今回は北村薫(きたむらかおる)さんの名作『盤上の敵』の感想やあらすじのご紹介を。
北村薫さんといえば『空飛ぶ馬』をはじめとした「円紫さんシリーズ」というのが有名なんですよ。いわゆる「殺人が起きないミステリー」の名作でありまして、これもぜひおすすめさせていただきたいんですど。
で、北村薫さんってそういう「優しいミステリ」を書く作家さんっていうイメージが強かったんですけど、それをぶち壊したのがこの『盤上の敵』ですよ。
初めて読んだ時は、まあ驚愕したんです。トリックももちろん「北村薫さんに裏切られた」というか(´皿`●)
これはぜひとも読んでいただきたいわけでして、ここでご紹介させていただきます・・!
北村薫『盤上の敵』
今作の主人公となるのは、TV会社に勤める末永純一。
末永が自宅に戻ろうとしていると、パトカーが自分の車を追い抜いていく。
まさか、と思ったがそのまさか。パトカーは間違いなく自宅に集まっていった。
恐る恐る自宅に電話をかけると、出たのは謎の男。
なんとその男は逃亡中の殺人犯で、猟銃を片手に妻・友貴子を人質にとって自宅に立てこもっていたのだ!
警察に任せておけないと判断した末永は、警察には内緒で独自に犯人と交渉を始めます。
というわけであらすじを簡単にまとめると、
「妻を人質にとられた主人公が、犯人からどうにかして妻を救出しようとする物語」ということになります。
果たして末永は妻を無事救出できるのか?!犯人との決着はどうなるのか?!と序盤からドキドキなわけですよ。
でもね、正直言いますと私はあらすじを読んだ時はあまり魅力を感じなかったんですよね。「あんまりタイプの展開じゃないかな」なんて。
はい、私がバカでした。
もうね、めっちゃ面白いんですよ。読み始めたらすぐに物語に引き込まれてしまいました。そしてまさかのトリックにびっくりしまくりで・・(*´ェ`*)
我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。
読ませる物語、キツイ読後感。
さて、私がびっくりしたのはトリックだけでなくその「物語」にもあります。
北村さん、こんな物語もお書きになるのね。あの優しいイメージの北村さんはどこにいった。。という感じ。北村薫さんの作品の中でも「異色作」と言われるのも納得なのです。
まえがきで北村さんはこのようにおっしゃっています。
この物語は、心を休めたいという方には、不向きなものとなりました。読んで、傷ついたというお便りをいただきました。
ー省略ー
あらかじめ、お断りしておきたいのです。今、物語によって慰めを得たり、安らかな心を得たいという方には、このお話は不向きですーーと。『盤上の敵』 P.4より引用
まさにこの通りであり、他の北村作品とは違い決して読後感の良い物語ではありません。
どちらかといえば「イヤミス」の部類に入るかもしれません。
ですが!!
この作品を読んだ私としては、後味の悪さより「素晴らしいミステリだ」という気持ちが勝ってしまったのです。
気分を悪くしてしまうような物語なのに読むのは止められないし、あの大仕掛けですもん。こんなの面白くないわけないですよ。
あ、いくら気分が悪くなると言っても我孫子武丸さんの『殺戮にいたる病 (講談社文庫)』ほどでは決してないのでご安心くださいね 笑。
あくまで「北村薫さんにしては」、ということですので(〃´∀`)
国内ミステリー小説の「必読」の一つ。
私が抱いていた「円紫さんシリーズ」のような優しいイメージを見事に吹き飛ばした今作。
序盤戦に仕掛けられる伏線の数々、中盤戦に入ってから「おやっ?」となり、終盤戦に二転三転してひっくり返ってドン!となる、まさに「本格ミステリ」の楽しさを教えてくれる物語となっています。
あらゆる伏線を回収しながら真実が明らかになった時、読者は驚愕せずにはいられないでしょう。これが「北村マジック」というやつです。ぜひヤラレちゃってください。
この仕掛けは本当に素晴らしいものなので、国内ミステリー小説を読む上でも優先的に読んでみていただきたいですね。
面白さはもちろん「読みやすさ」も保証いたします。
たまに古本屋さんで100円で売られているのを見かけますし、図書館などでも比較的手に入りやすい方かと思いますのでぜひ(つ∀<。)
今回はここまで!
というわけで今回は北村薫さんの『盤上の敵』を簡単にご紹介させていただきました。
個人的にもぜひ優先的に読んでいただきたい名作ミステリです。ぜひお手に取ってみてくださいな!
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それでは良い読書ライフを(* >ω<)=3
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