深緑野分『この本を盗む者は』新たなジャンルを確立!ミステリとファンタジーが融合した名作

深緑野分先生は、かつて書店のパート店員だったところから専業作家に転向した作家です。

作家として専業で活動してからすぐに、短編「オーブランの少女」で東京創元社主催の第7回ミステリーズ!新人賞で佳作に輝き、作家デビューを果たします。

そんな深緑先生をさらに有名にしたのが、2019年、『ベルリンは晴れているか』という作品。

この作品で第160回直木三十五賞候補、第21回大藪春彦賞候補、2019年本屋大賞第3位、第9回Twitter文学賞国内編第1位に輝くという快挙を成し遂げました。

本格的なミステリ作家としても有名で、何度も「このミステリーがすごい」をはじめとしたミステリ作品のランキングリストの上位にいる有名な方です。

そんな深緑先生が今までと違ったテイストの作品を書いたという事で話題となったのが本作、『この本を盗む者は』です。

今まで本格的ミステリだったのが、ミステリの中にもファンタジー要素を織り交ぜた異色の作品になっています。

この記事では、『この本を盗む者は』の魅力をたっぷりとご紹介いたします。

目次

深緑 野分『この本を盗む者は』

高校生の主人公である深冬は、本が好きではなかった。しかし深冬の父親は巨大な書庫「御倉館」の管理人、曾祖父は本の蒐集家。

本に関わる家庭に生まれ育ちながら本に対しては興味を持てなかった。

ある日、御倉館から本が盗まれるという事件が発生した。

その現場には不思議なメッセージが残されていたのだ。

その内容とは、「この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる」というもの。

そして、実際に本の呪いが発動。深冬が住んでいる街は物語の世界に姿を変えていってしまった。

元に戻る方法は本泥棒を捕まえる事。

つまり泥棒を捕まえない限り元に戻らないと知った深冬は、否応なしに様々な本の世界を冒険していくことになってしまった。

やがて深冬自身にも徐々に本に対する思いなど、気持ちの変化が見られるようになり・・・。

本の世界に入り込む、おとぎの世界に入り込むというのは、不思議の国のアリスや過去様々な本によって知られているところですが、ところどころ現実味とフィクションがうまく混ざったわくわくするストーリー展開には感動します。

深緑 野分『この本を盗む者は』の口コミ【読者の感想】

それでは実際にこの本を読んだ方の感想や口コミをご紹介いたします。

 

『『ハリー・ポッター』シリーズ風の冒険ファンタジーでしたが、主人公達が勇気に溢れていて、私もこのようになりたいと俄然憧れてしまいました。
これだけ読んでいて勇気が沸く作品は他にそうそう無いのではないのでしょうか』

 

『ミステリーが得意な深緑野分さんの本ということもあって、かなり意外でした。
そして、街が盗まれた本の世界へと変わってしまうという設定も、これまでになく斬新で、
その世界観に引き込まれてしまいました。
そして、真白という少女が一体何者なのかとか、深冬は本を好きになるのかとか、気になるところが一杯あって、最後まで飽きることがありませんでした』

 

『まず何よりも”本の世界が具現化して現実の世界を侵食していくとどうなるか”という「読書好き」には堪らない設定が興味をそそり、読み進んでいくうちにスリリングかつ心地よい迷宮に迷い込んだかのような錯覚を覚えた』

 

『SFとミステリと絵本のような世界と・・・いろいろなものがまぜこぜになっていて、おもしろい作品でした。
ミステリでは人が悲しんだりグロテスクな表現がありがちですが、そのような表現が苦手な方でも楽しく読むことが出来る作品だと思います』

 

ミステリのレビューでこれほど明るいものが今まであったでしょうか。

本当にファンタジー色が強く、読んでいてわくわく楽しめる作品であることがわかりますね。

本をめくる手がハラハラではなくドキワクというところが、シリアスなミステリを読む人の良い休憩にもなるのかとも思いました。

ミステリ?SF?ファンタジー?どれも正解な欲張り作品!

今までの深緑先生の作品を知っていて、それを期待した人からするともしかしたら一部期待外れだと思った方もいらっしゃるかもしれませんが、深緑先生の新しい面を見ることが出来たと考えると面白くなります。

この本の主人公は高校生の女の子。男女の差はあれども、社会人になった人からすると、誰しもが通る道であるという事で、細かい心情の変化を見ると、「自分もこんなことがあったな」と共感することもできます。

また、家族みんなが本に携わる仕事をしていたのにもかかわらず、本が好きではない、それなのにどうしても物語の世界に深くかかわらないといけなくなってしまった主人公の苦悩と考え方の変化が丁寧に書かれており、冒険マンガを読んでいるように内容に没頭してしまいます。

しかし、本格ミステリを書く深緑先生らしさはしっかり残っており、ミステリとしてもしっかりと確立しています。

ファンタジーとミステリを両立させようとすると、どうしても「こんなことあり得ない」とバッサリ切り捨てて先を読めなくなってしまう現象が起きがちですが、この本に関しては新しいジャンルとして読むことが出来るのでそのようなこともありません。

この本をきっかけに、より本格的ミステリを読みたくなったという感想も見られました。

アニメ映画にしてほしいという意見もありましたが、これも私は賛成です。

映像にするとかなり映える内容になりそうです。

本の世界に迷い込んだり、たくさんの蔵書を見上げるシーンなど、スクリーンで見てみたいと思わずにはいられません。

いろいろなジャンルを楽しむことが出来る欲張り作品を是非楽しんでみてください。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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