あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします!
というわけで新年一発目は、このミステリーがすごい!2019で第1位、本格ミステリベスト10でも1位となった『カササギ殺人事件』です。
アガサ・クリスティへの完璧なオマージュと呼ばれるこの作品、読まずに新年を迎えられるでしょうか。
さあさあ、読みましょうこの素晴らしいミステリを!
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』
名探偵『アティカス・ピュント』の最新作『カササギ殺人事件』の原稿が手に入った。
そのあらすじはこのような感じだった。
1955年イギリス、サマセット州にあるパイ屋敷が事件の舞台だ。
長年働いていた家政婦が死んだことから、全ては始まる。
掃除機のコードに足を引っ掛け、階段から落ちてた彼女の死に何が隠されているのだろうか。
そして、続けて殺されたパイ屋敷の主人の事件で、ピュントは重い腰を上げることになる。
ロンドンで医者から余命を宣告されたピュントは最後の事件解決へと乗り出す。
ピュンとの名推理が光る上巻。原稿の謎に迫る下巻。
同じ作品の中で複雑に絡み合っていく事件たちの衝撃的結末が圧巻の傑作!
虚構が現実を侵食する?!王道でありながら、異色のミステリー!
『実のところ、偶然などというものは存在しないのだ』
上巻P145より
『カササギ殺人事件』はミステリーが好きな人間にも、初めてミステリーを読む人間にも、間違いなく衝撃を与える作品です。
ミステリーが好きな人間ならば、その細やかな推理とトリックに驚いて、途中で手を止めるのが難しくなります。
ミステリーが初見の人は、最初は多く登場する人物たち、その人物たちの抱えているそれぞれの事情に困惑するかも知れません。
一人ひとりの事情をじっくりと追っている内に、『カササギ殺人事件』の世界に取り込まれ気づいたら夢中になってしまいます!
特に見事だったのは、上下巻の使い方です。
賢明な人ならば『カササギ殺人事件』のタイトルが登場する前に、前書きのような部分があったのを覚えていると思います。
これこそ、最初から仕掛けられた罠です。
この前書きをよーく読んで、それから『カササギ殺人事件』の世界に没入しましょう。
きちんと読み込めば、読み込むほど、あとでの驚きが大きくなる、そんな作品でした。
上巻で事件が終わると思ったら大間違いです。この物語はミステリーでありながら、いたる所に事件の種が潜んでいます。
私達はそれに惑わされながら、犯人を見つけるために判断していかなければなりません。
上下巻で2つのページ数を合わせると800近い大作です。
その全てが、収束していく場面に、ワクワクせずにはいられません!
一気に2つの作品を楽しんだ気分になれる!
ミステリー小説の基本的な構造として、最初に事件があって、その後探偵が登場し、その事件を解決します。
いわゆる推理小説の基本的流れでしょう。
しかし『カササギ殺人事件』は、良い意味でこの流れを断ち切っています。
一個の作品でありながら、まるで複数の事件を同時に解いているような気分になります。
徐々にまるで関係のなかったような事柄が、結びつき始めると、もう読む手は止まりません!
上下巻に分けられている長い作品だと言うのに、ちっとも飽きること無く巻末まで読み切れてしまいます。
多くの登場人物がそれぞれ自分の内側に抱えている問題を開け放ちます。
それが作中でも何度も繰り返された「典型的英国人」のようです。
『そうやって、いろんなものを隠していたんです……』
下巻P209より
ミステリー小説でありながら、まるで他人の人生を垣間見ている雰囲気があります。
作者さんの力量で、全ての登場人物が実際に存在しているように感じられて仕方ありません。
現実と虚構の境目を上手く曖昧にさせるトリックがこの小説には多く使われています。
上巻と下巻で、少しテイストの違いを感じるかもしれませんが、一つの作品で二回楽しめると思えば、これ以上のことはありませんよね?
ミステリーに対する意識が変わる作品です!
