私立探偵・姫崎智弘のもとに、とある奇妙な依頼が届いた。
報酬は1000万円と超高報酬で、依頼主は情報工学博士の北神伊織。
北神博士によると、依頼日である2018年6月1日は既に千回近くも巻き戻されて繰り返されているという。
唯一時間の戻りを認識できる北神博士は、集まった姫崎らメンバーに、時間の巻き戻しを認識できるようになる錠剤を飲んでループの原因を突き止めるよう依頼する。
1000万円という破格の報酬は、この依頼のためだったのだ。
しかし、いざ錠剤を飲んでループをしてみると、依頼主である北神博士が他殺死体で発見されるという予想外の事態に。
ループはなぜ、誰の手によって起こるのか?
北神博士を殺した犯人は、方法は、そしてその目的とは?
第63回メフィスト賞受賞の作者による、SF×ミステリーの新感覚本格ミステリー!

メフィスト賞受賞作家による奇抜なSFミステリー
時間ループの中に自ら進んで入り込み、その原因を探る──あらすじだけでも興味のそそられる本作の作者は、第63回メフィスト賞を獲得した潮谷験さん。
彼は前作『スイッチ 悪意の実験』で奇抜な設定下での人間の心理をえぐり出し、見事メフィスト賞を受賞、デビューを飾りました。
今回の時空犯の話のミソは、時間ループに“自ら”飛び込んで謎を解いていくという点!
普通の人にはループを感知できないけれど、ある液体を飲めば時間ループを感知できるようになるという設定は斬新です。
報酬の金額も、前作の100万円から今作は1000万円とこれまたパワーアップ。
なぜ時間ループが起きるのか?
誰が時間ループを起こし、殺人を行っているのか?
同じ日を繰り返すことで“前”の殺人は無かったことになり、別の人が殺される……タイムリープの宿命と殺人事件の謎がうまく組み合わさって、読み応えのあるミステリーとなっています。
さらには、同じ日がループする中で、既に起こってしまった事件をどう回避していくのか?という視点も加わり、話に膨らみを持たせています。
SF小説とミステリーどちらも好きな方、奇抜なSFミステリーを読みたい方にはぜひおすすめしたい作品です!
本格的な謎解きでミステリー好きな人に◎
時間ループ×殺人、という文だけ見ると、設定のインパクトだけの小説では?と思う方もいるかもしれません。
しかしこの小説が人気なのは、やはり謎解き部分のストーリーがしっかり練られていて、本格的な推理を堪能できるから!
各登場人物一人一人への丁寧な聞き取りとアリバイの検証、消去法による犯人の特定は、手に汗握る本格ミステリーだと言って過言ではありません!
きちんとしたロジックで最後には「これしかない!」と言えるほどの見事な推理に、相当のミステリー好きでも満足できるでしょう。
デビュー作である前作『スイッチ 悪意の実験』よりもさらに洗練されてパワーアップした文章と謎解きは、ミステリー初心者・ミステリーフリークどちらにもおすすめできます。
SF×本格ミステリーを楽しみたいなら、今この作品がチャンスです!
今ハマっておけばこれからもずっと楽しめるはず!
数々のミステリー作家・エンターテインメント作家を世に送り出してきた「メフィスト賞」を獲得しデビューした潮谷験の、期待の二作目である今作『時空犯』。
探偵の元に届く超高報酬の不思議な依頼、1000回近くも繰り返される時間ループ、そして探偵を呼び出した博士本人が殺されてしまうという異常事態……設定だけを聞いても、読みたくなってくる気がしませんか?
その期待に応えるかのような、本格的で読み応えのある推理とストーリーに、いい意味で裏切られるはずです。
時間ループの理由と仕組みを紐解く『SF小説』としての性格と、本格ミステリーとしての性格が絡み合って、まさに新しい時代の名作ミステリーに名を連ねたと言えるでしょう。
時間ループの謎はかなり科学的に考えられていて、それらを一度だけで理解しきるのは難しいという声も。
しかしそれがまた何回も読み返すという楽しさにつながっているととらえることもできます。
探偵・姉崎を始めとした個性的で魅力あふれるキャラクターも数多く登場するため、途中も中だるみせず読み進められます。
エンターテインメント性あふれるミステリーとして、読者に充実した読書体験を提供してくれる作品です。
今作がデビュー二作目と、まだまだこれからたくさんの作品を発表してくれそうな作者。
今のうちに前作と今作を読んでおけば、この先もずっと読み応えのある作品で楽しませてくれるでしょう。
そんな期待さえも持ってしまいます。
潮谷験の『時空犯』、そしてデビュー作『スイッチ 悪意の実験』、気になった方はぜひ読んでみてください!

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