本作の主人公は、マシュウ(マット)・スカダーという老いた探偵です。
ただ、スカダー自身は既に探偵稼業から足を洗っており、妻のエレインと穏やかな老後を過ごしていました。
そんな時、エレインの知り合いである若い女性のエレンが現れます。
エレンは知り合いの男性からストーカーされており、スカダーにそのことを相談します。
話を聞いたスカダーは危険な事件の匂いを感じ取り、齢80歳の老体に鞭を打って久しぶりの探偵稼業を開始するのでした。
スカダーシリーズ最新作+傑作短篇集で構成された贅沢な1冊です。
ファン待望のスカダーシリーズ最新作
本作は1976年の「過去からの弔鐘」でデビューしたマット・スカダーシリーズの最新作となっています。
スカダーは元ニューヨーク市警の刑事でしたが、とある事件で強盗殺人犯を追跡中、不幸な成り行きによって無関係な少女を射殺してしまい、それがきっかけで警察を辞職してモグリの探偵となった過去があります。
それ以来、様々な事件に対し探偵として向き合ってきた人物なので、シリーズを追いかけてきたファンにとってはたまらない、待望の1冊と言っていいでしょう。
もちろん、スカダーシリーズを読んだことがないという方でも十分楽しむことが出来る内容になっているので、スカだーシリーズファン以外の方にもオススメです。
むしろ本作から入って過去のスカダーシリーズに対して興味を持っていただければ幸いに思います。
年老いた探偵だからこそ出せる味
本作の主人公は先にもお伝えした通り、齢80歳を超えた老探偵のマット・スカダー。
推理小説の主人公というのは若くて才能溢れる名探偵というのが多いと思いますが、本作はまずその主人公観からして大きな違いがあります。
スカダーは老体ということもあって膝の痛みで素早く動くことも出来ず、簡潔で分かりやすい話し方も出来なくなってきています。
しかし、そんな身でありながら1人で地道な捜査を続けていきます。
かつては荒事や情報収集を他の人に任せるなどチームとして連携して動くこともありましたが、今回は完全に1人です。
その万事トントン拍子に進まない描写が他の推理小説にはない味わいを演出していると言っていいでしょう。
身体的なハンデを背負ったスカダーが、過去に培った経験など老人ならではの武器を元に真相を追っていく様子は必見です。
推理小説好きな方には是非読んでほしい1冊ですね。
1冊で2度おいしい短編集付き
「石を放つとき」は合計500ページ以上にも上る大ボリュームの1冊となっていますが、それもそのはず。
本書は新作である「石を放つとき」と未翻訳であった短編集の「夜と音楽と」の2つが収録されています。
長編である「石を放つとき」を読破した後、カタルシスと共に「これで終わってしまったのか…」という若干の寂しさを感じてしまう方もいると思います。
そんな時さらに短編集のおまけがついているというのは非常にありがたいですよね。
また、「石を放つとき」を読んでいてちょっと疲れてきたという時に、気分転換に短編集に目を通すというのもいいでしょう。
長編小説を読むのにあまり慣れていないという方にとっても嬉しいですね。
人によって様々な楽しみ方が出来ますし、何より1冊でたくさんの物語を味わうことが出来るというのが魅力です。
何とも言えない味わいを残す傑作
「石を放つとき」は齢80歳を超えた老探偵であるマット・スカダーが、ストーカー被害に悩む女性の相談を受けたことで危険な事件の匂いを感じ取り、老体に鞭を打って事件の解決に挑むという推理小説です。
本作は1976年に生まれたマット・スカダーシリーズの最新作となっており、昔からシリーズを追いかけてきたファンにとっては待望の1冊と言っても過言ではありません。
ただ、シリーズのファンはもちろんのこと、スカダーシリーズを読んだことがないという方でも楽しめる作品に仕上がっています。
推理小説好きな方には総じてオススメ出来る1冊です。
また、通常の推理小説と違って主人公が老齢の男性というのも大きなポイントです。
老齢で身体的なハンデがあるマット・スカダーが、経験を武器に少しずつ事件の真相に迫っていく展開が妙な味わいを感じさせます。
一風変わった推理小説を望んでいるという方にもオススメです。
その他、本書は新作長編である「石を放つとき」と短編集である「夜と音楽と」の2つが収録されているので、1冊で何度も楽しむことが出来るというのもポイントです。
長編を読んだ後の一抹の寂しさを短編で埋めることが出来る他、長編の合間の気分転換として短編集を読むというのもありなので、長編小説を読み慣れていないという方でも自分のペースで読み進めることが出来るというのが嬉しいですね。
「石を放つとき」は人気シリーズの最新作かつ、合計500ページ以上の大ボーリュームを収録しているので、推理小説ファンなら買って後悔しない1冊です。
ぜひお手に取ってみてください(๑>◡<๑)
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