舞台はスウェーデン。
あたり一面を雪に覆われた病院で目を覚ました主人公は、自分の名前が「サム・べリエル」だということ以外の一切の記憶を失っていました。
病院内の様子から自分が監禁されていることを知ったサムは、なんとかその病院から脱走することに成功。
そして一週間後、サムは北極圏の湖畔で公安警察の潜入捜査官であるモリー・ブロームと再会し、サムの同僚の警部、デジレに会いに行くことに。
デジレからある女性の調査を依頼されたことをきっかけに、サムとブロームは連続殺人事件に巻き込まれていきます。
ただの猟奇殺人だけでなく巨大組織との戦いなどもくわわり、物語は思わぬ方向に進んでいきます。
前作から地続きで巻き起こる連続殺人事件
物語は前作「時計仕掛けの歪んだ罠」から地続きに展開しています。
前作に登場したキャラクターも数多く登場し、当時の役職と現在の立場が変わっていたり、設定の説明が省かれていたりするため、「時計仕掛けの歪んだ罠」を読んでいない方はまずこちらを読んでから本作を読むことをおすすめします。
どうして冒頭で主人公のサムは一切の記憶を失っていたのか、どうして今回のような連続殺人事件に巻き込まれることになったのか、相棒であるブロームとはどのようなきっかけで出会い、信頼関係を築いているのかなど、ストーリーに入り込む上で欠かせないポイントがよくわかります。
今作では超人的な能力を持つ猟奇殺人犯が登場し、物語をより一層ダークな雰囲気に仕上げています。
犯人とサムの因縁や、それに立ち向かうサムの姿など、今作も見どころがいっぱいの一冊です。
ラストで事件そのものは解決するものの、根本的な問題はいまだに謎が残る展開に。
飽きることなく読み進められる分、シリーズを通して読みたくなってしまうこと間違いなしです。
スウェーデンのサスペンス映画や小説が一時期日本でも流行しましたが、今作でもスウェーデンの空気を感じられます。
日本国内や欧米の作品にはない独特の雰囲気を楽しみたい方もぜひチェックしてみてください。
四部構成で次々と展開する物語から目が離せない
今作は、前作「時計仕掛けの歪んだ罠」と同じく四部構成になっています。
徐々に事件の全貌が明らかになりつつ、次々に新たな問題が起きるので、長い小説ではありますがしっかり読み込む必要があるでしょう。
一部では前提とされていたことが二部では覆され、二部で進められていたことが三部では無意味なものとなり…といった繰り返しで、読者がどんなに先を予測してもいい意味で裏切られてしまいます。
ハラハラドキドキ感も楽しみつつ雪の降りしきるスウェーデンで起こる事件を追いましょう。
スウェーデンの地名や人名に馴染みがない方にとっては最初は少し苦戦するかもしれません。
ラストまで集中力を切らさず読むことが大切です。
ですが作者のアルネ・ダール氏は物語全体を引っ張る力、引き込まれる文章力や場面転換の描写力などが非常に優れており、だれることなくラストまでサムやブロームと一緒に駆け抜けることができるでしょう。
ラストになってようやく事件の全貌が見えてきて、さらにシリーズ全体を覆うヴェールも少しずつ剥がれていきます。
このシリーズはまだまだ続くことが予想されていますので、じっくり読み進めつつ、重要なポイントを忘れないようにして次巻に進むことをおすすめします。
スウェーデン発の人気シリーズが日本上陸
作者のアルネ・ダール氏はスウェーデンで活躍している小説家です。
前作「時計仕掛けの歪んだ罠」で多くの読者に衝撃を与え、一躍世界中で注目を集める作家となりました。
どんなにしっかり読み進めていても裏切りに次ぐ裏切りを見抜けない、物語の説明をしようとすると何を話してもネタバレになってしまう、続きが気になって仕方ないページターナー本などさまざまな賞賛の声が集まっています。
そして発表されたのが今作「狩られるも者たち」です。
前作のラスト直後から物語が始まり、休む間もなく怒涛の展開が繰り広げられていきます。
このシリーズはべリエル&ブロームシリーズとしてスウェーデンではすでに第五弾までが発表されています。
日本では二作目となる今作までしか翻訳されておらず、次巻の出版を待ち望むファンの声も多いです。
物語の展開やキャラクター同士のつながりなどが非常に複雑になっているので、次回作を読む前にはもう一度本作か、前作から通して読み直すことをおすすめします。
それまで本棚に大切にしまっておきたくなる一冊です。この機会にぜひ!
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