さて、やって参りました。
このミステリーがすごい!2019年版のお時間です。
この季節になると、今年ももうすぐ終わりだなあ、としみじみしますね。
この30年間の『このミス』1位の中から1位を選ぶ「キング・オブ・キングス」ランキングが発表されていたり、過去30年間の国内、海外ミステリーのベスト10が別冊で付いていたりと、今回も豪華になっております。
というわけで早速、2019年版「このミステリーがすごい!」で選ばれたベスト10作品(国内編)をご紹介していきましょう!
2021年版はこちら!


※2019年版「このミステリーがすごい!」は《2017年11月 – 2018年10月》に発刊された作品が対象です。
・海外編はこちら

10位.芦沢央『火のないところに煙は』
おおおお!
まさか芦沢央さんのホラー小説がランクインしているとは!
芦沢さんはミステリ作家というイメージが強く、その芦沢さんがホラー小説を書くという時点でドキドキでしたが期待以上に面白くてビックリした作品です。
第一話『染み』、第二話『お祓いを頼む女』、第三話『妄言』、第四話『助けてって言ったのに』、第五話『誰かの怪異』、最終話『禁忌』
と全部で計六話の物語が収められております。
どの話が一番怖い、というのではなく、どの話も安定して怖く、意味があり、最終話でドカン!ときます。
一見短編集のようですが、必ず第一話から順番に読んでくださいね。これは短編集に見せかけた長編作品ですので。
そして「ミステリと怪異の相性」についての芦沢さんの持論がされており、読みどころの一つになっています。
実際、伏線を回収していく場面が多くあり、まるでミステリ小説を読んでいる時のような快感(恐怖)を味わうことができます。

10位.市川憂人『グラスバードは還らない』
ランクインしてて良かったー!
『ジェリーフィッシュは凍らない』『ブルーローズは眠らない』に続くマリア&漣シリーズの第三弾。
安定の本格ミステリで、やっぱりこのシリーズ大好きだと思わされた作品でした。
とある5人のがガラスの壁に囲まれた迷宮に閉じ込められ、そこで殺人事件に巻き込まれる。
マリアと漣コンビのやり取りは相変わらず面白く、この2人のキャラのおかげで雰囲気が固くならずにサクサク読めるのがありがたいです。
迷宮での殺人とマリア&漣コンビの二つの章が、徐々に繋がってきてラストに綺麗に収束する展開もさすが。
終盤は二転三転どころか五転六転ぐらいするし、そのどれもに「なるほどな」と思わせる説得力がありました。
今とても期待しているシリーズの一つ。次はどんな本格ミステリを見せてくれるのでしょうか!
ランクインおめでとうございます!

9位.葉真中 顕『凍てつく太陽』
太平洋戦争末期の北海道を舞台に、連続殺人を追う2人の刑事の人生が絡み合う骨太エンターテイメント。
正直好みなミステリではなかったのですが、意外とスラスラ読めるものですねえ。
それにミステリ的にアッと言わせてくれる場面もあったし、なかなかに楽しめました。
このミスにランクインしていなかったら手に取らなかった一冊。良き出会い。
8位.月村了衛『東京輪舞』
普段だったら絶対手に取らないであろう表紙なのですが、このミスにランクインしているし月村さん結構好きなので読んでみた。
ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、長官狙撃。昭和から平成を騒がせた大事件を、一人の刑事の数奇な人生とともに描く。
好みのミステリかと聞かれれば、正直好みではないのですが(すいません)、それでも一応楽しめました。
月村さんってこういう小説もお書きになるのか!という印象が強かったですね。
実際に起こった事件に絡めた物語なのでリアルで迫力がありました。本当にフィクションなのかと疑ってしまうほどに。
月村さんと言えば「機龍警察」シリーズで毎回このミスにランクインされているので、次は「機龍警察」最新作を期待したいです。
7位.『雪の階』
昭和十年、春。数えで二十歳、女子学習院に通う笹宮惟佐子は、遺体で見つかった親友・寿子の死の真相を追い始める。調査を頼まれた新米カメラマンの牧村千代子は、寿子の足取りを辿り、東北本線に乗り込んだ―。
二人のヒロインの前に現れる、謎のドイツ人ピアニスト、革命を語る陸軍士官、裏世界の密偵。そして、疑惑に迫るたびに重なっていく不審な死。陰謀の中心はどこに?誰が寿子を殺めたのか?
「BOOK」データベースより
昭和初期の日本を舞台にしたミステリ。
親友の死に疑問を抱いた惟佐子と、彼女に調査を依頼された千代子が事件の謎に迫る。
謎のドイツ人ピアニスト、革命を語る陸軍士官、裏世界の密偵など様々な人物が関わってきて、最後は二・二六事件に繋がっていく。
ちょっと文体が独特で、しかも長文なのでサクサクと読んでいくことは難しかったですが、物語は重厚で読み応えがあり満足のいく作品でした。
鉄道のトリックを中心に据えたミステリの部分はまるで松本清張のよう。
それでいてクスッと笑わせてくれるようなシーンもあったり、キャラクターが魅力的であったり、とにかく飽きさせないで読ませる力があるんですよね。
内容も重そうだし読むのに時間かかりそうだなあ、と思っていたのですが意外にすんなり読むことができました。
ミステリーの面白さもさることながら、とにかく物語そのものにのめり込んでしまう感じ。思っていた以上に楽しい時間を過ごせました。
6位.三津田信三『碆霊の如き祀るもの』
「刀城言耶シリーズ」の9作目が見事にランクイン!
個人的に言えばもっと順位は上ですが、まあいいでしょう!
海と断崖に囲まれた僻地の村に訪れた刀城言耶が、因習や伝説を調べるうちにあれよあれよと事件に巻き込まれていきます。
江戸・明治・戦前・戦後とそれぞれの時代のおどろおどろしい怪談をなぞるように殺人が起きてしまうのです。
そして、このシリーズの最大の魅力である怒涛の論理展開も健在。
終盤で70もの謎が提示されるのは圧巻で、読者を翻弄する仕掛けが最後まで続きます。二転三転、どんでん返しに次ぐどんでん返しに最後はニヤニヤしっぱなしでした。
最後の謎解きは若干無理やりな感じがありますが、それが良いんです。刀城言耶の魅力が凝縮された感じがたまらない。
4つの怪談が事件の真相に結びついたときは「見事!」と叫びましたね。これぞ刀城言耶シリーズの醍醐味。ぜひ味わいましょう。
果たして、ミステリーに終わるか、ホラーに終わるか……。

