先日、一色さゆりさんの『神の値段』が文庫化されました!
今作は2016年/第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作。アートの世界を舞台にした美術ミステリーです。
数多くあるミステリー小説の中で、美術の世界を鮮明に描いた作品となるとその数はグッと減ってきます。つまり希少。
そういうわけで私の中では「美術ミステリー」というだけで非常に価値ある作品となるわけですよ。
もちろん私は美術に関しては何の知識もありません。だからこそ、読んでみたくなるのです。ふふふ(* >ω<)=3
一色さゆり『神の値段』あらすじ
主人公となるのは、とあるギャラリーに勤める田中佐和子(たなかさわこ)。偶然知り合った永井唯子(ながいゆいこ)に誘われ、彼女の元で働くことになったのだ。
唯子のギャラリーが扱うのは、美術界の巨匠・川田無名(かわたむめい)。
彼の墨を使ったインクアートは今や世界的な人気を誇り、日本のみならず海外を含め高値で取引されている。
そして、川田無名は誰にも姿を見せないことでも有名だ。テレビなどのメディアはもちろん、人前にはまず姿を現さない。
不在のアーティスト、川田無名。
ニューヨークで活躍していた頃の彼は、長身痩躯の美男子だった。昔は端正な容姿から、美術雑誌のグラビアを飾ることも珍しくなく、当時のポートレイトは今でも目を引くほどである。しかし無名に関する資料はあまり多くは残されておらず、その正体は謎に包まれている。
『神の値段』P.18.19より引用
あまりに姿を見せないので、本当に生きているのか?と疑われるほど。
その中で唯一、無名の正体を知り、直接連絡を取り合うことができるのが唯子というわけだ。
そんなある日、佐和子はギャラリーに運びこまれた絵を見て驚愕する。
それは、とんでもない作品だった。
縦二メートル横三メートルを優に超える紙の上に、圧倒的なパワーを持つ墨の筆致が根を伸ばすように隅々まで覆っている。今にもちぎれそうな緊張した線があるかと思えば、有機的な優しい線もある。それらは泥臭くて瑞々しい。
そう、目の前にあるのは、見たこともないくらい古い作品だった。
『神の値段』P.39より引用
それはまさしく川田無名のもので、制作されたのは一九五九年。この絵がオークションに出れば数十億にもなるかもしれない。
これはとんでもないことになった……!と思ったのもつかの間。
さらにとんでもない出来事が佐和子を襲った。
唯子が何者かに殺されたのだ。
犯人と疑われたのは、こんな状況になっても一切姿を見せない不在のアーティスト、川田無名であったーー。
彼は、今どこに。
アートに世界を覗ける希少なミステリー
『神の値段』の何が良いかって、ミステリを楽しみながら美術の世界を色々知る事ができることですよ。
この「美術の世界を覗ける」っていうのが純粋に楽しいんですよね。もうそれだけで読んだ価値があるってものです。
普段自分の関わることのない世界を楽しみながら体験できる小説、っていうのはやっぱり大好きだ!
アートに関するマーケットの種類、プライマリー・マーケットとセカンダリー・マーケットの違い、ギャラリーとは何をする場所なのか、どのように仕入れるのか、作品が売れたらお金は作家さんとギャラリーにどのように分配されるのか、などなど、そんな美術の知識が小説を通して学べてしまう。ああ、楽しい。
なんでこんなにリアルに描けているかというと、著者の一色さゆりさんご自身が大学の芸術学部を卒業し、その後、東京のギャラリーに勤務していたんですって。そりゃあ凄い。
他にも美術ミステリーといえば、原田マハさんの『楽園のカンヴァス (新潮文庫)』や恩田陸さんの『禁じられた楽園 (徳間文庫)』、望月諒子さんの『大絵画展 (光文社文庫)』などがありますね。
で、この一色さゆりさんの『神の値段』はそんな美術ミステリの中でも抜群の読みやすさを誇ります。美術ミステリって難しそうだな、と感じる方もこの作品なら問題なく楽しんでいただけるでしょう。
『神の値段』のポイント!
①ちょー読みやすい。全然難しくない。
②アートの世界を覗けるのが楽しい。ミステリ部分を省いたとしても「お仕事小説」として面白い。
③殺人は起きますが、ミステリに関してはライトで気軽に読める。
④川田無名は生きてるの?死んでるの?存在するの?誰なの?と最後まで気にさせる謎の魅力。
⑤一色さゆりさんの今後の作品をとても期待させる!
という感じでした。
『このミステリーがすごい!大賞』といえば、先日、第15回大賞受賞作の『がん消滅の罠 完全寛解の謎』も発売されましたので、ぜひそちらもどうぞ(*゚∀゚)ノ
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それでは、良い読書ライフを!
コメント
コメント一覧 (2件)
ああーあーヽ(´Д`;)ノ
また、すごく面白そうぅ。。
私も美術は疎いんですが、読みやすいならいいですね。
ああ~!めっちゃ気になる(笑)
私も美術に関しては全くですが、だからこそいろんな「へえー」が楽しめました♪
ふふふ。。気になってしまったなら、それが読む運命です(笑)。