海外ミステリー小説

『生きるか死ぬかの町長選挙』- ワニ町シリーズ3作目の痛快コメディミステリー

中央情報局(CIA)の凄腕秘密工作員・フォーチュンは、シンフルと呼ばれる町長不在の小さな田舎町で静かに暮らしていた。

フォーチュンが町に住み始めて2週間のそんなある日、シンフルを密かに仕切っていた婦人会の会長・アイダ・ベルが、表彰台に立つために立候補する。

フォーチュン達に支えられながら、アイダ・ベルと対立候補のテッドは競い合っていたが、突如何者かによってテッドが毒殺されてしまうことになる。

立場上、容疑者の罪を被せられてしまったアイダ・ベルの無実を証明するべく、主人公・フォーチュンと相棒・ガーティは協力して、犯人探しを始める。

アイダ・ベルをサポートする2人は、無実の罪を晴らすことができるのか。

そして、一体誰がテッドを殺害したのだろうか……..。

ワニ町シリーズ3作目の、痛快コメディミステリーをお楽しみください。

犯人探しの過程で描かれるヒヤヒヤする展開

シリーズ3作目である本書の物語は、殺害の容疑をかけられたアイダ・ベルに焦点が当てられ、フォーチュンとガーティが彼女をサポートするというストーリー構成に仕上がっています。

これまでの作品では、事件の犯人としてフォーチュンが疑われることが多かったため、2作目まで読んできた方にとっては、驚きの展開といえるでしょう。

町長選挙というテーマ上、選挙へと立候補したアイダ・ベルに注目が集まるのは間違いないのですが、その裏側で、彼女の罪を晴らすために奮闘するフォーチュンとガーティの様子も見逃せません。

プロのスパイであるフォーチュンが協力することもあって、周囲に怪しまれないようにしながら巧みに活動していくのかと思いきや、犯人を捕まえるために被害者の家に侵入したり、遺体の写真を撮影したりするなど、派手で大胆な演出が盛り沢山です。

「フォーチュンは、スパイとしての任務を遂行していた頃の記憶を全て失ってしまったのか?」と一瞬疑ってしまうレベルで、計画性のカケラもない行動に移していく皮肉な描写は、思わず吹き出してしまいそうになります。

ヒヤヒヤする展開に終始戸惑わされながらも、登場人物達のパワフルな性格で強引に解決へと導いていくストーリー進行は、読者を魅了すること間違いなしでしょう。

フォーチュンと町の人々のもどかしい距離感

フォーチュンが町にやってきてまだ2週間程とはいえ、シリーズ3作目ともなると、町の人々との距離感は、少しずつ確実に縮まってきています。

登場人物達の信頼関係の強さを物語る描写が散りばめられた本作は、どこか人間ドラマのような世界観を想起させ、自然と引き込まれていきます。

また、暖かな気持ちで読み進められるうえに、強行突破一択の犯人探しやコメディ映画のようなやりとりに、ついクスッと笑ってしまうかもしれません。

これらの表立った面白さは本作の見所といえますが、主人公の職業柄、真摯に相手と向き合って本心で接することができないもどかしさが細やかに再現されているのも、興味深い点です。

本当の経歴はCIA所属の冷徹なスパイだけれども、町の中ではおとなしい性格の元ミスコン女王を装う。

町の人々に伝えられないことが多いフォーチュンの苦悩を理解していく過程で、このような正反対の人格を使い分ける難しさが痛いほどに伝わってきます。

誰もが笑えてしまうドタバタミステリーを楽しみたい方はもちろん、町の人々との関係性の変化や主人公の苦悩に感情移入したい方にも、ぜひおすすめしたい1冊です。

CIA工作員&老婦人たちのお騒がせ捜査が相変わらず楽しい!

本書は、ワニ町シリーズ第三弾の痛快ドタバタミステリーです。

序盤からユーモラスで軽妙なテンポで描写されていく田舎町での奮闘劇ですが、1作目からかなりの頻度で事件や登場人物達のやりとりが発展していきます。

あまりにも情報の密度が濃く、フォーチュンは町の雰囲気や人々にすっかり馴染んでしまっているため、「シンフルに来て、ずいぶん長い間安定した生活を送ってきたんだな〜」と思い込んでいました。

しかし、フォーチュンがシンフルにやってきてから本作の物語が始まるまで、まだ2週間程度しか経っていないという事実を知ったときは、かなり驚かされました。

何の事件も起きなさそうな田舎町でマフィアから命を守るためにひっそりと暮らすことを決意した矢先に、短い期間で数々の事件が主人公の前に立ちはだかるストーリー展開は、皮肉感たっぷりで笑わずにはいられません。

また、本作では、前作までの物語とは打って変わって、パワフルな老婦人のアイダ・ベルに焦点を当てて、ストーリーが進行していきます。

主人公であるフォーチュンがサブキャラクターのアイダ・ベルをサポートする側に回る展開はどこか新鮮で、個性的な老婦人達も主役級であることに気付かされました。

とはいえ、本作を含めたワニ町シリーズでは、1人1人の人間性を余すことなく忠実に描写しているため、読み進めていくうちに必ず誰かに愛着を持ってしまうことでしょう。

推理しがいのあるミステリー描写が施されていることはもちろん、登場人物達のふるまいに感情移入するには絶好の作品に仕上がっていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

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