愛してやまないスティーヴン・キングの名作短編集『神々のワード・プロセッサ』。
今作は『スケルトンクルー(骸骨乗組員)』というキングの短編集を三冊に分冊したものの二冊目。
一冊目『スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)』
二冊目『スケルトン・クルー〈2〉神々のワード・プロセッサ (扶桑社ミステリー)』
三冊目『スケルトン・クルー〈3〉ミルクマン (扶桑社ミステリー)』
この中だと『霧(ミスト)』が収められている一冊目が有名なのですが、今回はあえて二冊目。
なぜかって、収められている短編がどれも素晴らしいからです!
全て好きなのですが、今回はその中でも特に好きなお話を三つだけご紹介。
特別にスティーヴン・キングが好きというわけでない方でも、純粋に「面白いホラー小説が読みたい!」という方はきっと楽しんでいただけるはずです。
ほんっっと名作揃いですので。
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『神々のワード・プロセッサ』
かつて小説家を目指していたリチャードは、機械いじりが大好きな甥のジョナサンをとても可愛がっていた。
しかしジョナサンは、交通事故により十五歳という若さで亡くなってしまう。リチャードに残されたのは、冷え切った家庭だけだった。
ところがある日の誕生日、リチャードはジョナサンお手製のワードプロセッサを発見する。リチャードのために、ジョナサンが一生懸命作ってくれていたらしい。
リチャードはもともとワープロが欲しかったが、とても高価なものなので手が出せなかった。その事をジョナサンは知っていたのだ。
なんていい子を亡くしてしまったんだろう。
リチャードは悲しみと嬉しさに感情を揺さぶられながらも、ワードプロセッサのキーを叩く。そして気がついた。
このワードプロセッサにはとんでもない力がある、と。
この表題作、ホラーであるとともに「奇妙な味」としても絶品。
亡くなった甥が手作りしたワードプロセッサが不思議な力を持っていた、という物語なわけですが、さすがキング。読ませる力が半端ではないですね。
ワードプロセッサの力に気がついてしまったリチャードは、どのような行動に出るのでしょうか。後味は恐ろしいながら、ついニヤリとしてしまう。
『ジョウント』
ジョウントとは、いわゆる「テレポーテーション装置」。
今や世界中で利用されており、マーク・オーツ一家はこれからジョウントで火星に移住するところだった。
ジョウントは物質的には一瞬の事のように見えますが、精神的には「永遠」とも言える時間を体感してしまう恐ろしい装置。
そのためジョウントを使う際は、特殊なガスを吸って意識のない状態にしないといけません。
逆に意識がある状態でジョウントすると、発狂して死んでしまうという(かつて実験として意識がある状態でジョウントした囚人は、信じられないくらい年老いたようになり「あそこには永遠がある」という言葉を残し亡くなった)。
というような事実を、待ち時間のあいだに子供たちわかりやす〜く説明するマーク。
さて、ようやく順番が回ってきてマーク・オーツ一家はジョウントする事になりますが……。
まさに名作SFホラー。
メチャ怖です。結局こういうのが一番恐ろしかったりするんですよね。後味の悪さが尋常ではありません。一度読んだらまず忘れられないです。
SF好き、ホラー好きな方は必見。
『猿とシンバル』
ハル・シェルバンは、息子のデニスが屋根裏部屋から「猿のおもちゃ」を見つけ出した時、驚愕する。
見た目は普通の、シンバルをシャンシャンと鳴らす猿のおもちゃ。でもそれは、呪われている。猿がシンバルを鳴らすたび、身近な人が亡くなっていくのだ。
その悪夢のような出来事を、ハルは子供のころに体験した。
だからあの時、確かに井戸の底に投げ捨てたはずなのだ。
その猿が、なぜ屋根裏部屋から出てくる?
これは、家族を守るために戦う父の物語。
捨てたはずの呪われた人形がいつの間にか戻ってくる、というまさに王道とも言えるホラー設定をキングが書くとどうなるのか。
ただ怖いホラーではなく「読ませる」ホラーなのがキングの魅力ですね。
ちなみに「猿とシンバルのおもちゃ」というと、筒井康隆さんの『母子像』という短編が最高に最悪なので読んでいただきたいです。
この『母子像』も猿とシンバルのおもちゃが登場してくるのですが、読んだ事を後悔するくらいの後味なのです。
今だと『異形の白昼 恐怖小説集 (ちくま文庫)』という作品集で読む事ができますのでぜひ一読を(この作品集自体もとても面白い)。
キングの『猿とシンバル』と筒井康隆さんの『母子像』のおかげで、猿のおもちゃがトラウマになったのは私だけではないはず……。
Amazonにありました。こっわ!!
おわりに
先ほど改めて読んだんですけど、やっぱり何度読んでも面白いですわ。
欲を言えば
①『スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)』
②『スケルトン・クルー〈2〉神々のワード・プロセッサ (扶桑社ミステリー)』
③『スケルトン・クルー〈3〉ミルクマン (扶桑社ミステリー)』
の三つともバッチリ面白いので読んでみていただきたいのですが、各短編の平均点でいうなら『神々のワード・プロセッサ』がやや高いように思えます。
ホラーなお話がお好きであれば、読んでおいて間違いなしですよ〜( ゚∀゚)

コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは!扶桑社ミステリーのキングの短編集、全部持ってます。キングの短編集、全部面白いですよね。私は他の短編集の「浮き台」「おばあちゃん」が好きなのですが、「神々のワード・プロセッサ」も素晴らしいですよね。古いのに、鳥肌が立つくらい怖い!特に「ジョウント」はSFも入ってて私も好みです。何度も読み返しています。
りかさんならきっと読んでいると確信していました!笑
扶桑社ミステリーのキング短編集はホント名作ぞろいですよね。
「浮き台」「おばあちゃん」!ああ〜良いですねえ。ミルクマンに収録されているやつですよね〜。私もミルクマンの中だったらその二つがすごく好きです。何と言ってもあの後味。
私もジョウントが大好きで、何度も読んでいるのに毎回「うわああ。。」ってなってます。なんなんでしょう、あの魅力(´∀`*)