まあ、買ってしまいますよね。金欠なのに。
このたび綾辻行人さんの『十角館の殺人 限定愛蔵版』が発売となったわけですが、
・欲しいけど、4000円近くするしなあ。
・もうすでに、十角館は読んでいるしなあ。
などと購入を迷われている方に、朗報です。
いいですか、落ち着いて聞いてください。
断言しましょう。
これは、
買うべきです。
墓場まで持っていくレベルでした。永久保存のやつです。
『十角館の殺人 限定愛蔵版』
まず、『十角館の殺人』が素晴らしいのは言うまでもありません。ついこのあいだ再読したばかりなのに、今回また読んで「やっぱ最高だな」と改めて感じた次第です。
ではなぜ今回『限定愛蔵版』をおすすめしているかと言いますと、愛蔵版の特別付録として33名の豪華執筆陣によるエッセイ「私の『十角館』」が別冊で付いているからですよ。
このエッセイ集が、そりゃもう十角館好きにはたまらないもので、皆さんの十角館に対する想いが凝縮されているとんでもない書物なんです。
その作家さんたちとは、
1.青崎有吾
2.朝霧カフカ
3.我孫子武丸
4.綾崎隼
5.有栖川有栖
6.伊坂幸太郎
7.乾くるみ
8.井上真偽
9.太田忠司
10.恩田陸
11.喜国雅彦
12.北村薫
13.北山猛邦
14.周木律
15.白井智之
16.高田崇史
17.辻村深月
1.西澤保彦
19.似鳥鶏
20.一肇
21.法月綸太郎
22.初野晴
23.はやみねかおる
24.東川篤哉
25.古野まほろ
26.麻耶雄嵩
27.道尾秀介
28.皆川博子
29.宮内悠介
30.宮部みゆき
31.山口雅也
32.米澤穂信
33.詠坂雄二
ですよ。
いやいやいやいや。豪華すぎかよ!!( ゚∀゚)
と笑ってしまうくらいのお方たち。
まず、こんな豪華な作家さんたちが普通にエッセイ書いたって買うじゃないですか。
これだけの作家さん達が揃うことなんて滅多にあるもんじゃないし。
それでいながら、みなさんが『十角館の殺人』という同じテーマについて書いていらっしゃるんですから、こりゃ読まずにはいられないというものですわ。
みんな大好き『十角館の殺人』
というわけで、そのエッセイ集をちょっとだけ見てみましょう(´∀`*)
青崎有吾
僕らが生まれたときすでにそのムーブメントは始まっていて、物心つくころには一大ジャンルへと成長していました。書店にはいつでも「本格」の二文字があふれ、魅力的な作品に次々と出会うことができました。
ムーブメントの夜明け前、本格ファンがどういう気持ちだったのか。何を思い、何を語り合っていたのか。僕らは知りません。しかしそんな僕らにも、世代を超えて共感できるものが一つあります。『十角館の殺人』を読んだときの衝撃です。
P.16より引用
平成のエラリー・クイーンと呼ばれる青崎有吾さん。
十角館の殺人は世代を超えて、多くの人に、生涯忘れることのできない衝撃を与えたのです。
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有栖川有栖
『十角館の殺人』は発売日に購入してすぐに読み、一ミステリファンとして「こういうのが読みたかった」と快哉を叫んだ。と、同時に、読後、これほどにもやもやした本はない。もやもやとも違うか。何と表現したらいいやら……。
P.20より引用
十角館が登場したときの、有栖川さんの想いが綴られています。
なんかね、涙が出てきてしまうよ。
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太田忠司
でもその本が、すべてを変えた。自分よりひとつ下の若者が長編の本格を書いてデビューした。その事実に震えた。その場で購入し、貪るように読んだ。そして打ちのめされた。『Yの悲劇』や『獄門島』を読んだときと同じような衝撃を受けた。本格は時代遅れなんかじゃないと確信した。
P.24より引用
当時28歳、会社勤めをしながらショートショートを書いていた太田さんを変えた一冊の本。
白井智之
ぼくは両親に隠れてこっそり『十角館の殺人』を読んだ。家族が寝静まった深夜、懐中電灯で部屋を照らし、小さな物音に怯えながらページを捲ったのを覚えている。あのセリフを読んだ瞬間、ぼくは興奮と罪悪感と眠気でぐちゃぐちゃになった頭で確信した。自分は大人向けの恐ろしい快楽に手を出してしまった。もう後戻りはできないーー。
P.30より引用
そうなんです。この快楽を知ってしまうと、もうこの世界から抜け出すことはできません。
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高田崇史
そんなとき風の噂を聞いて手に取ったのが、綾辻さんの『十角館の殺人』だったのです。それまでは真面目な薬剤師であったのに、おかげでその日から、推理小説の世界に回帰して(道を誤って)しまったのです。
P.31より引用
やはり『十角館の殺人』という書物は、人生を変えてしまうほどの影響力を持ちます。
辻村深月
もし、今、読んだことを忘れて未読の状態でもう一度、どれでも好きな本を読めるとしたらーー。
ミステリ好きなら、一度は夢想するであろうこの質問。問われたら、『十角館の殺人』を選ぶ人もきっと多いと思う。かく言う私も長らくそう答えてきた一人だ。
しかし、今はこうも思う。
小学六年生のあの日、『十角館の殺人』を読んでいなければ、私は、今、間違いなく、ここにいない。
P.32より引用
『十角館の殺人』がなければ、作家・辻村深月は存在していなかった。
『スロウハイツの神様』も『名前探しの放課後』も『ぼくのメジャースプーン』も『かがみの孤城』も誕生しなかった。
……本当にありがとうございます!綾辻行人さん!十角館の殺人、バンザイ!
