倉知淳『ほうかご探偵隊』-子供も大人も楽しめる謎解き小説の傑作が文庫化

『ほうかご探偵隊』は2004年にミステリーランドから出版された倉地淳さんの謎解き小説。

それが先日文庫化されたのですが、いやはや、まいりました。なんで単行本の時点で読んでいなかったのかと。

とにかく全国の少年少女に読んでほしい。そしたら確実に日本のミステリ好き人口が増えます。ミステリー小説って楽しいな!って改めて思える作品でした。

間違いなく言えるのは、「子供向けかあ」という理由で読まないと損しますよ!ってことです。「子供向け」ではなく「ミステリ好き向け」の間違いでは?と思うほど。

子供にはもちろん、ミステリ好きの大人が読んでも十分以上に楽しめちゃう作品なのです。

 

目次

『ほうかご探偵隊』あらすじ

朝、高時くんがいつものように教室に入ると、たて笛の真ん中の部分だけなくなっていました。

三つのパーツ分解できるたて笛の両先端だけ、机の上に置かれていたのです。

実は、先週からこのような不可解な事件は続いていました。

このクラスで、要らないモノが次々に消えるという現象が起きていたのです。つまり高時くんは、その四番目の被害者。

 

一つめは、図工の授業で描かれた風景画。

二つめは、学校で飼育していた一羽のニワトリ。

三つめは、学級員の神宮寺が作ったハリボテの招き猫。

そして四つめが、今回の高時くんのたて笛というわけです。

 

やはりポイントなのは、どれも不要なモノだというところ(ニワトリには失礼だけど、ほとんど誰も関心を持っていなかった)。

しかもどれも、うっかりなくしてしまった、というレベルのものではありません。明らかに誰かが盗んだようなのです。

さあ、捜査開始だ!

そんな連続紛失事件に興味を持ったのは、高時のクラスメイトの龍之介くん。この、おしゃべりで小柄でリスみたいな目をしている龍之介くんが今回の探偵役となります。

さらにニワトリの飼育をしていた女子・成見沢と吉野も捜査に参加することに。

 

さて、まずは聞き込みから始めたのですが、その時の目撃証言によって「ニワトリは密室から消失した」らしいことがわかります。

犯人はどうやって密室状態の飼育小屋からどうやってニワトリを盗んだのでしょうか(ハウダニット)。

そもそも、犯人はなぜ「風景画」「ニワトリ」「招き猫」「たて笛」という不要なモノを盗んだのでしょうか(ホワイダニット)。

そして犯人は誰か(フーダニット)。

うーん、さらに謎が深まるばかり。

そこで龍之介くんたちは、「風景画」「ニワトリ」「招き猫」「たて笛」の四つになにか共通点があるのではないか?と推理を始める……。

面白すぎるホワイダニット。

ニワトリ消失のハウダニットも面白いですが、やはりメインとなる『犯人はなぜ「風景画」「ニワトリ」「招き猫」「たて笛」という不要なモノを盗んだのか』というホワイダニットが面白すぎますね。

とにかく最高の解決編でした。このレベルの解決編をミステリーランドでやっちゃうんですか、倉地さん。謎解き小説の最高峰じゃあないですか。

日常の謎は私も好きなジャンルですのでかなりの数読んでいるはずなのですが、これほどの驚きを気持ち良さのある作品なんて滅多にないですよ。

散りばめられたパズルのピースがカチっとはまっていく感じが美しく、改めて日常の謎の面白さと倉地さんの凄さを実感しました。

こんなの子供が読んじゃった将来は間違いなくミステリマニアになっちゃうでしょうね。

というか龍之介くん凄すぎでしょ!!小学生の頭脳じゃないよ!!小学生なのにあまりの名探偵っぷりにニヤニヤしっぱなしでした。めちゃくちゃいいキャラしています。

すべてのミステリマニアへ。

《かつて子どもだったあなたと少年少女のための》というコンセプトで企画されたミステリーランド。

『ほうかご探偵隊』はまさにそのコンセプト通りの、ミステリー小説の入門書としてはもちろん、すでにミステリマニアの人でも絶対楽しめる作品となっています。

ミステリ初心者の人はこの作品でミステリー小説の面白さを知り、ミステリマニアの人は改めて「推理する」ことの楽しさを思い出すのです。

本書でも

こうやって、事件の可能性をみんなであれこれ話し合うのが、こんなに楽しいとは、思ってもみなかったよ。ものすごく面白い。

P.71より

と高時くんが述べているように、皆で知恵を絞り出すシーンは読んでいて「本当に楽しそうだなあ」とずっと思っていました。

そうなんですよ。殺人が起きようが起きまいが、謎が大きいと小さいとか関係なしに、みんなで推理するってこんなに楽しいものなんですよね。

終わり方も最高で、「ああー!もっとミステリー小説が読みたいよー!」という気持ちにさせてくれます。

とにかく子供時代に戻った時のようなワクワクする気持ちを思い出させてくれる作品でした。

《かつて子どもだったあなたと少年少女》にぜひ読んでいただきたいです。

 

