとてもおすすめです。
終盤には怒濤の謎解きが待っているので、気持ちが良いほどの爽快感も味わえます。
結末としてはやはり不穏さや不気味さの漂うものとなっているので、最後まで世界観や雰囲気を楽しめる仕上がりとも言えます。
とにかく最後の最後まで盛り上げてくれる作品なのです。
この機会に、ぜひシリーズを全部読んでいただきたいですね。

8位.浅倉 秋成『六人の嘘つきな大学生』
IT企業「スピラリンクス」で行われた採用面接。
最終選考の課題はチームでのディスカッションだった。
しかし本番直前、変更された課題はチーム6人の中から内定者を1人選ぶというもの。
議論が進むなか発見された封筒には「●●は人殺し」という告発文が入っていて―?
人間の本性が暴かれていく究極の心理戦!
IT企業の最終選考で6人の大学生が内定者決めの過程で心理戦を繰り広げていく本作。
その場で殺人事件が発生するのではなく、「●●は人殺し」という告発文によって話が展開していくのは面白いですね。
疑心暗鬼になる心情や内定がかかっているという状況におけるそれぞれのキャラクターの心理描写にも注目です。
また、本作はどんどん物語が展開していくので一気に読み進めてしまうような面白さも感じられます。
ミステリとしての完成度も高く、伏線がしっかりと張られているのもポイントでしょう。
もちろん回収の仕方も上手いので、最後には気持ちよく読了することができます。
人の面と裏といった部分が堪能できる作品となっていますので、心理戦に重きを置いたミステリがお好きな方にはぜひとも手に取ってもらいたい1冊です。

9位.知念 実希人『硝子の塔の殺人』
山奥にそびえ立つ奇妙な硝子の塔。
そこに住む富豪は刑事、霊能力者、小説家など様々なゲストを建物へと招待した。
しかしその夜、何者かにより殺人が遂行される。
殺人事件は1つにとどまらず、さらには別の遺体まで発見され…?
名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬が事件の真相を追う―。
まさかの展開に驚かされる王道本格ミステリ!
いかにも怪しい奇妙な館で、一癖も二癖もある人物たちが繰り広げる本格派ミステリとなっている本作。
密室殺人ものとなっており、序盤からミステリ好きにはたまらない要素がたくさん盛り込まれています。
本作は犯人の犯行が暴かれたところから始まるストーリーになっているのですが、その辺りもなかなか斬新で面白いです。
その場面から一体どのように物語が展開し、何を解き明かしていくのか……、そのような点に注目しつつぜひ読んでみてください。
また、なんといっても読者に驚きを与えるラストの展開はお見事の一言。
事件に用いられているトリックも素晴らしく、ミステリとして終始楽しめる仕上がりとなっているでしょう。
ミステリへの愛やリスペクトといったものが感じられる内容となっていますので、ミステリ好きの方にはぜひとも手に取ってほしい作品です。

10位.道尾秀介『雷神』
妻の死後、娘とともに埼玉へ戻り平和に暮らしていた藤原幸人。
しかしそこにかかってきたのは1本の脅迫電話だった。
31年前の母の不審死、その後の毒殺事件。
一体あのとき何が起きていたのか?
娘との平和な暮らしを守るため、姉の亜沙実らとともに再び故郷へと赴くのであった―。
閉鎖的な村で起こった悲しく切ないミステリ
長き時を経て過去の事件の真相を探っていくミステリとなっている本作。
序盤から語られる事件に始まり、物語は終始不穏な空気に包まれます。
緊張感あふれる展開で、一気に読者を引き込んでいく感じはすごいですね。
物語は1つの事件ではありませんから、一体何がどのように繋がっていくのか、そういったところにも注目して読むとより楽しめるかもしれません。
構成も非常に巧みですし、どんどん深まっていく謎に読み進める手がとまらないような展開でしょう。
また、終盤は思わず声が漏れてしまうようなラストも待ち受けています。
今まで散りばめられていた伏線も理解でき、切なく悲しいながらも作品の完成度としては高く評価できる作品です。
ラストの1行まで素晴らしい作品となっていますので、ぜひその目で結末を見届けてみてください。

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参考にしていただけたら嬉しいです。それでは良い読書ライフを(* >ω<)=3
コメント
コメント一覧 (2件)
いつも更新ありがとうございます。
もはや、このミスのランキングよりもanpo39さんの解説の方を参考にさせてもらってます。
本当に穏当な評価だといつも思いながらレビューを読ませていただいています。
anpo39さんが「驚ける」とおっしゃるなら読もう、そう思える貴重なレビュアーさんです。
やんもさんおはようございます!
そう言っていただけて大変嬉しいです、本当にありがとうございます(๑>◡<๑) これからも更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!