5位.真藤 順丈『宝島』
沖縄の戦後から返還までの激動の時代を生きた幼馴染3人。
彼らは成長し、教師、警官、ヤクザとなりそれぞれ沖縄に関わっていく。
「読み応え」「熱量」で言えば今回のこのミスの中でもピカイチではないでしょうか。
おそらくこのミスにランクインしていなかったら手に取ることはなかったであろう一冊ですが、正直めちゃくちゃ面白かったです。
こういう作品に出会えるからこのミスっていいですよね。
沖縄を舞台にした小説はよく読んでいたと思っていたのですが、こんな沖縄もあったのかと驚かされる一冊でした。
沖縄で起きた様々な出来事をこのように楽しく面白く読めるのは小説ならでは。
史実に基づいた物語はリアルであり、心がキュッとなるくらい読むのが辛いシーンもありました。
それでも「この作品に出会えてよかった」と思える読後感が残ります。
本格ミステリ小説らしい作品ではありませんが、このミスで5位となるのも納得の傑作なのです。
4位.東野圭吾『沈黙のパレード』
6年ぶりとなるガリレオシリーズの新作です。
食堂『なみきや』の長女・並木佐織の失踪から3年、両親のもとに佐織の遺体発見の連絡が入る。
佐織の殺害容疑で逮捕された男・蓮沼は、黙秘を続けることで起訴されず処分保留となっていた。
起訴されてから『沈黙』を続けることで裁判で無罪を勝ち取っていた男と、その周りの者たちの物語です。
さすがの東野圭吾さん。安定の完成度と読みやすさで一気読み、期待通りの面白さでした。
アメリカから帰国し久々に登場した湯川先生は、今回も鋭い推理力を見せつけアッと言わせてくれます。
もちろんトリックにも魅せられたし、人情味に溢れる読み応えある作品となっていました。
かなり映像化を意識して書かれているような感じがしたので、ぜひ映画でやってほしいですねえ。
4位という順位には結構納得。ベスト5には入るのではないかなーと思っていたので。