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

コメント

コメント一覧 (10件)

  • ああ!いいですね、こういうの。
    個人的には、読書好きの友達少ない子だったんですが(笑)
    なんか、子供のときのわくわく思いだしそうですね。
    あらすじだけでも、心おどります。
    気になったら読む運命!守ってます(笑)

    個人的に「ジュブナイル」という言葉、好きです(笑)

    • hitomiさん!いやー、これほんと良いミステリでした。
      (私も小学生のとき読書好きの友達がいた記憶がない。泣)
      すごく「ワクワク」の詰まった作品です。全国の子供たちに読んでほしいくらいです。
      なんかhitomiさんはこういう作品好きだと思うんですよ。勘なんですけど笑。
      ぜひ、気になったら読む運命!を信じて読んでみてください(*´ω`)

  • いつも参考にさせていただいてます(*’▽’*)
    ちょうど『ほうかご探偵隊』を小3の息子のために買ったところだったので、思わず初コメントしてしまいました(笑)
    まず自分が読んでから〜と思っているのですが、楽しみでワクワクしますね。
    ちなみにミステリーランドを2冊購入しまして、もう一冊は『虹果て村の秘密』です。こちらも楽しみです♫息子とミステリー談義ができる日を夢見る母です。
    これからも、面白い本どんどん紹介してください。いつも更新を楽しみにしております( ´ ▽ ` )

    • マラクヤさんこんにちは!あら〜いつもありがとうございます(*´∀`*)
      それはグッドタイミングですね!しかも息子さんのためにとは、素晴らしいチョイスです。
      しかも『虹果て村の秘密』も!これも面白い作品です。有栖川有栖さんは間違いなしです。
      これらの作品を読んでしまったら、息子さんもきっとミステリ好きになってしまうでしょう笑。それほどに謎ときのワクワクが詰まった作品でした。ぜひマラクヤさんご自身もお楽しみいただけたらと思います。
      ああ〜息子さんとミステリー談義ができる日がくるなんて素晴らしいですね。。ぜひ実現させましょう!ご協力いたします笑。
      ありがとうございます。これからもどんどんご紹介しちゃいますよー!!どうぞ宜しくお願いいたします(*´ω`)

  • とってもおもしろそうです。倉知さんの本はどれもおもしろいからねー。猫丸先輩シリーズとか大好きです。

    • さまーさんこんにちは!
      いやーこれ本当に面白い作品でした。「謎を解く」という面白さが存分に詰まっています。倉知さんの作品ってほんと安定して面白いですよね。
      私も猫丸先輩シリーズです!あのキャラクターも良いしミステリとしても一級品ですし(*´ω`)

  • たびたびすいません。
    読みました!
    子供向けのようで、伏線も、解決編も大人が楽しめる内容ですね。
    すごく、面白かった!
    龍之介くん、カッコいい(笑)
    素直に、読書好きで良かったな~って感じました。
    良い作品のお薦めありがとうございます♪

    • おーさっそく!!
      ご報告ありがとうございます!
      まさに大人も楽しめる内容ですよね。
      ほんと最後の保健室での龍之介くんの推理を披露するところなんか、完全に「熟練の名探偵」で笑ってしまいました。かっこよすぎます笑。
      そうそう、ミステリってやっぱり面白いな!って思える作品ですよね。
      hitomiさんに気に入っていただけたようで良かったです〜(*´∀`*)

  • 私も、たびたびすみません。
    読みました!
    途中から、子供向きにしては少々エグい展開じゃないの(゚Д゚)…と思ったら、騙されてました(笑)
    しっかり面白かったです。子供向けと侮ってはいけませんね。
    龍之介君、頭キレすぎ!

    • マラクヤさん!
      そうそう、ニワトリのところとかびっくりしますよね。笑
      これ子供が読んでも大丈夫?!って思いましたが私もまんまと騙されました。大人も楽しめるミステリとして素晴らしい作品だと思います。
      ほんと龍之介くんは天才すぎますね。笑 完全にベテラン探偵のやることですよあれは。。

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