「ねこみち横丁」へようこそ!伊吹有喜『BAR追分』シリーズで心ほかほか。

先日シリーズ三作目の『情熱のナポリタン』が発売になりました。

で、さっそく読んだんですけどやっぱり良い!「BAR追分」熱が再発した私はシリーズを一気に再読してしまいました(追分は「おいわけ」って読みます)。

てなわけで、今回は一作目の『BAR追分』をちょっとだけ。

ひとことで言えば「心温まってお腹もすいてきちゃう連作短編集」です。

 

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目次

伊吹有喜『BAR追分』

中国の工場に異動を迫られた相沢武雄、四十二歳。

もし異動が決まれば、家族といつ会えるかわからない。かといって断れば、会社をクビになる可能性がある。

一体どうすれば良いのだろか。

そんな思いを巡らせながら新宿の街をうろついていた武雄は、気がつけば「ねこみち横丁」という路地に入り込んでいた。

まるで昭和の飲み屋街のような通りを歩んでいると、、あった。「BAR追分」という店が。

入るつもりはなかったが、店の人や後ろから来た人たちに急かされ、つい入店してしまう。

するとそこは、「ねこみち横丁」の人々が集まるとっても暖かい場所で・・・。

 

というプロローグ。

本編はこれからです。

優しい物語、四編。

今作は、そんな「BAR追分」を舞台に繰り広げられる心温まる物語が詰まっています。

しかも昼間は「BAR(バール)追分」といってコーヒーやお食事を出すお店、夜になると「BAR(バー)追分」としてワイワイやるお店になるのです。こういうお店、いいですね。

収録されているのは、プロローグの他に四編。

ちょっとあらすじを見てみましょう。

1.スープの時間

大学卒業後、シナリオ・ライターを目指して数々の賞に応募してきたけど目が出ない青年・宇藤輝良。

契約社員として就職するが、すぐに廃業。30歳手前。これから先、どうするか。

そんなことに悩んでいた時、宇藤は「BAR追分」のホームページの作成を頼まれる。

それが宇藤の人生を大きく変えることになるとは知らずに。。


宇藤くんは「BAR追分」の中でも主要人物となる一人。

彼の成長を見守るのもこのシリーズの楽しみ。

2.父の手土産

娘がまだ小さいうちに妻を亡くした父親。

男で一つで育てた娘の結婚式が近づいた金曜日の夜、父は娘を「BAR追分」に連れてくる。どうしても食べさせたいものがある、と言って。


私はこのタイプの話に弱い(*ノД`*)

不器用で寡黙なお父さんの娘を愛する想い。普段なかなか伝えられないけれど、娘のことを誰よりも愛している。

そんなお父さんの気持ちが痛いほど伝わって来るお話です。

3.幸せのカレーライス

自動販売機の飲み物補充の仕事をする江口。

彼はとある理由から、大好きなカレーは金曜日のお楽しみと決めている。今はまだ水曜日。

しかし「ねこみち横丁」で仕事をしていると、どこからともなく漂ってくるカレーの匂い。腹が減った。。

そして出会ってしまう。「BAR追分」と『牛スジカレー 温玉のせ 650円』。


これももちろん良いお話なんですけど、とにかくお腹が減る!!尋常じゃないくらいに。

ぜったいBAR追分の牛スジカレーが食べたくなりますよ。

4.ボンボンショコラの唄

ねこみち横丁の有名人・アフロ頭の梵(ぼん)さんと、クラブのママをしているフランス人形のような美女・遠山綺里花さんの物語。

タイトルがよくわからず「?」な感じでしたが、予想をはるかに超える良い話でした。この4つのお話の中で一番好きかも。

詳しくは言えませんが、これは読んでいただきたい・・・!

お腹が空いている時には注意です。

ハンバーグサンドを一口かじった。カリッとしたトーストの歯触りのあと、香ばしい肉がほぐれて、熱い肉汁が口の中に広がっていく。その間を縫うようにして、パンに塗られたマスタードとケチャップが刺激と甘みを交互に伝えてくる。

P.109より

牛スジのカレーは、他の肉のカレーにくらべて、スジが煮とけた分、ルーがぽってりとしてコクがある。そこに卵の黄身が合わさって、深いコクが晴れやかな味わいに広がっていく。

P.131より

とにかくお腹が減るんですよ。

「BAR追分」の料理が美味しそうで美味しそうで。

すでにお腹が減っている時に読むと物語に集中できません。夜寝る前に読むと、お腹が減ってきてなかなか寝付けません。この点だけ注意です。

そこを除けば、連作短編で読みやすいし、「ねこみち横丁」の人々の暖かさに癒されるし、どれも「読んでよかった……」っていう読後感が味わえます。

で、BAR追分の魅力にとりつかれて、続編も読みたくなってしまうことでしょう。

〈2作目〉

〈3作目〉

表紙だけでお腹が減ってきます。。

平山夢明さんの『独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)』『ミサイルマン (光文社文庫)』などを読んで気分を悪くされた方は、ぜひBAR追分シリーズで癒されてください、笑。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 関連記事でご紹介いただいた『マカン・マラン』を読んで以来、グルメ小説にハマった時期がありました。今回もその熱が再燃しそうです!『ねこみち横丁』、早速読んでみようと思います(^^)
    グルメ小説はもともとあまり読みませんでしたが、anpo39さんのおかげで自分では選ばないようなジャンルや作品に触れることができています。人に紹介してもらうのって大切ですね☆
    これからも楽しみにしています!

    • 30osさんこんにちはー!
      『マカン・マラン』良いですよね♪そして『BAR追分』も良いですよ〜
      私もグルメ小説って最初は読まなかったんですけど、「逆に普段選ばないジャンルの本を読んでみよう!」と思って読んだことでハマっちゃったんです。
      ほんとに30osさんのおっしゃる通りだと思います。普段選ばないジャンルを読むって大事ですよね。すごくわかります(*´ω`)
      嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります!

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