『平凡すぎる犠牲者』- くせ者揃いの刑事たちが事件に挑む!シリーズ第2弾

本作の主人公を務めるのは、ベックストレーム警部。

とあるアパートで殺人事件が起きます。

被害者は年金生活をしているアルコール依存症の老人。

きわめてありふれた事件ですが、同じアパートに住む住人達や事件の関係者はどれも一癖も二癖もある人物ばかり。

そして、有力な容疑者の1人であった第一発見者の新聞配達人が死体で発見されたことで、捜査は混迷を極めていきます。

果たして事件の裏にある真実とは何か?

そして、ベックストレーム率いるソルナ署の刑事達は、この難事件を解決出来るのか?

目次

癖の強い人物を主人公に据えた異色の作品

あらすじでもお伝えした通り、本作の主人公となるのはベックストレーム警部。

警察が殺人事件の犯人を追うというのは小説のみならず、2時間ドラマなどでもよく見かけるシチュエーションなので、取り立てて目新しさを感じることはありませんよね。

しかし、本作の異質な部分はこの主人公の人物像にあります。

ベックストレームは仕事には不熱心。

容姿はお世辞にも優れているとは言えず、プライドが高く偏見も強い人物です。

まあここまでならまだ分かるという方は多いと思います。

仕事熱心じゃないけど、プライドが高く性格に難があるけど、それでも高い能力を持っているという主人公は珍しくありません。

ところが、このベックストレームは周囲からいわゆる無能の烙印を押されている人物でもあります。

ある人物からは「象のようにのしのしあるきまわって、周囲にあるものを全て破壊するような男」と称されています。

言ってしまえばダメ人間を絵に描いたような男が主人公なのです。

ここまで読んでみて「そんな魅力ゼロの人物が主人公の作品なんて読んでて面白いのかな…」と不安になってしまった方もいると思いますが、ご安心ください。

こんな人物が主人公でも、いや、こんな人物が主人公だからこそ面白く仕上がっているのが本作です。

典型的な主人公像に少し飽きが来ているという方に是非オススメしたい作品なので、興味を持った方は是非読んでみてください。

平凡な事件の裏にある意外な真相とは…?

本作で取り上げられている事件は、あるアパートにて酒好きの老人が撲殺されていたというもの。

凶器も現場に残されており、よくある酒の席でのいざこざの延長線というのが容易に想像出来る状況です。

そんな簡単そうな事件だから、ベックストレームに捜査を任せることになった上司も「どんなに無能な警部でもこれくらいはすぐに解決出来るだろう」と胸を撫で下ろします。

しかし、捜査が進んでいくとこの事件には一筋縄では行かないバックボーンがあることが徐々に明らかになっていきます。

そのため、単に無能な警部が何てことない事件に四苦八苦する喜劇ではないというのが本作の特徴です。

意外な真相が隠されており、読み手をしっかりと騙してくれるのも魅力の1つと言えるでしょう。

個性豊かな登場人物との連携プレー

『平凡すぎる犠牲者』に登場する変人はベックストレームだけではありません。

ベックストレームと共に捜査を進める他の刑事達も一癖二癖ある人物ばかりです。

そして、平凡に見えた難事件を個性豊かなメンバーとの連携プレーであれよあれよと言う間に解決していくというのが本作の魅力です。

無能な刑事がいつの間にか事件を解決しているという喜劇的な面白さに加え、しっかりとミステリーとしての味わいがありますので、幅広い層にオススメ出来る作品です。

『許されざる者』で5冠を獲得した著者の、シリーズ第2弾。

『平凡すぎる犠牲者』はとある警部がアパートで起きた殺人事件の解決に挑むという作品。

主人公であるベックストレーム警部は仕事は不真面目、プライドが高くて偏見が強い差別主義者、おまけに無能と散々な人物像なので、他の作品にはない強い味があります。

そうした主人公が一見平凡そうな殺人事件の解決に挑むわけですが、捜査が進むに連れて裏に一筋縄では行かない真相が隠されていることが明らかになるため、読者をしっかりと良い意味で騙してくれるストーリーになっているのも魅力です。

また、ベックストレーム以外の登場人物も癖が強いキャラが揃っており、それぞれに魅力があるのも特徴です。

そうした個性溢れるメンバーとの連携で捜査が進んでいく様子についつい読む手が止まらなくなってしまいます。

無能な警部がいつの間にか事件を解決しているというコメディ感と、事件の謎に頭を捻るミステリー感を両方楽しむことが出来る作品ですので、多くの人にオススメしたい1冊です。

ただし、主人公であるベックストレームの性格上差別用語などが作中に多々登場するため、見る方によっては不快感を感じることもあるかもしれません。

若干読み手を選ぶ作品という面もありますので、差別用語や皮肉、悪口などが苦手な方は控えるようにしましょう。

ですが、ミステリ小説として非常に面白いですので、少しでも興味を持った方は、是非一度手に取ってみてくださると嬉しいです。

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この記事を書いた人

年間300冊くらい読書する人です。主に小説全般、特にミステリー小説が大大大好きです。 ipadでイラストも書いています。ツイッター、Instagramフォローしてくれたら嬉しいです(*≧д≦)

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