3位.若竹七海『錆びた滑車』
きたー!
不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズの6作目です。
前作『静かな炎天』も2017このミスで2位でしたからね。さすがの人気シリーズです。
今作も相変わらず災難続きですが、申し訳ないことにそれが面白いんです、すいません。タフだなあ、と毎回思いますが今回はさすがに可哀想になってくる。
2人のお婆さんの喧嘩に巻き込まれ怪我をし病院送りになり、あれよあれよと事件に巻き込まれていく。
たった一つの簡単に思えた謎がどんどん複雑になっていき、もう手に負えない!と思ったところで葉村晶の手によって華麗に解決されていく。
二転三転する展開、張り巡らされた伏線を綺麗に回収していく様も圧巻でした。アレがそうなって、コレと繋がっていくのね!という驚きあり。
過去作を知らなくてもかなり楽しめる内容ですが、できればシリーズを続けて読んでいた方が良いですかね。ほんとに面白いシリーズなので読んでおいて損はないです。
2位.深緑野分『ベルリンは晴れているか』
この作品はランクインしていると思ってました。
『戦場のコックたち』で一躍話題となった深緑さんが、再びあの時代のドイツを舞台にミステリを描く。
続編というわけではないので、『戦場のコックたち』を読んでいなくても問題なく楽しめます。
戦争に敗れたドイツ・ベルリンを舞台に、主人公の少女アウグステの現在と過去が交互に書かれていく。振り返ってみればたった二日間の出来事なのに、随分と長く感じられました。
ミステリー小説の形は取っていますが、第二次世界大戦後の混乱したベルリンの様子を精密に描いた冒険談としても面白く読めました。
にしても相変わらず情景描写が濃密で、作中の光景が鮮明に脳裏に浮かんできます。深緑作品の醍醐味ですね。
戦争のおぞましさがこれでもかと伝わってきます。重厚な物語ながら読みやすく、読み終わるまであっという間。でも読み応えは抜群。
『戦場のコックたち』に負けずとも劣らない傑作でしょう。

1位.原尞『それまでの明日』
前作『愚か者死すべし』から14年ぶりの新作が見事一位。
私立探偵沢崎が活躍するハードボイルドシリーズです。
『私が殺した少女』、『そして夜は甦る』の頃が懐かしいですね。前作がきっちり終わっていたので、まさか2018年になって続編が読めたのは嬉しい限りです。
探偵沢崎のもとに金融会社に務める望月という男性から、料亭の女将の料亭の女将の身辺を調べてくれ、という依頼が届いた。
しかし調べたところ、その女将はすでに亡くなっており……。
沢崎が50歳を越えたためか前作品より性格が柔らかくなり、物語もマイルドになったように感じられました。
それでも、様々な混乱をグイッと収束させておいてあの衝撃のラストはさすが沢崎シリーズという感じ。
続きがあるような終わり方だったので続編も期待しちゃいます。次は何年後になるのかなあ。
感想:前年と比べて
10位.『開化鐵道探偵』
9位.『盤上の向日葵』
8位.『かがみの孤城』
7位.『遠縁の女』
6位.『狩人の悪夢』
5位.『いくさの底』
4位.『ミステリークロック』
3位.『機龍警察 狼眼殺手』
2位.『ホワイトラビット』
1位.『屍人荘の殺人』
前年のこのミスベスト10はこんな感じ。
『盤上の向日葵』や『かがみの孤城』、『狩人の悪夢』、『屍人荘の殺人』など個人的にもどストライクな作品が多かったですね。
それに比べて2019年は意外なランキングというか、全く予想ができなかった感じ。
有栖川有栖さんの『インド倶楽部の謎』や島田荘司さんの『鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース』もベスト10に入ってないのも意外でした。
その分、このミスがなかったら読まなかっただろうなあ、という作品が多めでしたので、これはこれで良かったのかな。
他の年のこのミスはこちら!


・【2018年版/国内編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2018年版/海外編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2017年/国内編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2017年/海外編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2016年/国内編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2016年/海外編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2015年/国内編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2015年/海外編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2014年/国内編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2014年/海外編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2013年/国内編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
・【2013年/海外編】このミステリーがすごい!ベスト10紹介
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➡︎【第2弾】最高に面白いおすすめ国内ミステリー小説50選②
参考にしていただけたら嬉しいです。それでは良い読書ライフを(* >ω<)=3
正直、ぼくの勝手な予想とは大幅に違ってました
恥ずかしながら一位の作品はここで初見でした ミステリー好きを語る上でとんだ粗相だと反省しておりますw
予想通りのランクインと言えば、やはり沈黙のパレード 芦沢さんの火のないところに… は、ミステリーと取られるかどうかわからなかったのですが、やはり無視できない一冊だったという事ですよね彡(^)(^)
下村作品もランクインしてくると勝手に思ってたんですが… さらに良作が多かったということでしょうか? とりあえず全巻読破しなくちゃ
年内読まないといけないものばかりで、まだまだ忙しい日が続きそうですw
こはるさんこんばんはー!
いやあ、私も予想と全然違いました笑
まあそれもこのミスの醍醐味なのですかね(´▽`*)
そうそう、芦沢央さんの『火のないところに煙は』がランクインしていたのは嬉しかったです!
ですねー下村作品が入ってないのも意外ですよね。
私も忙しい日が続きそうです笑
頑張ってください!