はあ。これですよ。
やっぱりメフィスト賞はこうでなくっちゃ。
第58回のメフィスト賞でも話題になった小説、名倉編「異セカイ系」。
こちらの小説は、ラノベ界の中でもちょっと異端なストーリーになっております。
読み始めた瞬間は、何この主人公?
なのに、読み進めていくうちに、どこか共感したくなる。
例えるならアレです。舞城王太郎さんと西尾維新さんを足して2で割った感じです。このヤバさ伝わりますかね。
そんな、不思議な世界の扉を開いてみましょう。
『異セカイ系』あらすじ
『異セカイ系』はニートの主人公が、「小説家になれば人と関わらずに済むかも」、そんな安易な考えでネット小説を投稿する場面からスタートします。
書いた小説はサイトで10位。
(当たり前ですが)デビューの話が来ないなあ、とボヤく関西弁で妙にテンションの高い主人公は、好みが割れるところでしょうね。
仕方ないとニート生活を解消すべく、回転すし屋へアルバイトに行くもののストレスでぐったり。
そんな中「ここではないどこかへ行きたいという」願った主人公は別の世界へと飛ばされます。
その後、なんと自分が書いた小説の世界へ飛び込んだことを知るのですが……。
その世界へ行けるのは、小説ランキングが10位以内の時のみというシュールな設定。
さらに11位以下に落ちて一定期間が過ぎてしまうと、世界ごと消えてしまう恐れもあるとかないとか。
この辺りが「作者への挑戦状」へつながっていくんです。
物語の住人と実際に触れ、主人公は何を感じ、どう行動したのか。
読めば読むほど続きが気になる作品なので、関西弁アレルギー、ニートアレルギーなどと言わずに、まずは最後まで読破してみましょう。
つまりおれは
おれの書いたーーてか書いてる最中のーー小説の世界に
いま。おる
いや。
いや。いや。いや。
いま。おる
ちゃうで。
なんですの
いま。おる
て
なにこれ〜
ベタやな〜
ベッタベタやん。
なに「ここではないどっか行きたい」思てたら異世界転生しましたて。いや転生モンは好きやで? けどもうちょいあるやろ。ひねれや。ひねってひねってひねりなさいや。
P.21.22より
こういうノリがずっと続きます( ´∀`)
作者への挑戦状があるよ!
なんやねん、作者への挑戦状て。
まあ詳しくは書きませんよ。読んでからのお楽しみです。ふふふ。
他にも「異セカイ系」の見どころは色々ありますが、主人公と自分の作品との向き合い方が結構重要に感じました。
どの作家も読者を惹きつけるがため、物語の急展開や悲しいオチを入れたくなるものですが……実際に出逢った登場人物の、辿る運命が悲しいものであったら、なかなか筆を進めることができませんよね。
小説の切ない描写や理不尽な出来事は、あくまでも本の中だから成せること。
そして、現実にない世界を楽しむのが正に「読書」なのだと思うのです。
ではでは、主人公が「異セカイ系」を超幸せなハッピーエンドに描いたらどうでしょう?
勘の良い方は気付いたと思いますが、読み応えゼロのつまらない物語になり、ランキングは落ち、小説の世界は消えてしまうでしょう。
その他にも簡単に展開を変えられない仕組みなんかもあります。
小説界の住民を守るため、そして現実世界で幸せを掴むため、奮闘する主人公にから目が離せませんよ。
メフィスト賞らしい作品が好きなら読むべし
私は小説を書くわけではありませんが、筆力があって物語を書くのだとすれば、やっぱりどこかに好みの登場人物や、調子がいいけど憎めない奴とか、描くと思うんですよ。
自分で生み出したなら、悪役にも愛着が湧くかもしれませんね。
その裏で、やはりミステリー好きですから事件やトラブルは必ず起こりうる訳で……その中で10位を死守か……どうするか。
作者にとって、子どものような存在である小説界のキャラクター。
世界を想像した神と人間の構図に近いでしょうか。
ところが、この作品では、主人公とキャラクター出会うことで親しい関係になるため、そんな神と人のような境界性は皆無。
それ故に、必要以上の悩みや葛藤が訪れるのでしょう。
いわゆる「メタ系」と呼ばれる作品ジャンルでもありますので、メタ小説に触れたことがない方は、なかなかの衝撃を受けるのではないでしょうか?
この手の作品は重たくも軽くもできるのですが、関西キャラという主人公のおかげで、なんだかんだ終始明るく読み進められたのも良かったです。
とにもかくにも「メフィスト賞」らしい小説が好みの方は、一読してみて下さい。
では、さいなら。
酢シュン!

コメント
コメント一覧 (2件)
死にたいシュン!
この世界に戻って今コメントしてるところです。
いやあ、さすがメフィスト、早坂吝とか清涼院流水とかその他諸々とは違うベクトルでヤバいなあ。メフィストの何が困る(良い意味で)かって作家の数だけ作風があって、その全ての癖がやばい(良い意味で)ところだと思うんですけど、期待を裏切らない感じがもう最高ですよね。これからも是非変態を生み続けていただきたく思います。
では
酢シュン!
そう、そうなんですよ、他の作家さんとはまるで違うベクトルなんですよね。今までにない変態感。
作家さんの数だけこんな変態作品が生まれるのかと思うとワクワクが止まりません。しかも毎回期待を裏切らないという。
これから先どんな作品を読ませていただけるのか……。やばいですなあ。
では
酢シュン!