国内ミステリー小説

月原渉『犬神館の殺人』- 戦慄の犬神館。ギロチン仕掛け、三重の封印、消えた犯人。

その館の密室を開けるためには、人を一人殺さなければならない……。

三重の密室の最奥に凍り付いた状態で立っていた、異様な死体。

そのとき犬神館では、奇怪な宗教儀式・『犬の儀式』が行われていた。

密室の全ての扉にはギロチンが仕込まれていて、密室を開けるためにはその儀式の参加者は自分の首を賭けて人間鍵とならなければならない。

三年前に起きた同様の事件と今回の事件との関連とは?

氷結し、異様な形相で発見された死体の真相とは?

新しい密室トリック、そして過去と現在の事件の謎に使用人探偵シズカが挑む、シリーズ第三作目!

複雑な三重密室×怪しい宗教儀式×奇妙な死体……雰囲気抜群!

本作の舞台設定は19世紀ごろ、使用人探偵シズカが謎を解くシリーズの三作目。

三年前と現在で全く同じシチュエーションで事件が起き、三年前と現在の視点を行き来しながら話が進んでいきます。

複雑な三重密室、怪しい方法で行われる宗教儀式、凍り付いた状態で立っているのが発見される奇妙な死体と、作品の纏う雰囲気は怪しさ満点!

使用人探偵シズカの独特なキャラクターもあいまって、読む人を作品の中にぐいぐい引き込んでいきます。

そもそも舞台からして、人を殺さなければ扉が開かない館という恐ろしさ満点の館。

本当にこんな館が存在できるのだろうか?と思いながらもつい読み進めてしまいます。

そんな館で二回も同じような事件が起こるのですから、引き込まれてしまうのはある意味当然かもしれません。

極めつけは、教祖の指示で行われる新興宗教の怪しい儀式!

犬憑き、憑き物といったホラーものチックな要素も取り入れながら、物語が描かれていきます。

三年前と現在の事件を、シズカはどうやって解決していくのか?犬神館、そして事件の真相とは?

館もの・密室ものが好きな方にはもちろん、異様な死体・ギロチンによる人間鍵・怪しい新興宗教の儀式など、おどろおどろしくホラーチックな雰囲気が好きな方にもおすすめできる作品と言えます。

シリーズもの第三作目の本作ですが、使用人シズカの主人が変わっており、本作だけでも読むことは十分に可能。

もし今作でシリーズや使用人探偵という設定に興味を持ったら、他のシリーズ作品を読んでみるのもおすすめです。

館の謎、事件の謎、探偵の謎──謎に包まれたミステリ小説

ミステリ小説である本作ですから、謎はふんだんに盛り込まれているこの作品。

ドアを開けるとギロチンで殺されてしまう人間鍵を備えた館は、それだけで十分に謎すぎる存在と言えます。

そして、過去と現在で起きた事件それぞれに隠されている謎。

一見同じようなシチュエーションで起きた事件ではあるものの、トリックも含めとなるとまた話は違ってきます。

怪しい宗教儀式と殺人事件との関係といった謎もあいまって、事件はまさに謎だらけに。

そしてある意味一番の謎は、使用人探偵・シズカの人となりと言えるかもしれません。

使用人として忠実に働きつつ探偵役もこなす彼女の素顔とはどのようなものなのか。

今作では彼女の人間味もほんの少し感じられ、作品全体の味となっています。

今後のシリーズ作品でシズカの謎も明かされるのか、といった部分も、この作品・シリーズの楽しみ方の一つと考えられそうです。

本格ミステリ好きにこそ薦めたいミステリ小説!

2010年、『太陽が死んだ夜』で第20回鮎川哲也賞を獲得し、小説家デビューを果たした作者・月原渉。

その後も毎年のように作品を発表し続けている作者の人気シリーズの第三作目として、この『犬神館の殺人』も評価を受けています。

館で起こる密室殺人と聞くと、ミステリが好きであれば好きであるほど興味をひかれるのではないでしょうか?

新興宗教団体や宗教儀式、過去と現実の交錯など、他にも魅力的な要素に満ち溢れています。

しかしそれだけでは終わらないのが本作の魅力。

ミステリが好きでセオリーに精通している方ほど、この作品に大いに振り回され、楽しめるはず!

シリーズを通しての探偵役・シズカの魅力も徐々に明らかになってくるのも本作の特徴であり、そういった面からも楽しめる作品になっています。

本格ミステリ好きの方にもぜひともご一読いただきたい作品です。

もちろん、ミステリ初心者という方にとっても、特別なミステリ体験となるでしょう。

作者・シリーズともに今後も大いに期待できる本作品。

作者の仕組んだミスリード、そして作品の雰囲気に、思う存分浸ってみてください!

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