似鳥鶏『叙述トリック短編集』-叙述トリックがあるとわかっていたって騙されるのだ

 

この短編集は『叙述トリック短編集』です。収録されている短編にはすべて叙述トリックが使われておりますので、騙されぬよう慎重にお読みくださいませ。

P.6より

 

なんと「叙述トリックが使われている」と最初から断言している超斬新な短編集が登場しました。

似鳥鶏さんの『叙述トリック短編集』です。

最初に述べてしまうのがなぜ凄いかって、そもそも「叙述トリックが使われている」ということが最初からわかっているというのは膨大なネタバレになっているんですよね。

私も以前『【名作選】’’叙述トリック’’が凄いおすすめミステリ小説50選』という記事を書きましたが、「叙述トリックが使われている」ことを最初から知っていると警戒してしまうし、驚きが軽減してしまう可能性が大なわけですよ。

そこで今作です。

「叙述トリックが使われている」と最初に断言しておいて読者を騙せるのか?という読者への挑戦状というわけです。

実にフェアですね。

そしてワクワクします。

似鳥さんはどんな風に読者を騙しにきてくれるのでしょうか。

そこに挑戦したのが本書です。果たして、この挑戦は無謀なのでしょうか? そうでもないのでしょうか? その答えは、皆様が本書の事件を解き明かせるかどうか、で決まります。

P.10より

1.『ちゃんと流す神様』

詰まっていたトイレが誰も何もしていないのに綺麗に流れるようになっていた、という事件(?)。

総務課のメンバーに「誰かつまりを直してくれた人いる?」と聞いても誰もやっていないっていうんだから不思議な話です。

しかも掃除用具入れにあったモップには使用した形跡がなくって、つまり犯人はよそからわざわざモップを持ってきてつまりを直し、溢れ出た水を掃除までした事になる。

トイレが詰まっていた時間帯にトイレに入ったには3人。でも3人ともすぐに出てきたし、掃除をしている暇なんてなかったはずなのに。

こりゃトイレの神様の仕業か?


うっわ、初っ端から騙されちゃった。

覚悟して読んでいたのに思わず「やられた!」と叫んでしまいました。

悔しいっていうか、ニヤニヤしてしまいますね、この騙されっぷりは。

ていうかこのパターンの叙述トリック、今までに何回も食らっているんですけどやっぱり面白いです。

2.『背中合わせの恋人』

ある日突然送られてきたSNSの紹介メール。

「あなたを友達だと言っているユーザーがいます」みたいなアレだ。

普段なら気にもしないが、まあ暇だったので、その人のプロフィールやブログなどを見ていた。

ブログには綺麗で魅力的な写真がアップされており、見ているうちに、この人はどんな人なんだろうと気になっていた。

しかも、写真をよく見ていると、どうやらこの人は自分と同じ大学に通っている可能性が出てきた。

もしかしたら学校で会えるかもしれない。

これは、恋だった。


やられた!っていうか甘酸っぱーい!って叫んでしまうような青春ミステリでした。

普通に良いストーリーじゃないですか。

もちろんミステリとしても面白かったです。そうそう、叙述トリックってそういう事ですよねー。

3.『閉じられた三人と二人』

人里離れた山荘で閉じ込められた六人のうち、一人が死体で発見された、という王道のシチュエーション。

山荘に二人でいたところに強盗団四人がやってきて、強盗団の一人が転落死したのだった。

ミスリードがうまい。本当にうまい。これも騙されてしまった。

わずか20ページの短編の中で思いっきりひっくり返してくれる似鳥さんのすごさよ。

『なんとなく買った本の結末』

 

「あ、ミステリ読みました。別紙さん、クイズ出していいですか。私が最近買った本から」

「……何ですか?」

「知らない、なんかマニアックな作者のです。なんか変な名前でした。似島軽だっけ」

変な名前だが作風は平凡だった。

「こないだ本、買いにいって、たまたま平積みしてあったの適当に買ったんです。『刑事 冴島遼』シリーズの最新作とか。知ってますか?」

「いいえ。私も知らない作家です」

「じゃ、その中の短編、私が話すから真相を当てて見てください。クイズです」

P.148より

根岸清が殺害された。

川で釣りをしているところに、上から岩を5個も落とされ、そのうち一つが頭に当たって死んだようだ。

容疑者は三人に絞られたが、どの人物にもアリバイがある。この中の誰かが犯人だとしたら、空を飛んだとしか思えない……。

という作中作を、別紙氏が解いていきます。

いろんなところに明らかに伏線だとわかる伏線が敷かれているのが面白かったですね。

伏線だとわかるんですけど、それがどういう意味をなすのかがわからなくって、最後に真相が明かされるシーンで「そういうことかー!」って一人で納得しまくりました。

4.『貧乏荘の怪事件』

日本人および中国人、韓国人、タイ人、セネガル人、インドネシア人とバラエティに富んだ住人がいる裕明荘(貧乏荘)。

そんな中で李(リー)君の「海参」が盗まれてしまった(海参ってなに?)。

話を聞く限りでは皆アリバイがあり難しそうだが、班員が部屋にあった酒瓶を倒してしまったことをキッカケに事件に光がさす。

 

これは真面目にミステリとして面白かったし、キャラクターも良かったし、トリックもしっかりしてた。

一番好きかも。

5.『ニッポンを背負うコケシ』

監視下に置かれ密室状態にあった巨大コケシ(お種ちゃん)にいつの間にか落書きされてしまった。

犯人はどこから入り、どうやって大量の目鼻を書き込んだ後、どこに消えていったのか。

超巨大(6メートル)なコケシなので普通の身長では顔に手が届くはずもなく、かといって大きな荷物を持った人間の姿も見られなかった。

 

このお話では、まさかまさかの壮大な事実が明らかにされます。

最初から挑戦する気はなく油断していた私は「うおー!そういうことかー!」と一人ではしゃぎました。やっぱ叙述トリック好きだわー。

「あとがき」が一番面白い

これも多くは語れませんが、絶対にあとがきまで読みましょう。

今作は短編集になっていますが、順番をしっかり守って最初から順に読まないと最大限に楽しめません。

最初にあとがきから読んではダメですよ。

この作品を最大限に楽しむためにも、最初の「読者への挑戦状」をしっかり読み込んで理解してから短編にとりかかるのがベストです。

あとがきがしっかり面白いあたり、さすが似鳥鶏ですよねえ。感服いたしました。

結果として、私は「叙述トリックがあるとわかっているのに騙される人間」だということがよくわかりました。ある意味ハッピーです。

ぜひ似鳥鶏さんの叙述トリックに挑戦してみてください。

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2 Comments

キツネ子

こんにちは^ ^
おお!叙述トリック短編集ですか・・・! 叙述トリック好きな私ホイホイですね、了解です・笑
またイラストのコケシも可愛いですね〜部屋に置きたいので持って帰っていいですか?w
叙述トリックって、前もって分かっていても騙されちゃいますよね^ ^; とても興味を持ったので、早速読んでみます!

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anpo39 anpo39

キツネ子さんこんにちは(*´ω`)
叙述トリック好きにはたまらない短編集ですよね!私もホイホイ読まされてしまいました。
こけし、お誉めいただいてありがとうございます笑
そうなんですよー。最初から丁寧に「叙述トリックを使ってます」って言っているのに騙されちゃうんですよね。こんなに気持ちよく騙されるなんてある意味幸せです。 
ぜひぜひ読んでみてください!そして騙されてください!(*´∀`*)ノ

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