後味最高!?ロアルド・ダール『キス・キス』で極上のブラックユーモアを

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『キス・キス』なんて非常に可愛いタイトルですけど、中身はロアルド・ダールらしいブラックなお話ばかりですからね。

完全に表紙詐欺です(でもそこがいい)。

先日の記事【世界の名作集】「奇妙な味」のおすすめ作品22選で「奇妙な味」としてオススメしましたが、正直「奇妙な味」とか関係なしに純粋に面白い短編集だと思ってください。

そもそもの物語がとっても面白いんです。そして何よりオチが素晴らしい。

後味が最悪なのが最高なのです。ふむ、言葉で説明するのが難しいですね。なので読むしかありません( ゚∀゚)

では、ちょっとだけあらすじを見てやってくださいな。

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目次

『女主人』

仕事で初めての地に訪れた青年ビリーは格安ホテルを探していました。

そこで目に入ったのが〈お泊りと朝食〉と書かれた看板。窓から覗いてみると雰囲気も良さそう。

でも他のところも見てからにしようかなあ、なんて思っていたのですが、なぜか看板から目を離せなくなり気がつけば呼び鈴を押していました(謎の力!)。

さて、出迎えてくれたのは愛想の良さそうな女主人。宿泊料も格安なので、青年はここに泊まることに決めました。

が……。なにか、おかしい?


これぞ奇妙な味。後味が悪いとかではなく、奇妙。ゾクゾクします。

『牧師の愉しみ』

ミスター・ボギスの本業は骨董家具の販売。

彼は田舎の農屋や寂れた屋敷を見て回り、価値の知らない人が持っているお宝を探すことを楽しんでいました(その価値を説明しないで、格安で買い取る)。

そんなある日、ボギスは一軒の家でとんでもなく価値がある家具を発見します。専門家なら誰もが欲しがる、伝説級のお宝です。

ボギスは驚愕と戸惑いに挟まれながら、なんとか手に入れようと全身全霊で交渉を始めます。

はたして、彼はその家具を手に入れることはできるのでしょうか。


純粋に面白い短編。

奇妙な味ではなく「いやあああああ!」という後味。ラストの展開にニヤニヤしっぱなしでした。

高価な家具を価値がないと見せかけて買い取る時の交渉も面白い。

『ロイヤルゼリー』

生まれたばかりの赤ん坊が、全然ミルクを飲んでくれないことに悩むテイラー夫妻。

体重は減る一方で、このままでは死んでしまう!

そんなとき夫のアルバートは、ミツバチが持つ「ロイヤルゼリー」という成分に注目しました。

ロイヤルゼリーは絶大な栄養高価を持つ物質で、ミスバチの幼虫はこれだけを食べて体重を五日間で千五百倍にするという。

これだ!とひらめいたアルバートはある行動にで始めます。それは……。


これもいいオチをかましてくれます。ゾクゾクします。こういう話が大好きです。

『豚』

ある出来事により幼い頃に孤児となったレキシントンは、大伯母のグロスパンに引き取られ、まわりから隔離された山の小さな小屋で育てられました。

レキシントンが少年と呼べるようになった頃、グロスパンは彼に料理を教えます。するとレキシントンは素晴らしい才能を発揮しました!まさに料理の天才です。

それをキッカケに二人は最高の料理本を出すことを夢にし、レキシントンは料理の研究に励む日々を送ります。

しかしレキシントンが十七歳になった頃(彼のレシピが九千を超えた頃)、グロスパンが突然亡くなってしまいました。

グロスパンは手紙を残していて、そこにはこれから彼がするべきこと(死亡手続きや弁護士に会って遺言状を貰うなど)が書かれていました。

レキシントンはその通りに初めて山を降り、ニューヨークへと向かうのですが……。


衝撃的展開!

これぞロアルド・ダールなんですよ。

すごい好き。一番かも。

面白いのは、グロスパンはベジタリアンであり肉を一切食べなかった、という事ですね。幼い頃からそう育てられてきたレキシントンは、当然「肉を食べる」という行為すら知らなかったわけで。

そしてレキシントンがめちゃめちゃ純粋な少年で。はい、これ以上は言えないのですが。

まさかのオチは全く予想できなかった。えええ!そうくるう?!っていう後味の悪さ。

 

安定した面白さの名作集!

他にも、

亡くなった夫が遺した手紙にとんでもない実験内容が書かれていた、という『ウィリアムとメアリー』

時間に遅れることに病的なまでに心配するフォスター夫人とそれに苛立つ夫を描いた『天国への道』

女性と触れる事すらできないジョージー・ポージーの語りから始まる『ジョージー・ポージー』

子供を三人連続で亡くして不安で仕方がない女性の話、かと思ったらまさかの展開を迎える『始まりと大惨事―実話―』

キジを捕獲しようと、ある作戦を練って森に忍び込む若者たちを描く『世界チャンピオン』

などなど、ダールワールド全開の物語が11編も収められています。ほんっとハズレなしなんですよ。

スカッとしたりゾクッとしたり毎回オチが予測できないものばかりで、「この話にはどんなオチが待っているんだろう?」って気になってグイグイ読んじゃうんです。

 

タイトルが『キス・キス』とだけあってか、夫婦を描いた話が多めですね。男女の間に捲き起こる皮肉さがたまらなくて。まあ表紙からイメージするようなラブラブ感は全くないんですけど。

ジャンルは様々なんですが何かしらの「毒」が仕込まれていて、それがなぜかクセになっちゃう。

この皮肉溢れる世界観を味わってほしいなー!

もし読んでみて「ロアルド・ダール好き!」となった方はぜひ『あなたに似た人〔新訳版〕 I 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕』も読んじゃいましょう。『キス・キス』と同じくダールの持ち味が全面に押し出された名作短編集です。かの有名な『南から来た男』も収められていますよ(*´∀`*)

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

    • わ た し も !
      『豚』のまさかの展開には笑うしかないですよね。笑
      まさに「ええ?!そうくるの?!」という感じ。完全にダールにやられました。。

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