第32回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作『デッドマン』で鮮烈なデビューを果たした、河合莞爾(かわいかんじ)さんのおすすめミステリをご紹介させてください。
ほんと面白いんですよ、河合さんのミステリ。
河合さんといえば「鏑木特捜班シリーズ」が有名なんですが、シリーズ以外でもかなりおすすめしたい作品があるんです。
読んでみて!読んでみて!としつこいとは思いますが、まあ、広い心で見てやってくださいな(´∀`*)
1.『救済のゲーム』
全米オープンゴルフ会場で起きた殺人事件を描いたミステリ。河合莞爾さんの作品の中でもイチオシです。
全米オープンの18番ホールで、ピンフラッグに串刺しとなった死体が発見される。インディアン虐殺にまつわる伝承「神の木の祟り」に見立てた殺人と思われるこの事件の真相は。
私はゴルフをやったこともないし興味もなかったのですが、そんなの関係なしにこの作品は楽しめました。
特に、探偵役のゴルファー・ジャックとキャディのティムのコンビがキャラが良い。外国の方ならではのノリとジョークが愉快で、彼らの掛け合いを見ているだけでも楽しいです。
彼らのキャラのおかげでシンプルに「ゴルフ小説」としても面白いんですよ。ゴルフ興味ないのに。不思議。
もちろんミステリー小説としての完成度も高い。文句なしです。シリーズ化してほしい。
北米先住民を虐殺した騎兵隊長が「神の木」に登り、神の怒りに触れ串刺しになった。その伝説が今なぜ再び…?
2.『粗忽長屋の殺人』
古典落語を舞台にしたミステリ短編集。
落語がよくわかんないよ!興味ないよ!という方もご安心を。私もそうでしたが、とーっても面白く読めました。想像以上です。
事件が起きて、「てぇへんだ、てぇへんだ!」と八五郎と熊さんたちが騒いで、話を聞いたご隠居さんが安楽椅子探偵となって解決、という流れ。
有名な落語を元に事件を解決していくのですが、元ネタとなった落語も紹介されていてわかりやすいのも嬉しいですね。
テンポがよく、笑いもあり、気軽に楽しく読めるミステリばかりで、中でも『高尾太夫は三度死ぬ』はかなりの名短編。全体的に見てもバランスのとれた、落語ミステリの名作です。
粗忽者で有名な熊五郎の長屋に怒鳴り込んできた、これまた粗忽者の八五郎。「熊、おめえ浅草の浅草寺で死んでるぞ。この粗忽者め、死んだのに気がつかねえで帰ってきやがったな?」
3.『デッドマン』
河合莞爾さんの作品ではこれが一番有名でしょう。「鏑木特捜班シリーズ」の1作目です。
遺体の一部を切り取り持ち去る、という猟奇連続殺人事件が発生。
その後、「それらの一部をつなぎ合わせて蘇った」という〈デッドマン〉から警察に連絡が届く。
〈デッドマン〉は、本当に死体をつなぎ合わせて作られた人物なのか……。
「身体の各部位を組み合わせ、一人の人間を造る」。そんなミステリ小説を、知っている方も多いでしょう。
それもそのはず。だって島田荘司さんの名作『占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)』を元にして書かれた作品なのですから!これだけでワクワクが止まらないですね!
というわけで、『占星術殺人事件』が好きならイヤでも手にとってしまう本作。
占星術殺人事件とはまた方向の違った面白さがあり、サスペンス色が強く文章が読みやすいのも魅力です。
頭部がない死体、胴体がない死体、右手がない死体…。遺体の一部が持ち去られる猟奇殺人事件が6件連続して発生した。
4.『ドラゴンフライ』
前作『デッドマン』を読むと絶対手に取ってしまう「鏑木特捜班シリーズ」の2弾。
ドラゴンフライ(とんぼ)に纏わる事件をチーム鏑木が追いかけます。「とんぼ」がキーワードってどういうこと?、と思うかもしれませんが、実によくできたミステリです。
なかなか壮大な事件になっていくのですが、それを見事に収束させていく終盤の展開はさすが。伏線の回収の仕方も好きです。
前作より読みやすさも増していますし、スピード感のあるストーリー展開で一気読みしてしまうでしょう。
なにより、このシリーズの良さは鏑木班のメンバーの魅力にありますね。第1弾の『デッドマン』でもすでに魅入られていたのですが、今作でガッチリ心をつかまれました。もはや彼らを見ているだけで楽しい。
多摩川の河川敷で発見された猟奇死体。臓器を抜き取られ、黒焦げにされた遺体の下からはトンボのペンダントヘッドが発見された。
5.『ダンデライオン』
またまたやってきた「鏑木特捜班シリーズ」第3弾。まったく、実に愛着のわく鏑木特捜班です。
今回のキーワードは「浮遊死体」と「開放密室」。
廃牧場のサイロで、16年前に失踪した女子大生の死体が発見される。その死体は胸を鉄パイプで貫かれ、まるで空中で殺されたかのようだった。
その後、高層ホテル屋上で殺人事件が発生。その犯人は、まるで空を飛んで逃げたかのように姿を消していた。
ミステリの定番である「双子」の要素が序盤で提示されるので、その「双子」をどう使ってくるのかが気になるポイントになってきます。ひとことで言えば、この双子の使い方、巧いです。
ミステリとしても面白いですが、単純にエンタメ小説として楽しませてくれるのがこのシリーズの良いところ。
今作は鏑木警部補のメンバーの過去を探るストーリーでもあるので、必ず第1弾『デッドマン』から順番に読みましょう。
東京の山間部、タンポポの咲き誇る廃牧場のサイロで、空中で刺殺されたとしか思えない異様な死体が発見された。被害者は16年前に行方不明になった女子大生・日向咲。
おわりに
『デッドマン』をはじめとした「鏑木特捜班シリーズ」で有名な河合莞爾さんですが、シリーズものではない『救済のゲーム』と『粗忽長屋の殺人』ももっと読まれるべき作品だと思うんですよねえ。
河合莞爾さんの作品に、少しでも興味を持っていただければ幸いです(*´ω`)ノ
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは!
こちらで紹介されていて「面白そう」と思ったので、「粗忽長屋の殺人」と「デッドマン」を読みました!すんごく面白かったです(*^^*)
ご隠居と正木さんが、それぞれ素敵でした^_^ 伏線の張り方と、回収の仕方が見事ですねぇ・・・(感嘆の溜息)
「救済のゲーム」と鏑木班シリーズも図書館で予約したので、届くのが楽しみです^ ^
読んだら感心のあまり放心するかも・笑
キツネ子さんこんにちは!参考にしていただきありがとうございます(´∀`*)
河合莞爾さんの作品面白いですよねー!共感していただけて嬉しいです。
そうなんです、伏線の張り方が絶妙で、思わず「はあああ!」とため息をついてしまうほどで。物語そのものも面白く、ほとんど一気読みで。
凄いんです、河合さん。
「救済のゲーム」と鏑木班シリーズも予約していただけたのですね!う、嬉しい。楽しんでいただけたらと思います。そしてぜひ、放心しちゃってください 笑。