天祢涼先生の話題作、涙が止まらないと話題の作品、『希望が死んだ夜に』をご存知でしょうか。
天祢先生は2010年『キョウカンカク』でデビューし、第43回メフィスト賞を受賞した作家で、のちにこの『キョウカンカク』は「美夜シリーズ」として人気になっています。
そんな天祢先生の作品である本作は、ミステリ特有の謎解きやどんでん返しなどもありながら、あまりにも切なく胸を打ち、涙なしには読めない・語れないと話題になっています。
ミステリ作品でこのような感想を持つことはあまり多くないので内容が気になりますよね。
そんな本作『希望が死んだ夜に』をこの記事では詳しくご紹介いたします。
天祢 涼『希望が死んだ夜に』のあらすじ
舞台は神奈川県川崎市。
犯人は14歳の女子中学生・冬野ネガ。罪状は同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で警察に逮捕される。
しかし、ネガはしっかりと犯行を認めたものの、その理由を一切語らなかった。
そんな事件を解決しようとする刑事の一人、県警捜査一課の真壁巧。
彼は、犯行を認めつつも動機を語らないという、いわば『半落ち』と呼ばれるどっちつかずな容疑者の状況に全く納得していなかった。
そこで、さらにこの事件を詳しく調べるべく、生活安全課の女性刑事である中田蛍とともにバディを組んで捜査を続ける。
そんな犯人であるネガは、一般的に言うところの貧困層の過程だった。
父はおらず、母親の映子と川崎市登戸にあるボロアパートに暮らしている。
ただでさえ母一人子一人で支え合っていかなければならないのに、母はあまり働かない。そして生活保護も断られた。
中学生であるネガは、二人で生活するためのお金を稼ぐすべもなく、また頼りになる大人やアテも全くない。
そんなネガの人生を変える出会いがあった。
ストーリーの幕間に容疑者目線の回想も用意された、現代日本の貧困層が直面する社会問題にも言及した話題作です。
私たちに一体何が出来たのか。謎を解いた先のむなしさ、切なさを是非感じていただけたらと思います。
天祢 涼『希望が死んだ夜に』口コミ【読者の感想】
それではここで実際にこの本を読んだ方の感想や口コミをご紹介いたします。
『14歳の女子中学生・冬野ネガの抱える貧困が余りに絶望的で、私の心を抉りました。
貧困の辛さを私は今まで分かっていなかったのかと愕然としました。
貧困を嘲笑う人にこそ読んでほしい一冊であると、私は胸を張って薦めたいと思います。』
『ネガとのぞみにとって、2人で好きなことをしている数時間が、唯一の希望の時間だったんだろうと思いました。
ですが、そんなささやかな居場所さえも奪われたとき、少女達の心が砕けてしまったのだと思います。2人の少女の前向きに生きようとして生きれなかった哀しさが溢れていて、涙が止まりませんでした。
希望が死んだ夜にという意味に気がついたとき、どうしようもないやるせなさを感じました』
『ミステリだけではない、人間の奥の暗い部分を突き、読み終わった後考えさせられるようなヒューマンドラマのような作品でした。
自然と涙がこぼれ、久々に素晴らしい作品に出会えたと感じています。
今私たちが普通に生きていること、何も不自由なく生活できていることがどれだけありがたいのか、そしてその中にあるミステリがどれだけ絶望的なのか、本当に様々な思いが駆け巡るような話題作だと思います』
『14歳の少女の周りがあまりにも冷たすぎる。暗すぎる。
私が同じ立場だったら逃げ出したくなるに決まっています。
ミステリなので解決するためのいろいろな謎解きは楽しみつつも、現代社会の問題にぶっこんでいくスタイルが、普段ふたをしている私たちの心を開けた気がします』
どの方も心を動かされた、涙がこぼれたという感想になりました。
しっかりとかみしめつつ、読み終わった後のほの悲しい余韻も含めての作品を是非読んでみてください。
読了後そのタイトルの意味を知り、胸が締め付けられる作品
この作品は、ミステリなのですが、ほかのミステリのようにドキドキワクワクそわそわという感覚ではなく、味のしなくなったチューイングガムをそれでも噛み続けるような苦しさと切なさを感じます。
読み終わったあと、この本のタイトル『希望が死んだ夜に』の真の意味を知り、まるで何もない海に落ちて沈んでいくような、不思議で切なく、しょっぱい味がすること請け合いです。
また、舞台である川崎市にある登戸という土地ですが、小田急線とJR南武線が交差するベッドタウンであり、藤子不二雄ミュージアムがありドラえもんの装飾が施された利用者の多い駅があります。
しかし、都会というほど都会でもなく、いい意味で中途半端だからこそリアルなストーリーになっているのでしょう。
そんな少しだけ華やかにも感じるこの街で、貧困状態の少女が犯罪を犯す。その光と影のコントラストが見事な作品です。
幕間のネガの気持ちを追体験するような回想シーンや、真相に迫るにつれてどんどんと犯行の側面が見えてくるようになるにつれて、犯罪は良くないこととわかりつつも、ネガに感情移入してしまい、特にネガと同年代の子供を持っている親世代は涙腺崩壊する人も。
私も読み終わった後、どこかでボタンの掛け違いをなくすことができなかったのか、彼女が幸せに暮らす方法はなかったのかとただぼーっと考えてしまう時間が過ぎていきました。
生活保護の打ち切り、貧困層など、今の日本が抱える『本当に貧しくて困っている人が見えづらい』という社会問題を考えながら、切ないラストに向かっていく。
もちろんミステリとしてもストーリーが緻密に組み込まれていますので、是非一度この不思議で考えさせられる作品を読んでみてください。
コメント
コメント一覧 (4件)
これねえ、発売されてすぐ読んだんですが、anpoさんの表現通り『味のしなくなったチューイングガムを噛み続けてる』感が凄かったです
14歳という年齢、家族の状況、のぞみとの出会い、全ての設定と、そしてタイトルがどこにも救いようのない世界を作っていて、これはひどい…(完成度を褒める意味で)と思いました
なんかもう一度読んでみようかな、とこのブログで思い出しました( ᵒ̴̶̷̥́ _ᵒ̴̶̷̣̥̀ )
こはるさんおはようございます(*’▽’*)
いやほんと、この救いのなさがなんともやるせない、完成度の高い作品ですよね。
私も記事書く前に読み直したのですが、わかっているのにやっぱり辛い感じがありましたもん……。
ぜひぜひもう一度読んでみてくださいな(/ _ ; )
おっ。見た事ある表紙が…
っていうのも「キョウカンカク」を読んで、天袮さんの他の作品を…と思って購入したまま本棚で眠ったままになっている作品です。
いいきっかけをいただいたので近々読んでみようと思います♪
手持ち豚さん。さんおはようございます!
ぜひぜひ読んでみてくださいな(*’▽’*)