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西澤保彦
私にとって『十角館の殺人』とは、ひとことで言って「西澤保彦なる引き篭もりのニートを職業作家へと導いた作品」という位置づけになろうかを思う。
P.33より引用
『七回死んだ男』や『人格転移の殺人』、なにより「匠千暁シリーズ(タック&タカチシリーズ)」が読めるのも十角館のおかげなのか……。
はやみねかおる
教師になるときに、物語を書くことを封印しました。でも、「子供向けの話なら、いいんじゃないかな」と童話を書いていました。それが、『十角館の殺人』を読み、「やっぱりミステリーが好きだ!」と児童向け推理小説を書き始め、いつの間にか専業作家になっていました。
P.38より引用
ジュブナイルミステリで同じみのはやみねかおるさんも、十角館の殺人に影響されていた。
皆川博子
三十年前。ミステリーはリアリズムの鎖に雁字搦めになっていました。その鎖を、アンドロメダを救ったペルセウスみたいに断ち切った、最初の一撃が、綾辻行人さんの『十角館の殺人』でした。
P.43より引用
好き。皆川さん好き。
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史上最高のエッセイ集かもしれない
エッセイは1人の作家さんにつき1ページと非常に短いのですが、それぞれの作家さんの想いがギュッと詰まっていました。
本当にみなさん面白いエッセイをお書きになるなあ、と、読んでいる間ニヤニヤが止まりなくて大変。こんなの何ページでも読めてしまうよ。
このほか、綾辻行人さんによる「三十年目の想い」も数ページに渡って書かれていました。
『十角館』に出会い、作家を目指した方たち。
『十角館』の登場により、運命を変えられた方たち。
『十角館』を読んで、ミステリの世界へとのめり込んでいった方たち。
すでに作家さんだった方から見た、『十角館』の登場による影響力と衝撃。
それぞれの思いが、余すことな綴られています。
『十角館』を読んで人生が大きく変わった方たちの多さに、これがどれだけの作品であったかを思い知らされるのです。
面白いのはもちろん、このエッセイ集を読むと「ああ、私はなんて素敵な時代を生きているんだ」「ミステリを好きで良かった」と幸福な気分を味わえました。
ああ、もう何も言うことはありません。
『十角館の殺人』を好きな全ての方に、このエッセイ集を読んでほしい……。

コメント
コメント一覧 (8件)
何度も読んだ本に4000円かけるのはもったいかなと思いつつも、高級感溢れる装丁に惹かれて購入しました。エッセイがあることは知っていたのですがどの人が書いているかまでは把握していなかったため、著名な作家が勢ぞろいで仰天しました。流石、新本格ミステリの金字塔ですね。出来ることなら十角館に関する記憶を消去して、もう一度あの衝撃を味わいたいです。
そうなんですよ!4000円かあ、きついなあ、と思いつつも、十角館ファンとしては買わずにはいられず。
ですが本当に、このエッセイ集を読むだけでも買って良かったと思いました。豪華すぎますよね。
わたしも、記憶を消してもう一度読みたい小説ナンバー1かもしれません。あの衝撃を二度と味わえないのかと思うと、少し悲しくも思います(ノω`*)
なんですと?!
十角館は名作です。間違いなく‼
そして、なんですか。その付録、、。
付録ではなく、今回はむしろそちらもメイン。
ひとりで鼻息荒い変質者みたいになってます。
え!ちょっと、やばいんですけど。え、、、
やばいんですけど(2回目)
そうなんですよお!やばいんですよお!
いやあ、控えめに言って「神エッセイ集」でしたよ。。
本当にこっちがメインといってもいいくらいに。。
わたしも、読んでいる最中は完全に変質者でした。ウヘへ……とか思いながら読んでいました。笑
新本格の象徴ですもんね。
入り口にして深奥というか。
先陣を切った功績は計り知れません。
今も尚 政治家よりも 執拗に
僕を騙すは 綾辻行人
ですね。
この作品が、どれだけの素晴らしい作家さんと作品を生み出したことか。
おおお、見事な短歌。。(゚∀+゚)
不朽の名作。新本格派のフロンティア。全てがこの「十角館」から始まったと言っても過言ではない。
誰が何と言おうと、どれだけ時代が変わろうと、全ミステリーそして全推理小説の頂点に君臨するのが本作です。
おっしゃる通りでございます。
この作品によって、どれだけ多くの人がミステリの世界へとのめり込んでしまったことでしょう。。
まさに新時代の幕開け。スバラシ。