主人公のジョー・パイクは現在私立探偵として生活していますが、もともとは海兵隊、そして警官といった経歴を持っています。
そんな彼はある日たまたまイザベルという女性の誘拐現場に遭遇します。
持ち前の身体能力でイザベルを救うことに成功したジョー・パイク。
一件落着かと思いきや、誘拐犯はあっけなく釈放されてしまいました。
イザベルはまた自分の身に危険が及ぶのではないかとジョー・パイクに連絡します。
その後失踪してしまったイザベル、釈放された直後に殺害された誘拐犯…。
ジョー・パイクは事件の真相を追うことになりました。
アクション映画さながらのスリリングな展開
主人公のジョー・パイクは無口でクールな性格ですが、物語は彼のようにクールには進みません。
ド派手なアクションシーンや血なまぐさい描写が続き、まるでアクション映画を見ているような手に汗握る展開が続きます。
情景が浮かぶ丁寧な描写でありながら読者を飽きさせることがないので、ミステリー小説の重たい展開が苦手、海外作家の翻訳ものが苦手という方でも無理なく読み進めることができるでしょう。
アクション映画や海外のクライムドラマが好きな方にもおすすめです。
有名なものはほとんど見てしまったという方は、今作を読めば新たな発見があるかもしれません。
クールな台詞やロサンゼルスの街並みの描写などを楽しみながら読めるというのも今作の魅力の一つで、これを楽しみにシリーズを読んでいるという読者も多いです。
主人公のジョー・パイクもしっかり魅力的に描かれており、男性でも女性でも読後には思わず「かっこいい!」と叫びたくなってしまうことでしょう。
彼に任せておけば絶対に勝てると思える安心感も与えつつ、始終「どうやって勝つんだろう?」と気になる展開にも注目です。
その他の今作のみに登場するキャラクター、シリーズを通して欠かせないキャラクターもユニークで読んでいて飽きることがありません。
次々に切り替わる視点が緊張感を倍増させる
作者のロバート・クレイス氏は主に一人称での小説を得意としていましたが、今作は三人称で物語が進んでいきます。
主人公のジョー・パイクだけでなく彼の相棒エルヴィス・コール、そして犯人と次々に視点が切り替わることで、よりメリハリや緊張感のある雰囲気に仕上がっています。
連保保安官視点から見たパイクやコールの印象が読めるのも嬉しいポイント。
自分の信じる道をまっすぐに歩くパイクたちと、彼らと適度に距離を取りつつお互いにできることを進めていく連邦保安官たちにも胸が熱くなります。
さらに敵からの視点でも物語を読めます。
やっていることは悪いことでも彼らなりの事情があったりトラブルがあったり、憎み切れないような内容になっています。
先述したようにアクション映画やクライムドラマのような熱い展開が楽しめる今作ですが、この多視点の切り替わりがより物語にスピード感を与えています。
主人公たちがかっこいいのはもちろん、働く立場である読者なら敵や保安官などのキャラクターにも感情移入しながら楽しんで読み進めることができるでしょう。
人気シリーズ最新作がついに日本語訳に
今作はジョー・パイクを主人公にしたシリーズものの5作品目です。
もともとは彼の相棒であるエルヴィス・コールを主人公にしたシリーズが人気を博し、現在でもファンが多いです。
ノリが軽くチャーミングな印象のあるエルヴィス・コールと、無骨でハードボイルドなジョー・パイクとのやり取りや信頼関係が見ていて気持ちよく、バディものとしても読者に愛され続けています。
いずれのシリーズにもそれぞれ魅力がありどちらも高い人気がありますが、日本語訳されていない作品も多いです。
かつて海外のおもしろい作品を数多く発掘、日本語訳してきた出版社が倒産してしまったことによって未だに翻訳されていないロバート・クレイス氏の作品がたくさんあります。
実際にジョー・パイクシリーズが日本語訳されたのは2011年の第一作目「天使の護衛」依頼10年ぶりであり、その間に3作が発表されています。
シリーズの間が抜けているので登場人物の細かい設定や描写を追い切れないという声もあり、他作品の日本語訳を望む声も多いです。
今作を読んでおもしろいと感じたら、ぜひ第一作目の「天使の護衛」やシリーズの元となったエルヴィス・コールシリーズもチェックしてみてください。
すべての作品が地続きになっているので、さまざまな発見を楽しみながら読むことができます。
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