ミステリの全てが詰まった作品
驚きの構造が散りばめられていながら、全体が王道ミステリーとして、しっかりと描かれています。
難解なトリックが小さな椒子から組み上げられていく様子は爽快です。
何より目を瞠るのは、登場人物の描写でしょう。
多くの登場人物が登場し、そのモデルになった人物も出てきますが、書き分けられているのが流石。
それぞれの人物像に迫ることで、事件だけではなく、人間の本質にまで迫るような内容になっています。
またイギリスの農村を描くように文字で描写してくれています。その精緻な言葉にまるでイギリスへいるかのような気分になります。しかもタイムスリップ付き。
閉鎖的な村で起こる不可思議な事件と、都会的なロンドンで起こる事件。
最初は全く関係の内容に思われた2つの事件が、話が進むに連れて、どんどんと重なり始めます。
虚構の中の虚構、劇中劇としてあらゆるものを上手に使っている作品です。
探偵が浮かび上がらせる、2つの事件が重なる部分を探すことで真実に迫っていきます。
ミステリーの王道でありながら、今まで見てきたミステリーのどれとも違う面白さを見せてくれました。
探偵が自分の死に直面した時、どういった行動を取るか。
ラストまで展開が読めない、まさに傑作ミステリー小説です!
さすがこのミス1位!さあ読まねば!
コメント
コメント一覧 (6件)
あけましておめでとうございます!
ずいぶんとお久方ぶりのコメントになります(マカン・マランの記事などです)
カササギ~話題になってますね★
anpo39さんがコラムを上げていただいたのをみて、俄然読む気になったので、明日早速本屋さんへいって買って読みます\(^_^)/(いつも、購買(読書)意欲そそられる記事ありがとうございます。最近の私の読書はanpo39さんがオススメされたもので構成されてます(笑))
2019.また、健康に気を付けながら、良い読書ライフを送りましょう\(^_^)/
kiriyanさんあけましておめでとうございます!
お久しぶりです!
カササギ話題になってますよね〜、近くの本屋さんでも山積みになってました。
俄然読む気になっていただいてありがとうございます!笑
ぜひぜひ楽しんでいただけたらと思います。
ほんとですか!それはとても嬉しいです、参考にしていただいてありがとうございます!
はい、kiriyanさんもお身体に気をつけて、良い読書ライフを送ってください!(*´∀`*)
日頃から読書の参考とさせていただいております。ありがとうございます!
本書は発売当初から宣伝文句がやたらと大胆で、正直なところ、「またまた大袈裟な…」と思ってました。関係者の皆様、ゴメンナサイ…。ええ、全くもって皆様が正しゅうございました。
この作品はもう、将来的にもミステリーの古典的傑作として長きにわたって愛されることでしょうね。ミステリとしての方向性も、非常に日本人好みだと思いますし、少しでもミステリに興味のある人ならば、無理をしてでも読んでほしいです。この驚きとプロットの美しさを、ひとりでも多くの人と共有したい!
あと、本作でもう一点感動したのが、翻訳についてです。あまり詳しくは申し上げられませんが、本当に翻訳者って天才だと思います。
このコメントを見て、どういうことか疑問に思った方にも是非読んでいただきたいですね!…ともう一押ししておきます。
tamaさんこんばんは!嬉しいコメントありがとうございます!
実は私も正直なところ「またまた大袈裟な…」なんて思っておりました笑
そして読んで驚きました。これは長きにわたって語り継がれる傑作だと。
少しでもミステリに興味のある人ならば、無理をしてでも読んでほしいというお気持ち、すごくわかります!
これは読まなければ損どころではありません!
私もコメントでもうひと押ししちゃいます!
読みましょう!この傑作を!
anpoさんご無沙汰しております。明けましておめでとうございます!
以前どこかの記事で『反乱のボヤージュ』について書きましたが、あれから野沢本を書い直して再読しています。
今日本屋さんでこの本を見かけてすごく気になっていました!他の方のコメントもとても興味深い。ぜひ読んでみますね。
今年もanpoさんのブログを楽しみにしております(^-^)v
ノブさん、あけましておめでとうございます(*´∀`*)
カササギ殺人事件、本当に面白い作品ですのでぜひぜひ読んでみてくださいな!
楽しみにしていただいてありがとうございます!今年も頑張ります!