『時空旅行者の砂時計』は、オカルト雑誌のライターをしている主人公・加茂冬馬が、病によって瀕死の状態にある妻・伶奈を助けるため、突然届いた謎の声に従って2018年から1960年にタイムトラベルするところから物語が展開していきます。
妻の祖先である竜泉家では、過去に一族が殺害され、加えて土砂崩れによってほとんどが死に絶えたという「死野の惨劇」という事件が起きました。
そして、妻の命を救い、2018年に戻るためにはこの死野の惨劇の真相を解明する必要があります。
残されたタイムリミットは、土砂崩れが起こるまでの四日間。
加茂はその間に館で起こる不可解な殺人事件の真犯人を暴き、事件の真相を解明することが出来るのでしょうか…?というお話です。
方丈貴恵『時空旅行者の砂時計』
『時空旅行者の砂時計』は、ミステリー小説の定番要素であるクローズドサークルと、タイムトラベルというSF要素を組み合わせた作品です。
異なる二つのジャンルが一緒になっている作品というのは、ともすれば片方の要素が薄く、組み合わせた意味があまり感じられない…ということも少なくありません。
しかし、「時空旅行者の砂時計」の場合は物語の謎にしっかりとタイムトラベルが絡んできたり、「過去を変えることで未来に影響が起きないのか?」といったタイムパラドックスに悩まされたりと、SF要素がしっかりと絡んできており、異なるジャンル同士を上手く組み合わせているなぁと感心してしまいました。
「時空旅行者の砂時計」は前述の通り、ミステリーにSFによる独自設定がプラスされた作品です。
SFなどの非現実的な要素が加わったミステリーというのは、独自の設定を把握し、理解するのに労力がかかる場合がよくありますよね。
しかし、「時空旅行者の砂時計」の場合は説明が丁寧なので比較的混乱することも少なく読むことが出来ました。
また、文章自体も多少硬く感じる部分もありますが読みやすかったという印象です。
その他、物語の伏線がどこにあるのか?というのが比較的分かりやすく表現されているため、読んでいる途中から読者自身の頭の中で色々な考察が進み、自分の考察が合っているのかどうか?というのが気になってついつい夢中で読み進めてしまいました。
前述の文章の読みやすさと相まって、一気読みしやすい作品ですね。
ずばり今作は、クローズドサークルやタイムリミットというミステリーの定番要素、そして、タイムトラベルというSF要素がしっかりと絡み合った超良作です。とっても面白かったです。
文章も読みやすく、説明も丁寧なのも特徴です。
物語の舞台となる館の見取り図や、竜泉家の家系図なども記載されており、読者自身の推理をフォローする設計になっているので、作品の世界観にどっぷりと浸って推理をすることが出来るというのも面白かったです。
SFに慣れていない方、逆にミステリーに慣れていない方でも気軽に読むことが出来る作品だと感じました。両ジャンルの架け橋になってくれるような作品だと思います!
謎解きやトリックについてもロジカルでフェアであり、最後まで非常に楽しめました。
・少し変わった本格ミステリー小説を読んでみたいという方
・SF以外のジャンルにも手を広げてみたいという方
・後味の悪い終わり方より、気持ちよく読了したい方
上記のような方々におすすめの作品ですので、気になっていただければぜひ読んでみてください!
さらにさらに、方丈貴恵さんの次作『孤島の来訪者』もとっても面白い特殊設定ミステリなので、そちらも是非チェックしてみてくださいな!

コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは、前々回に紹介されていた門前典之作品も今回紹介の方丈貴恵作品も一度も読んだことないんですよね。anpo39さんのサイトで多岐にわたる作者の作品が紹介され情報がわかり本当に感謝です。2021年は読んだことがない作家作品を少しずつ読んでいけたらいいなって思っています。
リエさんこんにちは〜(*゚∀゚*)
そう言っていただけてとても嬉しいです!
こちらこそありがとうございます、ぜひぜひ読んでみてくださいな!
門前典之作品も方丈貴恵作品も気に入っていただければ嬉しいです。