さて今回は、北村薫(きたむらかおる)さんの「時と人」三部作の順番やあらすじなどをご紹介です。
この三部作はその名の通り「時」と「人」を描いた物語。
「タイプスリップ」や「タイムリープ」などの時間をテーマとする小説は、多くの場合が「SF小説」ということになるでしょう。
しかし北村さんの描くこのシリーズは不思議とSF小説という感じが全くしないのです。うまく日常に溶け込んでいるというか、もしかしたら本当にあったことなんじゃないか?と思える感じが良いんですよねえ。
むしろメインは「時と人」の「人」の方。時に翻弄される「人」の描き方が素晴らしいのです。私的にも本当におすすめなシリーズでして。
ぜひ、時に翻弄される「人」の物語を楽しんでいただければと思います(ノω`*)
1.『スキップ』
高校二年生・17歳の一ノ瀬真理子が目を覚ましたら25年もの時が流れ、42歳になっていた。しかも17歳の娘、そして見知らぬ夫もいる。
これは、突然25年もの時間をスキップしてしまった真理子の生き様を描いた物語です。
よくよく考えてみれば、25年も時間をスキップしてしまうというはかなり残酷ですよね。10代後半から20代30代という大切な時間を奪われてしまったに等しい。
私だったら耐えられないでしょう。
でも真理子は強い。
17歳から一気に42歳ですよ?心はまだ17歳なんですよ?なのに真理子の対応力といったら。
私が初めてこの作品を読んだのはちょうど真理子と同じ高校生の頃。その時は17歳の目線で読んでいました。
もし私が42歳になった時、今度は42歳の目線でこの作品を楽しみたい。また違った感想を抱くことでしょう。
昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。目覚めたのは桜木真理子42歳。
2.『ターン』
交通事故をきっかけに、何度も同じ時間を繰り返してしまうことになった森真希の物語。
どう行動しようと何をやろうと、気がつけば交通事故の前日、同じ時間に戻ってしまう。これもまた残酷であり恐怖です。
果たしてこれは生きている意味があるのか、と考えてしまいます。
絵を描けど、1日経てば前日に戻ってしまう。何をやったところで、結局はなかったことになってしまう。
そんな同じ日を繰り返す真希。
やがて気力を失っていく。
しかし、
150日を過ぎた時、
電話が、
鳴る。
真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。
3.『リセット』
『スキップ』では、25年もの時を「スキップ」してしまった人を描いた。
『ターン』では、同じ時間を繰り返してしまう、つまり「ターン」してしまう人を描いた。
そして今作『リセット』は前2作と比べると少し雰囲気が違います。
ずばり、何が「リセット」なのかは言うことができません。
言うとネタバレになってしまうので、ぜひ実際に読んで「リセットってこういう事か!」と実感していただきたいのです。
前半はゆっくり物語が進行するので「なかなか話が進まないなあ」と思うかもしれませんが、後半はグッと面白くなるのでご安心を。ラストも素晴らしいです。
「——また、会えたね」。昭和二十年五月、神戸。疎開を前に夢中で訪ねたわたしを、あの人は黄金色の入り日のなかで、穏やかに見つめてこういいました。六年半前、あの人が選んだ言葉で通った心。以来、遠く近く求めあってきた魂。
読む順番は?
というわけで、今回は北村薫さんの「時と人三部作」をご紹介させていただきました。
ちなみにそれぞれ独立した物語となっておりますので、順番に関係なく読んでいただいて大丈夫です。
特にこだわりがなければ、刊行順の『スキップ』『ターン』『リセット』の順番で読んでいただいて良いでしょう。
本当に面白いですし「時間」のことについていろいろ考えさせられもする物語。きっと「読んで良かった」と思っていただけると思います。
ぜひこの素晴らしい物語を堪能していただければ幸いです。
コメント
コメント一覧 (2件)
読もう読もうと思って、まだ読んでないパターンです(笑)
ちなみに、「ターン」だけ読みました。
あー、早く読まないと!って本がどんどん増える。。。
hitomiさああああん!
すごくわかります。そういうパターンありますよね、というか私もしょっちゅうそのパターンです。笑
読みたい本がありすぎて読書が追いつきません・・・(ノω`*)